◆辰野勇『モンベル・7つの決断:アウトドアビジネスの舞台裏』を読み解く


辰野氏は、登山用品メーカー「モンベル」の創業者。

 

※要旨


・創業者の企業経営はアルパインスタイル。
創業40年にして日本を代表するアウトドアメーカー
を築き上げた、創業者・辰野勇が語る経営哲学と人生論。


・「登山家は怖がりだ」
だからこそ、晴天でも雨具を持ち歩き、
日帰りの登山にもヘッドランプを必ずザックに
忍ばせている。
命がけの「リスクマネジメント」は、
まさに会社経営にも通じる。
未来を想像し、憂えるがゆえに下した私の
「7つの決断」を紹介したい。


・グローバルマーケットへの挑戦は、
国内だけでは経験できない多様な刺激を与えてくれる。
同時に、日本市場におけるモンベル商品のたゆまぬ改善と、
グローバル企業としてモンベルブランドの総合力の強化を
促す大きな要因となっている。


・創業当初、下請け仕事もやっていた。
しかし、当社で企画したものが、
コストの安いところへどんどんと流れていった。
このことで心に誓ったのは、
「金輪際、下請け仕事はしない」
ということだった。


・下請け仕事をしている限り、
何事においても自分達には決定権はない。
突然、契約を打ち切られても文句も言えない。


・「今日の1000万円の売上よりも、
明日につながる100万円の仕事を作ろう」
この考えが、仕事を選ぶ判断基準になった。


・そして「モンベルブランド」を確立することこそ、
われわれの進むべき道であると確信した。


・1980年、パーティで
アパレルメーカー「パタゴニア」の創業者である
イヴォン・シュイナードと出会った。
そこでクライミングやもの作りの話に、
お互い共鳴した。
それがきっかけで、ビジネスを一緒にやることになった。
パタゴニアの製品を我々が売ることになったのだ。


・私が目指していたのは、
「モンベル」というブランドを築き上げることだった。
そのため、売上の4分の1を占めるに至った
パタゴニアのビジネスに空しさを感じていた。
1987年、
私はパタゴニアとの契約解消を決断した。
そこには一切の迷いは無かった。


・パタゴニアの副社長にこう切り出した。
「クリス、パタゴニアの日本での販売は自分達でやってくれないか?
今のモンベルは、日本の商慣習に縛られて、
直接ユーザーに品物を提供することは難しい。
しかし、アメリカ企業のパタゴニアは、
日本の商慣習にとらわれることなく、
直営店を開設して直接ユーザーに商品を提供すべきだと私は思う」


・これは率直な私の願望でもあった。
私の思いを説明すると、副社長は理解してくれた。
その後、私はパタゴニアの日本事務所の開設や、
日本人スタッフの面接まで手伝って、
日本国内のビジネスのすべてを彼らに引き渡した。
双方、何の遺恨も無い、
「さわやかな別れ」
だった。


・創業者の企業経営は「アルパインスタイル」。


・会社経営も登山に酷似しているように私には思える。
両社の最も大きな共通点は、
「リスクマネジメント」の重要性だろう。
常に最悪の状況を想定したうえで、
準備して、行動する。
無論、自らが立てた目標に向かって、
自分の意思で活動する点においても、
その原動力となる熱意は同様に求められる。


・会社経営もよく似ている。
とりわけ創業者にはカリスマ的なリーダーシップが
求められる。
前例のないさまざまな問題を手際よく解決しながら、
進むべき道を選択して行動し続けなければならない。
そうした創業者としての素養を、
私の場合、アルパインスタイルの登山経験を通じて
培うことができたのかもしれない。


・社員の能力が経営者の能力。


・これまで下してきた「決断」は、
まさに社員の行動に支えられてきた。
「起業」に始まり、
「海外進出」「パタゴニアとの決別」「直営店開業」
「価格リストラ」「モンベルクラブの発足」「アウトドア義援隊」
そして「岳人の発行」。
そのときどき、ともに頑張ってくれた仲間達がいた。


・モンベルの基本理念は、
「何事も自分たちの手で取り組む」
ということだ。


・創業3年目に西ドイツへの海外輸出が決まったときも、
営業担当だった工藤が近畿通産局に何度も足を運んで、
貿易実務を一から勉強して、
自力で輸出手続きを完了させた。


・「どんなプロも、最初の1日目がある。
そして今日がその一歩なのだ」
これがモンベルのモットーである。


・ネット通販をはじめるときも、
創業間もなかった楽天の三木谷社長から、
「楽天のシステムを使わないか?」
と誘いを受けたが、
私は独自のシステム開発を選んだ。


・無論、私にコンピュータやネットの知識が
あったわけではない。
それでも社内で努力して、
そのノウハウを構築しなければならないという
確信があった。
その判断は、経営者が嗅ぎ取る「匂い」ともいうべき
直感だった。


・イベントも、すべて社員の創意工夫と
チームワークで実施してきた。
イベントを開催するにあたって、
必要となるであろう保険代理業や旅行業の資格を、
経験の無い一人の女性社員が独学で取得した。


・こうした一つ一つの積み重ねを通じて
彼らは達成感とともに自身を身につけていき、
私にとっては最強と誇れるプロ集団が
できあがっていったのだ。


・期待する働きができない社員には、
ただただ時間をかけて教えるか、
その人の特性にあった仕事を見つけ出すしかない。
日本のような小さな島国にあっては、互いが補い合い、
助け合い、支えあうことでしか、命をつなぐことが
できない社会的弱者には逃げ場がない。


・突然変異のような冒険心を持った人間を神様が作られて、
彼らが人間の限界を切り拓いてきた。
そしてその行為は、自然を舞台にした冒険にかぎらず、
あらゆる分野で実践されてきた。
(あるアメリカ人の言葉)


・起業家もまた、冒険家と共通する精神性を
持ち合わせている。
ゼロから事業を築き上げる作業は、
まるで前人未到の岩壁に挑む冒険家のそれに似ている。
計画を立て、最悪の事態を想定しながら、
なすべきことを粛々と実行していく。


・槇英雄さんは、
「社長の仕事は、会社の事業の意味と目的を明確に
社員に示すこと。
それがあなたの最も大切な仕事なんだよ」
と教えてくださった。


・「では、何を目的にして会社を経営するのか?」
自問自答を重ねた私は、
次のような答えに思い至った。
「描くべき目標は、事業の成功ではなく、人生の成功なのだ」

 


※コメント
心にしみる経営とビジネスを学んだ。
お金を継続して儲けることも大事だが、
それと同時に、ビジネスを楽しむことの
大切さを実感した。


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