◆冨山和彦『IGPI流、セルフマネジメントのリアル・ノウハウ』を読み解く

 


※要旨


・本書では、M&Aを主な舞台に、
さまざまな立場のビジネスパーソンが生き残るために、
いかにその状況をマネジメントし、
かつ自分自身をマネジメントすべきかを、
豊富な実経験をもとに紹介している。


・よく成功体験に縛られるというが、
成功体験に頭が縛られることは、実はそれほど多くない。
そこそこ一流の会社の経営者は、
バカではないから、頭ではわかっている。
だが、身体が縛られて身動きがとれないのだ。


・M&Aは日本人に合った解決策だ。


・合併してシナジーを追求するとか、
仕入れを一本化して規模の経済を働かせるというのは、
口で言うほど簡単な話ではない。


・一気呵成に取り組んでこそ効果がある。
買収や合併というのは本質的に経済行為なので、
経済的に価値を生むかどうか、
収益力が上がるかどうかを第一に
考えなければならない。


・「まずは融和優先で、仲良くなってから徐々にリストラを進めよう」
などと思っていたら、100年経っても終わらない。
時間が経つほど情が移り、しがらみができ、
目が曇る。
だから、買収直後がチャンスなのだ。


・とりあえず半年は様子を見て、
というのもナンセンスだ。
時間が経てば、ある種の慣性の法則が働いてしまうので、
いくら強力なリーダーでも、
その関係性を解きほぐすのに苦労する。
スピードこそ命、
というのはM&Aの世界でも同じなのだ。


・情にほだされて判断を誤らない。
経済合理性が唯一の判断基準である。
M&Aはスピードが命。
買収後の数ヶ月で勝負が決まる。


・経営トップは人の見極めから逃げてはいけない。


・会社との距離の取り方を身につける。
会社と付かず離れず、適度な距離を保つ。
いつでも辞める覚悟を持つ。
いま自分が置かれている状況や、
上司との人間関係がこれから先もずっと続くことはまずない。
そこはドライに割り切る必要がある。


・説明能力が高ければどこでも通用する。


・言うまでもなく語学力は不可欠だ。
自分の事業の価値を語れるか。
自分の、事業の価値をきちんと言葉にして、
説明できる人は強い。


・自分のビジネスの儲けの仕組みを理解している人は、
実はそれほど多くない。
大きな組織になるほど、
何がどうなって儲かっているのかが、
見えにくくなる。


・自分たちのビジネスの儲けの仕組みをよく理解している人、
自社の商品やサービスの価値を客観視できる人は、
新しくオーナーや上司になった人から見ると、
頼りになる。


・なぜなら、新しい上司が従来とは異なるルールや
ビジネスの条件を持ち込んできたとき、
できることと、すぐにはできないことを瞬時に判断し、
その理由を説明できるからだ。


・「なぜ」を自分の言葉で説明できる人は強い。
あなたは自分の会社を自分の言葉で説明できるだろうか。
「なぜ」を考える上で、
自分が関わる一部のビジネスにとどまらず、
トップ目線で全社を俯瞰できる人は、
環境の変化に対する適応力が高い。


・議論のできない人はいてもいなくても同じ。
営業マンにしても、ただ 売るのではなく、
「製造コストがいくらで、販売管理費がいくらで、
いくらで売れば儲かるのか。
逆に、いくらまでなら値下げに応じることができるのか」
このようなことにまで意識を持って、
理解して打っている人は、
いざというときに強いのだ。


・小さくても経営経験のある人は注目される。
規模は小さくても、組織のトップを経験した人は、
説明能力が高い。


・子会社や関連会社を経営したり、
社内ベンチャーを立ち上げたり、
独立採算制の事業部を見ていた人というのは、
たいてい数字に強い。
数字で客観的に説明できる人は、
外国人との交渉でも見劣りしない。


・小さな会社でもトップを経験すれば、
営業項目はもちろん、財務三表などの管理系指標や人事なども
一通り全部見なければいけないので、
経験値の質が違うのだ。


・経営トップの経験がなくても、
経営トップになったつもりで日々の判断を
考えることである。


・販売戦略や施策をトップ目線で語れる人、
自分なりの改善案を考え続けている人は、
会社にどれだけの変化が起きても、
きっとサバイブできるだろう。


・自分のビジネスの現状と課題を把握し、
数字で説明する能力があれば、どこでも通用する。
自分の意見を持たない人は、
相手にされない。


・初対面の人とすぐにわかり合えるオープンな性格は良い。
他人との間の心の壁を崩すことがうまいオープンな性格の人は、
初対面の相手とでも気兼ねなく話ができるし、
新しい環境にもすぐ慣れる。


・変化を拒むのではなく、
むしろ積極的に受け入れて、
新しい知識をどんどん吸収する。
学ぶことに対して謙虚であり、貪欲な人は、
環境の変化を歓迎する。


・相手の人種や話す言葉に関係なく、
人との距離をうまく近づけられる人は、
これからの時代は特に重用されるだろう。


・オープンマインドな人は、
基本的にコミュニケーション能力が高い。


・誰とでも話ができる人、
聞く耳を持っている人、
学ぶ姿勢を持っている人は評価が高い。


・どこへでも持っていける汎用的なスキルとは。

1.財務・会計・法務などの知識、
論理的思考力、語学力、コミュニケーション能力、
リーダーシップなどの「基礎的能力」がすべての土台となる。

2.「業界の知見」や「専門能力」が乗ることで、
自分の専門分野が決まる。

3.さらに「社外人脈」が広い人ほど、
仕事の幅が広がる。


・たとえば「法務や契約業務に明るい営業マン」とか、
「エンジニア出身の財務マン」、
「英語がペラペラの法務マン」といった人なら、
おそらくどんな局面でも乗り切れるだろう。


