◆渡部昇一『皇室はなぜ尊いのか:日本人が守るべき「美しい虹」』を読み解く


※要旨

 

・皇室について、いまの日本の子供たちがどういうイメージをもっているかはわからないが、
戦前、私たちが子供だったころは、
皇室は「日本人の総本家」というイメージが共通していたように思う。
昔は、日常の体験を通して、子供も本家と分家の関係を学び、
「数ある本家のうちの総本家みたいなものが皇室」という考え方はすっきりと頭に入った。

 

 

・昔、ドイツ留学してドイツ人と接していたら、いろいろお国の話も出る。
「いま、日本はこうだ」と話しても、残念なことに「お国自慢」はなかなかできずにいた。

ある日、ドイツ人から「君の国には戦争中、テンノー(天皇)というのがいたな。あの人はどうしているんだ?」と聞かれた。

「戦前も戦中も、いまも同じです」と答えたら、先方はたいへんに驚いた。
負けた国で一番上にいた君主が敗戦後も同じ地位にあることなど考えられなかったのだ。

 

 

・日本の天皇とヴィルヘルム二世とでは状況も立場も違う。
ヴィルヘルム二世は自分から戦争したがった。
昭和天皇が戦争をしたがらなかったことは、当時の国民は誰でも知っていた。
戦争を始めたのは内閣で、収めたのは天皇という意識のほうが強かった。
だから、天皇は退位したり亡命したりしなくてもいいという総意があった。

ドイツ留学中の私は、このときひらめいた。
「皇室がお国自慢の種になるのではないか」

 


・ドイツ人にはこれほど詳しくは説明しなかったが、
神武天皇から五代さかのぼると皇室の先祖として崇められている伊勢神宮の神様にたどり着くことを伝えた。
「ギリシア神話のアガメムノンの子孫が絶えずに、
いまもギリシアの国王であったとしたならばどうであろうか」と問うた。

誰もがアガメムノンを知っているし、
いまのギリシアの状況も知っているから、「ああっ」という表情になる。

 


・これらにより、日本が古い国であることを知らしめることができたのである。
このレトリックはじつに効果的だった。
私はドイツに続いてイギリスへ留学したが、イギリスでも同じだった。
いや、イギリス人のほうがもっとピンと来るところがあった。
まだ王様がいるからだ。
現在のイギリス王家は、1714年にドイツから来た人に始まる。
日本の皇室と比べたら、昨日できた王家のようなものである。

 

 

・第二次世界大戦後の天皇陛下のご巡幸は、
日本の精神史の1ページを飾ってもいい出来事である。
日本人の天皇観を理解するためには外せない。
数百万の人が死んだ敗戦の直後である。
恨まれてもいいはずなのに、天皇を恨んでいた人がいない。

 

「日本はすべて困難のなかにあるけれども、ただ一つ動かない安定点は天皇である」と、
当時のイギリスの新聞が書いた。

 


・共和制を誇りに思っているアメリカ人でも、爵位とか貴族などには憧れがある。
それを利用して、イギリスの貴族が貧乏すると、アメリカの大実業家から嫁をもらう。

 


・神話に連なる歴史を有する国は、世界にほとんどない。
現代のゲルマン人にとって神話は神話であり、
ギリシア人にとっても神話は神話である。

 


・貴種としての純度が高い皇室があるので、
日本はどんなに貧乏な貴種でも尊敬心が失われない。
戦国時代、食えない公家が地方に行くと、どこでも尊ばれた。
なぜかというと、武士は朝廷での地位が低いことを知っていたからだ。

 

 

※コメント

皇室は、日本が日本であることの原点である。
それらを認識することこそ、
今の日本が世界で活躍する活力となる。
その安定感が、国民がグローバルで行動する重しとなる。

 

 

◆まぐまぐメルマガ『国際インテリジェンス機密ファイル』。

ご登録はこちらです。


http://www.mag2.com/m/0000258752.html


世界のインテリジェンスに関する公開・非公開情報をお伝えします。