◆チャーナウ『アレグザンダー・ハミルトン伝:上巻・その1』を読み解く
(アメリカを近代国家につくり上げた天才政治家)
※要旨
・ほかの建国の父たちは、美辞麗句のきらめく大部の伝記に
よってその名声に磨きかけられてきたのに、
ハミルトンはそのような伝記には欠けるきらいがある。
・セオドア・ルーズベルト大統領はハミルトンを果敢に擁護し、
ハミルトンこそ、
「これまででもっとも優れたアメリカの政治家であり、
当時ひときわ抜きんでた最高に鋭い知性の持ち主だった」
と明言した。
・建国の父たちの間では、
ハミルトンは二重の意味で最大の脅威だった。
思想家であると同時に実行力もあり、
才気煥発の理論家であると同時に敏腕の行政官でもあった。
・憲法制定会議の招集にあたっては、
ジェームズ・マディソンとともに背後で原動力となったし、
国家憲章の古典的解説『ザ・フェデラリスト』も、
この2人が中心執筆者となって、ハミルトンが監修したものだった。
・初代財務長官にして新政府建設の主導者として、
ハミルトンは憲法の原理原則に発展的な声明を吹き込み、
抽象概念を法制度として現実化した。
・彼は包括的なプログラムを造り出す実際的な考え方を持っていたばかりか、
近代の国家を円滑に運営するための機構である、
「予算制度、長期公債、税制、中央銀行、税関、沿岸警備隊など」
を考案し、米国有数の重要な公文書でそれらを正当化し、
比類なき行政手腕を発揮した。
・ジェファーソンが米国の政治論文に不可欠な詩趣を提示したのに対し、
ハミルトンは米国の国政術の散文を確立した。
・いかなる建国の父といえど、
アメリカの政治的、軍事的、経済的未来像をハミルトンほど
明確かつ先見的に理路整然と表現した者はおらず、
国民統合のメカニズムをあれほど
巧妙に編み出した者もいなかった。
・ネーヴィス島で私生児として生まれた時から
ウィホーケンで凶弾に倒れるまで、
ハミルトンの人生は、独創的な小説家しかひねり出せないほど
実に波乱万丈だった。
・ハミルトンは有り余る天分を発揮して、
途方もないペースで働き、およそ人間が49年間に
これ以上書くことなど不可能なくらい大量の文章を記した。
・私生活に関しては寡黙で有名で、
特にカリブ海で送った惨めな少年時代のことは口を閉ざしていた。
彼のように恥辱や困窮と格闘せねばならなかった建国の父は
ほかになく、その少年時代は、
アメリカのどんな大物政治家にも増して謎に包まれている。
・ハミルトンの人生は、財務長官としての業績があまりに大きいために、
それ以外の側面は看過されがちだ。
だが彼は、事務員だった時期も大学生だった時期もあった。
若き詩人にしてエッセイストだった。
・彼は独立戦争時には砲兵隊長となり、
ジョージ・ワシントンの副官、戦場の英雄となった。
連合会議代議員を務め、奴隷制度の廃止を唱え、
ニューヨーク銀行を創設した。
・演説家、弁護士、論客、教育者でもあり、
ニューヨークイヴニングポスト紙の守護聖人、
外交政策に関する理論家、軍の少将だった。
・彼の少年のころ、書棚にどのような本があったのかは、
彼が初めて書いてみた散文と詩から、
経験的に推測することができる。
まず、アレグザンダー・ホープの詩集、
マキアヴェリの『君主論』のフランス語訳、
プルタルコスの『対比列伝』(プルターク英雄伝)、
そして説教集、祈祷書もあっただろう。
・のんびりとした南国にいても、
ハミルトンはビークマン・アンド・クリューガー社で働きながら、
ペースの速い近代社会、貿易船が行き交い市場が
たえず変動する世界について仕込まれた。
・彼の初めての仕事は、
国際通商と帝国の術策に対する貴重な洞察を与えてくれた。
貿易会社の開発した島で働いていた彼は、
ヨーロッパの経済を支配する重商主義的政策に
若くして触れることとになった。
・ビークマン・アンド・クリューガー社の携わる輸出入業務は、
ハミルトンにとって絶好の訓練の場だった。
めまいがするほど多様な商品を管理せねばならなかった。
・この会社では、農園経営に必要と思われる品なら何でも扱っていた。
たとえば、材木、パン、小麦粉、米、ラード、豚肉、牛肉、
魚、ササゲ、トウモロコシ、黒ビール、シードル、
マツ材、オーク材、たが、こけら板、鉄板、石灰、
ロープ、黒色顔料のランプブラック、レンガ、ラバ、牛などだ。
・ジョン・C・ハミルトンは父親についてこう述べている。
「後にさまざまなことに携わったが、
父は『この時に』もっとも有益な教育を受けたと言っていた」
ハミルトンはわかりやすく流麗な筆跡で書くことを学んだ。
※コメント
あらためてハミルトンの偉大さを感じた。
日本では、若干知名度は低いが、
彼のバイタリティに学ぶ点は多い。
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