◆嶋聡『「大風呂敷経営」進化論:松下幸之助から孫正義へ』を読み解く
嶋聡氏は、2016年の参議院選挙に「おおさか維新」の候補として、出馬(比例区)。
※要旨
・わたしは以前、ソフトバンク社長室長を務めていた。
その前は、衆議院議員であった。
2005年9月の郵政解散総選挙で3期9年間務めた議席を失った私は、
その年の11月からソフトバンク社長室長となった。
そこでは、「孫正義の懐刀、知恵袋」と呼ぶ人もいる。
・ソフトバンクに入社したのは、
「瀬島龍三さんのような企業参謀、やがては国家参謀になりたい」
ということからだった。
・わたしが瀬島龍三氏に直接教えを受け、
「参謀」という生き方に魅力を感じたのは、
松下政経塾に学んだ縁である。
・松下幸之助と孫正義という2人の間には、
共通する経営者としての発想がある。
卓越した先見性に基づき、
100年単位のスパンで壮大なビジョンを描く。
ビジョンで夢を終わらせず、実行する。
そして、視線の先には単なる営利でなく、
世界を変えるという志がある。
・わたしはこの2人に共通するのは、
「大風呂敷」の思想であると考えている。
・「大風呂敷」とは、多くの人が実現不可能と思う高い目標を
掲げることを意味する。
しかし、それが大風呂敷のままで終わるか、
現実的な目標に変えてしまうかは、
掲げる人間の「実現力」による。
・では実現力が人並みなら、
大風呂敷を広げないほうがいいのか。
普通の人が孫正義の真似をしても意味はないのか。
そうではない、と私は思う。
・長期的、多面的、根本的に考えれば大風呂敷になる。
・孫さんはよく、
「頭が干しきれるまで考えよ」
と部下に言う。
このアドバイスは、
「誰もが『大風呂敷』を広げられるようになるための方法」
でもあろう。
・グーグルのCEOだったエリック・シュミットはこう言っている
「我々の目標は、世界を変えることだ。
金を稼ぐのは、その費用を手に入れるための手段に過ぎない」
・GEのCEO、ジェフリー・イメルトはこう言った。
「GEで働けば、歴史を作り上げることができる」
・世界の経営者、特にアメリカの巨大企業のトップたちは、
莫大な利益の追求とともに、
必ず地球規模の課題への取り組みという目標を持っている。
・スプリント買収の際は、
ワシントンのロビイストに会った。
現代的なオフィスを構え、
コンサルティング・ファームさながらのプレゼンを駆使するロビイストは、
日本の政界で目にするいわゆる
「口利き屋さん」とはずいぶん違って見える。
だが、彼らとほんの数分話しただけで、
ワシントンも永田町と同じ論理で動いていることが、
私には分かった。
・なぜ大風呂敷を広げるとまわりが支援してくれるのか。
ソフトバンクには多くの資金と人材が集まる。
もっと大きな例でいえば、アメリカのシリコンバレーには、
世界中の投資家やエリートが集まってくる。
これは「世界を変える」という「大風呂敷」が、
広げられているからこそなのである。
・繰り返すが、地道な努力はもちろん必要である。
それプラス、いよいよ勝負というときには「ワープ」が、
必要なのである。
・ソフトバンクの営業力は凄い。
具体的にどんな手法を使っているかは、
トップシークレットだから明かすわけにはいかないが、
国会議員だった私が「こんなふうにやれば選挙でも必勝だろう」
と舌を巻くほどのものだ。
だが、それだけの営業力を持ちながら、
営業スタッフの力だけに頼らないのが孫正義だ。
・大きく広げ、細事にこだわる。
大志を抱いている者ほど小さな物事にも力を尽くし、
遠大な考えを持っている者ほど、
細かいことを疎かにしない。
・GEのイメルトは、こう言った。
「今日の激変する世界で成功を左右するのは、
何を知っているかではなく、どれだけ早く学べるかである」
・大いなる素人集団のなかで、
孫さんは率先して猛スピードでその分野について学び、
まずはグループ一の専門家になってしまう。
そして、戦略のグランドデザインを描き、
具体的なアクションを起こす。
