◆佐藤伸行『世界最強の女帝・メルケルの謎』を読み解く

 


※要旨


・語学の才能。
ドイツの首相メルケルは、物理学者であり、
いわゆる「リケジョ」だ。
運動神経はゼロでも、東ドイツで受けた大学入学資格試験の成績は
オール満点で、非の打ちどころがなかった。
理数系の科目が抜群だったが、
語学の能力もずば抜けていた。


・ソ連の衛星圏だった東ドイツでは、
ロシア語は学校の必修科目だった。


・メルケルは英語にも不自由せず、
アメリカのブッシュ大統領やオバマとは
非公式なシーンでは英語で十分、意思疎通を図っていたとのこと。


・メルケルは1970年、
東ドイツの全国ロシア語弁論大会に出場し、
優勝するほどの語学力を身に付けた。


・ロシア大統領プーチンが
ドイツ首相となったメルケルと会談した際、
そのロシア語のレベルの高さに舌を巻いた。


・プーチン自身、旧ソ連のKGBのスパイとして
東ドイツのドレスデン支部に少佐として駐在した経歴を持ち、
ドイツ語に堪能だが、メルケルのロシア語には
一目も二目も置いていることは定説になっている。


・メルケルのロシア語能力は、
政治家として上昇気流に乗る推進力の一つとなった。


・リケジョのマキャベリスト。
彼女は30代半ばという、
政治家を目指す上ではかなり遅いスタートを切り、
しかも東ドイツから新規参入してくるという異色の経歴の持ち主である。


・メルケル政治の一般法則として数々の特徴が挙げられる。
一言でいうと、
科学実験的アプローチを政治と権謀術数に応用している、
というのが衆目の一致するところだ。
メルケルは「リケジョのマキャベリスト」であり、
メルケルとマキャベリを掛け合わせた「メルキャベリ」という綽名もある。


・目前の現象を分析し、
問題の解法を見出すことが責務であり、
その解法を求めるプロセスにおいて自らの政治権力を強化するのが、
メルケルの政治手法である。
したがって、科学者として解答を追求するメルケルは豹変する。


・象の記憶力。
メルケルはまた、「長考の政治家」として知られる。
豹変するときは豹変するにしても、
なかなか結論を出さないことが多い。


・彼女を近くで観察してきたジャーナリストによれば、
メルケルは政治的決断を下すためにしっかりと準備する、とのこと。


・まず情報収集である。
彼女は徹底的に情報を収集し、またよく勉強する。
膨大な、しかも場合によっては退屈な資料を読破することに
喜びを見出すことがメルケルの最大の強みだ。


・彼女は喜々として官僚や専門家が用意した資料・文書に目を通す。
また会議も嫌いではないらしい。
会議出席者の話を聞くのを楽しみにしている。
情報収集にはそれだけでは足りず、
専門家を呼んで進講させる。
メルケルは実に優れた聞き上手ということだ。


・この情報収集と学習の過程ではまた、
誰もが異口同音にメルケルの理解の速さを絶賛する。


・ブメーロはこう述べている。
「メルケルは一を聞いて十を知り、その記憶力は世の常のものではない。
担当の官僚が太刀打ちできないほど、
その記憶力ははるかな過去に遡り、かつまた実に細部にわたる。
誰かのある発言がいつ、どこであったか、
メルケルは忘れることはない」


・彼女が首相になりたての頃、
専門的な知識を持った連立与党の閣僚は、
メルケルは知識に乏しいだろうからうまく操縦できると思っていた。


・だが、そのうちメルケルは細部にわたって専門知識を
すっかり吸収するので、
思惑通りに丸め込むことはできなくなった。
メルケルは「象のような巨大な記憶力」を持っている。


・それほど彼女の勉強と学習は集中的だった。
だが、彼女はなかなか決断を下さない。
すでに決断している場合でも、外に明らかにするまで時間をかける。
それが傍目からは、狐疑逡巡を続ける優柔不断な指導者に見えてしまうが、
実は決定を表明するタイミングを計っている。


・厳しい決断には必ず、タイミングというものがある。
遅すぎてもいけないが、早すぎてもいけない。
メルケルは、厳しい決定を下すに当たっては、
「それしか仕方がない選択肢」を選ぶことが
もっとも肝要だと考えている節がある。


・難しい問題を解決する上で、
厳しい選択肢しかないのが普通だ。
メルケルは、時間の経過とともに選択肢が狭まり、
やがてそれ以外の選択肢しかなくなるポイントが訪れることを知っている。
その時点では、メルケルの下した決定が最善ではないにせよ、
まだましであるように見える。
その結果、国民の反発は緩和される。


・メルケルはそのようにして決断の機が熟するのを待っている。
グッテンベルク元国防相によれば、
メルケルはできるだけ長時間、さまざまな選択肢を保つ「スタミナ」を持ち、
決定を明らかにするときは複雑なオブラードにくるむ。
そうすることによってメルケルは、何度も決断を変えることが容易になり、
その変心は誰にも気づかれない。


・コール首相もかつては「待つ政治家」と云われた。
この場合、「待つ」というよりも、
「耐え抜く」という語感のドイツ語が使われる。
政治家には楽な季節よりも苦しく厳しい時間のほうが多い。


・メルケルもまた、師匠のコール同様、
「待つ」ことの大切さを熟知している。
彼女は、「時とは恵みのしたたり」であり、
決断を引き延ばすことからむしろ有利な状況が生まれ、
誰かが自分の味方に立つことを知っている。
それがメルケルの政治に対するアプローチともなっている。


・メルケルはいつも結果から、出口から考える。
まず結末をイメージしてからプロセスに入る。
実現可能な成果を想定し、
その成果を導くための方程式を考えるのが「メルケル脳」だ。
彼女にとって、カオスはもっとも避けなければならない状況である。


・また彼女は、問題を解決するに当たっては、
問題を分割して「下部問題群」に再構成し、
個別に解いていくやり方をとっていると指摘される。


・昔から、「ドイツ的組織力」あるいは、
「ドイツ人のシステム構築力」は恐るべきものとして
周辺国から不気味に思われ、警戒の的となっている。


・マッキンダーは
「ドイツが誇る文化とはいわばその恐るべき組織力の別名である」
と書いている。
メルケルはそうしたドイツ的能力に潤沢に恵まれている。

 

 

※コメント
いろいろ言われているが、
メルケルも努力家であって、さまざまな修羅場を経験しているようだ。
そのうえで、今のリーダーシップを身につけてきたようだ。


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