・要するに、柱を2本用意することである。
今まで営業をやっていた人が、いきなり財務に行けと言われたら、
嫌がるのではなく、
むしろチャンスだと思えばいいのである。
「せっかくだから、財務を極めてやる」
というくらいの気持ちで取り組めば、
使える柱が2本になる。
それが後々、自分の身を守ってくれる。


・積極的に違う仕事に手を出して、
2本の柱で自分の身を守れ。


・ふだん仕事で使っているフレーズを英語の定型文に直して、
それを覚えればいいのである。
これがいちばん手っ取り早く、
かつ実践的な英語の勉強法だ。


・フレーズ集を滞りなく発音できるように、
音読練習せよ。

 

・量をこなさなければ英語は身に付かない。
語学というのは、実は、
単純作業の積み重ねで大抵の人はマスターできる。
同じものを何度も繰り返し聞いて、
完全に暗記してしまう。
それができれば、いつのまにか
話せるようになっているものだ。


・語学習得の「量」が命。
定型文をたくさん暗記し、組み合わせる。
同じ音源を繰り返し聞き、
大量の英文を読みこなせ。


・組織の中心から外れたところで力を蓄える。
自分の組織をいったん離れてみると、
組織を立体的に把握するのに役に立つ。


・M&Aは人材育成の最高の舞台。
ビジネスの総合格闘技だ。
M&Aで海外の会社を買いに行く。
買う側の担当者として一度でもM&Aの現場を踏むと、
その経験は何物にも代え難い強烈な武器になる。


・M&Aに必要なスキルは非常に多岐にわたる。
まず相手国の経済・社会情勢に詳しく知る必要があり、
さらに業界におけるその会社の立ち位置を的確に分析する
情報収集力と分析力が求められる。


・続いて、M&Aのアドバイザリーである外部の
プロフャッシュナルや関係各所と連携して事に当たるための
ネットワーク力や、コミュニケーション力も重要だ。
そしてデューデリジェンスにおいては事業、財務、法務の
知識が不可欠で、円滑なコミュニケーションを図るための語学力、
有用な人材を見抜くための洞察力も求められる。


・ある総合商社では、社内昇進の条件として、
M&Aの知識、実行能力を打ち出している。
実力がある人ほど、海外を含めた子会社の社長を経験させて、
やがて本社に戻ってきて偉くなるというパターンがある。


・田舎の駅長さんみたいなもので、
全部自分でやらなければいけない状況に
置かれた人間は強い。
小さな会社に出向するなりして、
営業から経理から、全部自分で見なければいけない
というポジションを一度でも経験した人は、
一段階上の視点から会社や経営を見られるようになる。


・転職もM&Aも最初の100日が肝心。
最初の3ヶ月で「あいつはできる」という評価が得られれば、
その後の仕事はスムーズにいく。
M&Aもスピードがすべてなのである。
短期間に矢継ぎ早に意思決定していかなければ、
うまくいくものもうまくいかない。


・意思決定できるかどうかは、
最後は覚悟の問題だ。
要するに、武士(もののふ)になれるかどうか。
自分さえ悪者になって、
ここで1000人をリストラすれば、
残り1万人の従業員の職を守ることができるというときに、
リーダーが腹を括る覚悟があるか。
腹を括れなければ、
結局、1万人が路頭に迷うことになる。


・どうせ失敗するなら若いうちに。
M&Aにしろ、転職にしろ、
毎回うまくいくとは限らない。
なるべく早く、なるべく小さく、なるべく安く間違える。


・だから小さい会社から始めて、
小さな失敗を積み重ねておいたほうがいい。
荒っぽい言い方をすれば、小さいM&Aは、
日本企業にとっては、「人材育成のための勉強代」
と割り切ってもいいくらいだ。
何回か失敗を繰り返せば、
ノウハウも蓄積されて、そのうち小さな成功が手に入る。
大型案件に手をつけるのは、
それからでも遅くないのである。


・買う側の立場でM&Aを経験すると、
一生使える武器となる。
小さな失敗を繰り返して、
ノウハウを積み重ねる。


・組織と組織のハブになる人材となれ。
海外企業を買った後のマネジメントが
できる人材が足りない。


・本社と現地との間の軋轢を吸収できる人材となれ。


・清濁あわせ呑むタイプが求められる。
海外子会社を統括する立場の人は、
国ごとに違うローカルルールと
本社のルールの調整弁となる。
その意味でもある程度「あそび」があったほうが、
運用上はうまくいく。


・日本の本社と海外子会社の間の調整弁の役割を果たす人は、
さまざまな軋轢を飲み込み、
清濁併せ呑む度量の大きさが求められる。

 


※コメント
冨山氏のメソッドは、
実践的で役に立つ。
スキルを身につけるには時間がかかるかもしれないが、
一旦身につける、人生に大きく役立つ。


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