社長がこれだけ勉強しているのだから、
部下も必死で後を追わないわけにはいかない。
・誰もまだ成し遂げたことのない、前代未聞の挑戦なら、
無理だと思ってしまうかもしれない。
だが、よその国ではすでに成功例がある、あるいは、
先人たちはもっとすごいことを実現した、
と先行する成功例に目を向けることで、
「自分にもできるのではないか」
という発想が生まれてくる。
そうなると、人は自然に、
「どうすればできるのか」
と考えはじめるものだ。
・公共投資や補助金に頼らないのが孫さんの流儀であり、
ソフトバンクの価値観である。
・スティーブ・ジョブスは、
スタンフォード大学の卒業式で次のようにスピーチした。
「人生では、あらかじめ将来を見据えて点と点を結びつけることはできない」
「そのときには無関係に見えるいくつもの点を後から結びつけるのだ」
・大風呂敷の背景にあるのは、次のような原則だ。
1.目標は高く明確に。
逆算方式で行動せよ。
2.時代に乗って実現力を手に入れよ。
3.リーダーとしての職人芸を磨くべし。
4.ただ一つの「成功のコツ」を心得よ。
5.大風呂敷は思想からはじまる。
・大風呂敷を実現するためには、
たくさんの人を巻き込み、
応援と協力を取り付けなくてはいけない。
そのとき、大風呂敷のビジョン自体が魅力的であることは当然、必要だ。
・もう一つ大切なのは、
それが人々の想像力に訴えかけるリアリティを持つことである。
実現が簡単か困難かは別として、
その目標をリアルに思い描けなくては人は動かない。
その助けとなるのが数値である。
・長期的な目標をリアルに描き、
それを実現するために今、何をすべきか考える。
これが「長期ビジョン逆算方式」である。
・真剣に考えれば、目標は明確な長期ビジョンとなる。
それは目標の実現に向けていつ、何をすればいいのかを知るための
最も簡単な方法である。
・世界を変えるためにはリソースが必要である。
人、モノ、金を集めなくてはいけない。
どれだけリソースを集められるかは、
「大風呂敷」の実現力に直結する。
・リーダーとしての職人芸を磨くべし。
経営者はさまざまな分野の専門家を束ねて事業を運営する仕事だ。
同時に、人心を掌握し、
プロジェクトを指揮する一つの専門職だと見ることもできる。
・ウシオ電機の牛尾治朗会長は、
松下政経塾での講話で「職人技術」としての
社長業という話をしたことがある。
リーダーシップを含めて、
「企業経営というのは、実は7割は職人技術なのです」
というのだ。
そして、社長としての職人技術を身につけるには、
「たゆみない訓練による熟練しかない」と。
・キャリアを真似することは難しい。
だが、リーダーシップもまた職人芸であり、
リーダーとしての経験を積んで熟練に至るのが重要である、
ということは誰でも学ぶことができる。
・出会いの奇跡を大切にする。
・孫さんは昔から使っているメールアドレスを今でも残していて、
そこには古い知り合いからの連絡が突然来る。
すると孫さんは、多忙な身にもかかわらず旧友に会いにいく。
たとえ大臣との面会を打診されようと、
友人との約束があればそちらを優先する。
おそらく秘書課は大変な思いをしているだろうが、
それが孫さんの流儀なのだ。
・人との関係を大切にしていると、
それまでまったく無関係の点と点のように見えていた人同士が、
思わぬ線で繋がっているように見えてくることがある。
スティーブ・ジョブスの言う「点と点をつなぐ」が、
人間関係でも起こるのだ。
・大風呂敷を広げる方法は、
スケールの大きいことを考えることばかりではない。
今日出会う人との縁を大切にするという気持ち一つで、
ものの見方は変わってくる。
※コメント
ソフトバンクと孫さんの舞台裏が見えておもしろい。
社長室長という特異なポジションも、
いろいろなやり取りがあったようだ。
分析したい。
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