◆佐々淳行『私を通りすぎたスパイたち』を読み解く

 

※要旨


・私の警察、防衛における職歴年譜のなかで、
謎の空白となっていた1959年11月から
1960年7月の半年間、
実は密かにアメリカに派遣され、
ジョージタウン大学の「研修生」という名目で、
アメリカのFBIやCIAでスパイ摘発の
さまざまな訓練や学習を受けていたのだ。
そのときの体験が、その後のスパイや過激派との戦いに
おいて役立ったことはいうまでもない。


・警察に入って以降、
警察、防衛、内閣と歩んできた私の危機管理人生を振り返ると、
経歴としていちばん長いのは、
「外事警察」の情報官・捜査官である。


・1965年から2年半、
私は香港領事を務めていた。
大陸情勢について元国民党政府軍准将の孫さんから
アドバイスをもらっていた。
この老紳士が、暗号名エルピーという
日本の外務省の極秘エージェントであり、
警察から出向して領事を務めていた私が運用するスパイであった。


・香港領事時代、香港のストーンカッタース島で
日本海軍将兵の遺骨収集を行った。
その夜遅く、疲れ果てて帰宅すると、
見計らったように孫さんが現れた。
我が家のベランダからビクトリア湾越しに見える、
闇に浮かんだストーンカッタース島に向かって合掌し、
「国のために戦って死んだ軍人の霊は慰めなければいけない。
戦死者を大切にしなければ、いい軍隊は育たない。
感銘をうけた」
と言って、
戦死者に黙祷を捧げてくれた。


・「インテリジェンスとは紳士のホビーである」
と、英国人は言う。
イギリス国外での諜報活動を担当するMI6(秘密情報部)は、
組織の長が誰なのかずっと秘密にしていたが、
公表するようになってトップが「サー」であることがわかった。
貴族の職務だったのだ。


・弱いウサギは長い耳を持て。
インテリジェンスとは、
安全保障に関する意思決定に資するものである。
したがって、
それなくしては自国の安全保障政策を自分で決められない。
だから独立主権国家には情報機関が必須なのである。


・弱いウサギは長い耳を持つ。
そしていち早く危険を察知して、
逃げ出す足を持っている。
危機に打ち勝たなくてもよい。
危機を避けることも重要な危機対処法の一つなのだ。


・日本版NSCと秘密保護法、そこまではできた。
とはいえ、独立主権国家として要求される、
「インテリジェンス」の水準にはほど遠い。
強力なインテリジェンス機関、情報機関をもたないからだ。


・人材育成は一朝一夕にはできない。
情報収集は、コンピュータで検索したり、
解析して調べたりすればわかるというわけではない。
やはり基本となるのはヒューミントであり、
その重要性は比較にならない。
緊急事態に対処するのは、何といっても人間の知恵と、
相互の信頼関係である。


・外国の情報機関と個人的な付き合いがあれば、
「公式には手に入らないはずの情報」が手に入るし、
「入れないのが建前の場所」にも立ち入ることができるのだ。


・そのためには各国の情報機関、すなわちCIA,MI6、
あるいはモサドといった連中と日常的に付き合って、
情報機関や治安機構の本部に入っていける要員が必須になる。
かつてそれを引き受けてきたのが私だった。


・「おい、ちょっと行ってくれ」
という後藤田命令ひとつで、
不可能とも思える任務をいくつも完遂できたのは、
私がインテリジェンスの世界にいたからだ。
情報官として、
各国の情報機関の人間と付き合っていたからに他ならない。


・外事警察から国際インテリジェンス・オフィサーの
道を歩んだ私だが、どうにか情報の世界で一目おかれるようになるまで、
30年ほどかかっている。
人材育成は一朝一夕にはできない。
個人的なネットワークを築くまでには、
長い時間がかかるのである。


・平時から「裏」の世界と「表」の世界の境界線に
関する知識や人脈がないと、
2020年の東京オリンピックも控え、
増加が予想される国際テロをはじめ、
国家レベルの事件、事案に手も足も出ないことになる。


・国際的な緊急事態に備えて情報を収集、分析し、
事件勃発となれば十分に目や耳の役割を果たすだけでなく、
交渉や抗議ができる口や手足を備えた組織は、
日本にもあってしかるべきである。


・諜報活動、とくにヒューミントは、
人間の機微に通じいることが絶対の要件である。
現場要員にも上司にも、
さまざまな経験を積んで精神的に
成長していることが求められる。


・ことに上司には「清濁併せ呑む度量」が必須だ。
敵を出し抜くためには、
状況を判断しながら臨機応変に指示を出せる能力も必要だ。
その上で、百戦錬磨でなくてはいけない。

 

・国際紛争を解決する手段として軍事力を放棄した日本としては、
インテリジェンスが頼りのはずだ。
独立主権国家にはインテリジェンス機関、
国家中央情報局の創設が必須なのだ。

 

 

※コメント
あらためて、佐々氏の波瀾万丈な諜報人生を知った。
彼はいろいろ詳細に語ってくれているが、
おそらく世の中には彼のような体験談は沢山あるのだろう。
世には出ない、黙々と国のために今もなお、
情報活動をしている情報マンの方々に敬意を表したいと思います。


★佐々淳行『私を通りすぎたスパイたち』
の詳細,amazon購入はこちら↓

http://amzn.to/1PYeIhe

 

◆まぐまぐメルマガ『国際インテリジェンス機密ファイル』
ご登録はこちらです。

 

http://www.mag2.com/m/0000258752.html

 

世界のインテリジェンスに関する公開・非公開情報をお伝えします。