◆常井健一『小泉純一郎・独白』を読み解く

 


※要旨
(敬称略)

・「小泉純一郎にオフレコなし」
一年生議員の頃から
永田町界隈の記者たちの間で
そう謳われただけあって、
ロマンスグレーの男はざっくばらんに語った。


・果たして、小泉本人は十年の沈黙を破り、
総理退任後初のロングインタビューに応じた。
そして、2015年10月、
親子ほどの年の差があり、
遠慮というものを知らない一人のフリーライターと
4時間半にわたって真摯に向き合った記録が、
本書である。


・小泉はどうやって原発ゼロを実現するのか。
国民のコンセンサスを得るために
どんな道筋を描くのか。
私はそれらを直接確かめようと思って筆を執り、
銀座・伊東屋で買った便箋を7枚ほど使って、
「どうやって実現するおつもりか?」
などと綴り、
無謀とは感じつつ小泉に宛ててみた。


・そして、予想に反して、
11日後に冒頭の返答が来た。
しかも、自ら携帯電話で直接掛けてきたのである。


・小泉は、インタビューの会場を東京・赤坂の
小料理店「津やま」に指定してきた。
若い頃に使えた政治の師・福田赳夫に紹介されて以来、
約40年も台所として通い詰める名店だという。


・案内された部屋にはロマンスグレーの男が
一人で座って待ち構えていた。
「どうも、初めまして」
「オッ」
男は陽気にワンフレーズで返して、
こちらを振り返った。
正真正銘の元総理であった。
「そこの真ん中が常井さんの席ね」
小泉はすくっと立ち上がり、
上座を指した。


・2005年8月、
郵政法案が参院で否決された後、
記者会見で衆院解散を宣言した姿が印象に残っています。
当時、ちょっと酒を入れて臨んだという
逸話がありますが?

「ちょっとじゃないよ。
2合ぐらいだな。
2合では全然赤くならないよ。
平気な程度は自分でよくわかっている。
酒と女は二ゴウまでって(笑)」(小泉)


・「竹下内閣の消費税国会(1988年)。
国会対策委員長が渡部恒三、俺が筆頭副委員長、
官房長官は小渕恵三、副長官が小沢一郎だった。
私は安倍晋太郎幹事長に『政調副会長になりたい』と言ったの。
国対は合わないから。
だけど、安倍さんに「いい勉強になるから」と言われて、
仕方なくやった。
渡部さんには
『清和会(安倍派)は一番国対に相応しくない人間を
連れてきた』
と言われたっけな」


・「野党の国対委員長を相手に、
昼間はケンカしながら、夜は料亭で各党別々に接待して、
毎晩酒飲むんだ。
『吉兆』『小安』『金田中』とかに
行くのが国対の仕事だった」


・「当時の社会党なんて横暴だったんだけど、
夜は仲良くするわけ。
別に大した話なんかしないよ。
バカ話するだけなんだけど、
それが大事なんだよ」


・「翌朝は、早くから国会内の自民党の
国対部屋に誰かいないと必ず野党に文句言われるんだ。
昼間も、ずっとその部屋にいなきゃいけない。
渡部委員長がいない時は
俺一人で詰めるんだから、
それを一年間続けたんだから、
あれで俺も相当勉強になった」


・「政治家は人が育てるっていうより、
自分で勉強するものなんだよ。
別に派閥で教えているわけじゃないよ」


・「政界は義理人情っていうのが大事なんだ。
関係ないといっても実際は
見えないところで大事にしている」

 

・「外国人のクラシック好きとか
オペラ好きなんていうのは世界共通の話題だから
当たり前なんだよ。
日本に興味持ち出したら、歌舞伎や落語に興味を持つんだと」


・「あいさつは3分以内に終われ。
聞くほうには3分は長いんだよ。
結婚式でも短いほうがいいんだ。
つまらない話をする人ほど
『簡単ですがこれで終わります』
と言う。
あと、間が大事。
早口は駄目なんだ」


・「政界っていうのは敵味方がすぐ変わるんだよ。
腹心だった者が裏切るし、
敵が味方してくれる時もある。
最初から決めるものじゃない」


・「秘書だった飯島勲は
私が厚生大臣、郵政大臣、総理になった時も全部秘書官、
同じなんだ。
飯島は30年間替えていないんだよ。
私のことを一番わかっている。
大変助かった。
あんなに仕事好きもいないよ」


・「和歌も好きなんだ、短歌。
電車乗っても飛行機乗っても本なんか読まないで、
短歌を考えている。
退屈しないんだ。
本読まないで自分で書いていくんだよ」


・「憲政の神様、尾崎行雄はこう言っている。
『人生の本舞台は常に将来に在り』
いつ自分が活躍する大舞台が来るかわからないという意味。
これ、尾崎は90過ぎても言っていたんだからすごいよ」


・小泉は、いつも決まって、
手ぶらで現場に登場する。
「講演は余談っていうか、
脱線するような話っていうのが大事なんだよね」


・小泉は初当選同期で連続当選者の中では
もっとも遅く政務次官に就任し、
党国対副委員長や全国組織委員長など
本人が望まぬ日陰のポストを引き受け、
長い長い「雑巾がけ」を強いられた。
その雌伏の時期に得た教訓が、
敵にも味方にも義理や人情を
重んじる態度に表れている。


・また小泉は、
「発表する前に原稿をチェックさせて」
などと、三流政治家が我が物顔で
注文してきそうな野暮なことは一切言わない。
筆者も、彼の発言をまとめた原稿を事前確認ナシで、
『文藝春秋』新年号に掲載した。


・今回の書籍にあたっても、
純一郎氏から電話がかかってきた際、
「書籍にします」
と切り出すと、
「ああ、いいよ。
常井さんの名前で書くなら。
お好きに出してください」
という明快で歯切れの良い返事をもらった。


・筆者は、今回の仕事を通じて、
現役時代の「小泉純一郎にオフレコなし」
という評判は本当だったのだと痛感した。

 

※コメント
小泉さんの本音が聞けておもしろい。
総理時代の思い出や若手議員の話など
興味深い。

 

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