◆富坂聰『中国がいつまでたっても崩壊しない、7つの理由』を読み解く

 


※要旨

 

・10年ほど前から私は、
中国で巨額のマネーを動かす欧米の投資グループと知遇を得て、
彼らが中国のどんな問題や事柄に興味を持ち調べているかを知り、
その視点の鋭さや情報の深さ、
そして新たな動きを発見する早さに驚かされた。


・中国政府が困難と位置付けた産業は、
おもに構造不況に陥った伝統的産業を指している。


・具体的には、今後、鉄鋼産業と合わせて
180万人のリストラが敢行されると報じられた炭鉱業を筆頭に、
非鉄、セメント、ガラス、造船、化学工業といった
重厚長大型の伝統的産業、なかでも国有企業が中心とされ、
合わせて600万人の失業者が社会に吐き出される、と予測された。


・中国社会の根底を支え続ける妙な「明るさ」。


・国の秩序が及んでいない空間が、中国にはたくさん存在している。
これは中国で、
「地下経済」と呼ばれる経済活動のことで、
売買やカネの移動が起きているのに、
政府が正確にカウントできない世界で生み出される
付加価値を指す。


・以前、中国の東北部を大連からハルピンまで
北上するルートで回ったのだが、
そのなかでいくつか目についたのが、
その地下経済の活発さであった。


・地下経済のベースになっているのは、
親族や地域、友人などのネットワークである。


・中国社会のこの重層的な世界は、
危機に際して「自然のセーフティーネット」という役割を果たす。
そのため、表向きは失業者であっても、
何らかの収入を得ているといったケースは少なくなく、
それが一定の「明るさ」を社会にもたらしている。


・また国と個人との間に信頼関係がある日本とは対照的に、
自分で何とかしなければならないとの感覚が、
国の活力とつながっているのも
中国社会の特徴である。


・転んでもタダで起きない労働者たちの「耐久力」。


・中国東北部の労働者たちも、
15年から20年ほど前にすでに厳しい体験をしており、
現在の経済問題を決して青天の霹靂といった感覚では、
とらえていないのである。


・「問題が山積みしていること」と「それが崩壊へとつながること」
は同じではない。


・彼らは、自らの不満を、
政治的な問題と結びつけて考えようとはしない、
という特徴を持っている。
実は理由は簡単だ。
彼らが怒りを表現するとき、
その目的は社会を変えることには向けられず、
あくまで自らの生活を良くすることに向けられるからだ。


・中国人がどんなときも失わない「サバイバルの鉄則」。


・彼らは、どんな政権下(王朝の下)でも、
どんな国でも生きていける方法を常に模索し、選択してきた。
基本は「個(家族)」であり、国家が倒れても「個」は
生き残るという備えを怠らない。


・共産党の幹部育成システムの中に
「貧しい地域の経営に携わらせ、中国の現実を教え込む」
との考え方が根付いている。


・「亡党亡国」を防ぐ「ソ連崩壊」と「アラブの春」という教訓。


・かつて中国共産党は、
ソ連崩壊という大地殻変動に直面し、
彼らの失敗からふたつの価値のある教訓を得た。
ひとつが民主化を急ぎすぎてはならない、ということ。
もう一つが、
腐敗により人心が離反すれば取り返しのつかないことになる、
という2点だ。


・一部の特権階級だけが利益をむさぼるといった状況は、
まさに「アラブの春」で打倒された国々に共通する特徴でもあった。


・おそらく習近平は、
国家副主席時代にこうした世界の情勢をとらえて
危機感を強めたのだろう。
対外的には「昼行燈」ともいうべき「無味無臭」なリーダーとの
下馬評を積み上げつつ、
内では着々と政権移譲後のビジョンを練っていたのだ。


・国家副主席時代の習の存在感の無さは、
筆者の記述を疑いたくなったほどだ。
だが、習近平は、「うつけ」を演じていたのだ。
そしてその裏で党内の根回しを行い、
自らの政策を実行する際に、
最短で最大限の効果をもたらす準備を進めていたのである。


・考えてみれば2012年、
中国は明らかにひとつの危険水域に足を突っ込んでいた。
だが、その中国に習近平が劇薬を投入した結果、
一定の効果が上がっている。
少なくとも彼らは、
自分たちの欠陥がどこにあるかを的確に見抜いている。

 


※コメント
中国の本質を理解するのに良い論文だ。
中国は広く、大きい。
その問題点をシンプルに解き明かしたい。

 


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