◆林景一『イギリスは明日も、したたか』を読み解く
林さんは、元・駐英国大使。
※要旨
・私は、2005年から2008年まで
駐アイルランド大使を務めた後、
2011年から2016年5月まで駐英国大使として英国に勤務した。
・その経験に基づいて言えば、
英国はこれまでも、
そして明日以降も、したたかな国であるということ、
日本はその英国から大いに学ぶべきだということだ。
・幸運にも、日本はそういう英国と基本的利害が共通している。
そのことを認識し、英国と緊密に連携していくことが
日本の国益になると確信している。
・英国はEUにいたから大きく見えていた。
・EU28か国の意思決定において
英国は重要な役割を果たしてきた。
EUは、ドイツとフランスと英国の三角形で
安定してきたと言ってもよい。
・その理由として、
英国が国連安保理の常任理事国であることに加え、
EUの中では最強の軍事力を持っているということが
挙げられる。
・さらにジェームズ・ボンドで有名な対外諜報機関MI6、
スパイ取締りのMI5をはじめとする世界でトップクラスの
インテリジェンス能力を持っていることも
英国の発言に重みを与えている。
・その軍事力と情報力がEU28か国の意見を集約し、
誘導することに重要な役割を果たしている。
同時にその28か国の重みが、
今度は英国の言動に大きな重みを与えているのだ。
・また英国の影響力の背景には、
英国が国際的なルールメイキングにおいて、
それなりの影響力を発揮してきたという背景もある。
・ヨーロッパはもともと歴史的にルールメイキングを
非常に得意としていて、様々な世界のルールをつくってきた。
それは古くから海外に進出して様々な国と交渉を続けてきた
財産ともいえるかもしれない。
そのため、国際的な機関もヨーロッパに集中している。
・英国が世界で大きな影響力を持ち続けているのには、
さらにもう1つ理由がある。
それは世界の共通語となっている英語の存在だ。
欧米が何かルールや方針を決めようというとき、
どうしても英語が中心になる。
・その際、起草して、うまくまとめて、
自分に都合がいいような提案をするという能力に
長けている英国人は、その能力をいかんなく発揮する。
その結果、
まず相談される相手になり、
世界からも一目置かれることになる。
・いまの英国経済は、
世界でもっともオープンになっているといっても過言ではない。
ビジネスをするために出ていくのも
入ってくるものも自由な「資本の色を問わない国」に
なっている。
・英国の自動車産業は、ロールスロイス、ジャガー、
ミニなど有名なブランドを持っているが、
実は純粋な英国資本の自動車会社はもはやない。
・ドイツや米国、インドなどの外国資本が入っているし、
英国で生産される車の半分は日本の3社(日産、トヨタ、ホンダ)によるものだ。
・「資本の色なんかどうでもいいんだ。
要は雇用が英国人にもたらされる限りは何でも構わない」
ということだ。
日本人にはとてもできない思いっきりのよさである。
・日本に求められる英国との協調。
・英国は米国の政治・安全保障・外交上の「いぶし銀」の
ような伴走者として、かけがいのないパートナーの役割を
「大西洋同盟」の中で果たしてきた。
・今の日本は、たしかに過去の問題や憲法上の制約、
世論の支持の問題があって、武力の行使に関わるような側面で、
英国と同じレベルを目指すのは難しい。
・しかし、英国との間に平和維持活動、兵站、装備技術、
教育訓練などの分野で相互補完的な協力関係をつくり、
強化していく余地は十分ある。
・英国には、世界に冠たるインテリジェンス体制がある。
世界で協調・協力していくうえでも、
また米国と付き合っていくうえでも、
各国情勢・地域情勢についての情報を集め、
正確に分析する力がますます重要になってくる。
・そのとき、絶好のパートナーとなるのが米国との
緊密な同盟という立場を共有し、
多くの国際問題で共通の立場を取る英国なのだ。
・それを基に、したたかな外交政策で苦境を勝利に
転換していく能力にも長ける英国から学ぶことは多い。
英国がかつてナポレオンやヒトラーに勝利したように、
EU離脱を見事にやってのけても私は驚かないことだ。
・英国の地位の維持に大いに役立っている安保理常任理事国の椅子や
英連邦のネットワーク、米国との特別な関係、
EUとの連携、さらに言えば英語という世界言語などの歴史的な遺産は、
日本にはない。
※コメント
オーソドックスな英国論を知ることができた。
こういった真っ当な話を
多くの日本国民に知っていただきたい。
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