◆ジリアン・テット『サイロ・エフェクト:高度専門化社会の罠』を読み解く
※要旨
・ただ視点を変えるために、
必ずしもドラマチックな転職をする必要はない。
接する情報やニュースを変えてみたり、
知らない場所に行ってみたり、
普段接する機会の少ない人たちと会って、
彼らの視点から世界を見直してみたりすることで、
一時的に違う世界に身を置くことができる。
・旅するのも新たな人やアイデアとの出会いにつながる。
「ネットによって、豊かなアイデアや情報に
自由に触れられるようになった。
しかしネットですら『イノベーションの旅』、
すなわち知らない土地に出かけていって『野に咲く』新たな
アイデアに触れる経験の代わりにはならない」
とクリーブランド・クリニックの
トビー・コスグローブは語る。
・コスローブはクリニックの医師たちに、
会議や他の病院、医療とは無関係の施設への
出張を奨励している。
「分野を問わず、事を成そうとする者は、
パソコンをしまいオフィスを出よう。
新たな場所や普通とは違うやり方をしている人と
出会うための旅に出るのだ」
・何より重要なのは、
自分の属するサイロの外側にいる人や
アイデアとの出会いに対してオープンな姿勢を保つことだ。
・サイロシンドロームの弊害を緩和するための
アイデアはいろいろある。
フェイスブックがしたように、
大規模な組織においては部門の境界を
柔軟で流動的にしておくのが好ましい。
ハッカソンやオフサイトミーティングのような
異なる部門の社員が出会い、
絆を深められるような場所や制度を設けておくのも良い。
・社員を同じスペースに誘導し、
常に意外な出会いがあるように
建物の物理的デザインを工夫するのも有効だ。
・私は1993年にジャーナリストになる以前に、
ケンブリッジ大学で文化人類学の博士課程に在籍した。
人間の文化を研究する学問である。
タジキスタンに2年間、フィールドワークに出かけた。
・金融ジャーナリストになった当初は、
この一風変わった経歴を他人に知られないようにしていた。
ウォール街やロンドンのシティで評価されるのは、
MBAあるいは経済や金融、天文物理学をはじめとする
定量的科学の修士号や博士号だ。
・ただ2008年の金融危機から1つ明らかになったのは、
金融や経済で重要なのは数字だけではないということだ。
文化も同じように重要である。
人がどのように組織をつくり、
社会的ネットワークを形成し、
世界を類別するかといったことは、
政府や企業や経済が機能する仕組みに
決定的に大きな影響を与える。
・ブルームバーグNY市長の特命事項。
ブロンクスで、違法建築のビルに住んでいた家族が焼死した。
なぜ、ニューヨーク市庁の検査官は、
こうした違法建築を見つけることができないのか。
答えは、300もの細かな専門に分かれた部署、
つながっていないデータベース、つまり「サイロ」にあった。
・一見関係ない4つのデータベースを重ねてみる。
・CIAをはじめとするアメリカの情報機関が
なぜ2001年にアルカイダがもたらした脅威を
予見できなかったかを調べた捜査官は、
個別の組織がデータを抱え込み、
他者と共有しないというパターンがあることに気づいた。
・ジョブスはアップルを部門に分けなかった。
・ジョブスの後継者となったティム・クックは
こう書いている。
「アップルには独自の損益責任を持つ『事業部』は存在しない。
会社全体で一つの損益があるだけだ」
・このためアップルの技術陣がデジタル音楽の未来を
検討した際には、製品カテゴリーの垣根を越えて
さまざまなアイデアがブレーンストーミングされた。
社内で垣根を越えてアイデアを交換したことは、
有意義な成果をもたらした。
・フェイスブックのザッカーバーグは、
創業当初から、マイクロソフト化や
ソニー化しないためにはどうすればよいかを
考えていた。
・フェイスブックのシュレップは、こう説明する。
「社員が活発に移動し出会いが増えるほど、
相互作用が増えることを示す研究結果は山ほどある」
建物の間のスペースは魅力的な「雑談スペース」に仕立て、
さわやかなカリフォルニアの気候の下で
社員が交流できるようにした。
・オハイオ州の病院、クリーブランドクリニックの場合。
建築部門は空中通路を明るく開放的なデザインに変え、
壁には魅力的な芸術作品やスローガンを掲げるなど、
通る人が足を止めて会話したくなるような雰囲気にした。
フェイスブックと同じように物理的な空間配置によって
サイロ破壊を促そうとしたのだ。
・通路は正式な全職員集会より交流を
促す効果が高かった。
「用事があるから通路に行くのだが、
結局それとは無関係の人と出会って話すことになる。
目的地にたどり着くまでの所要時間は長くなるが、
新しいニュースを仕入れることができるので、
時間の無駄ではない」
とモディックは語る。
※コメント
いちいち納得する話ばかりであった。
やはりいつの時代でも、
スペシャリストでありゼネラリストを目指したい。
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