◆松田賢弥『菅義偉・内閣官房長官、影の権力者』を読み解く
※要旨
・小此木彦三郎議員の秘書になった菅義偉は、
小此木の自宅の隣に書生のように住み込んだ。
朝食を共にし、小此木に四六時中仕える。
小此木は菅を一から鍛えた。
・ある時、車の後部座席にいた小此木が、
「おまえなんか出て行け!」
と菅を怒鳴り、座席を足で蹴ることがあった。
しかし、菅は秘書を辞めて出て行くわけにはいかなかった。
・菅は2015年12月、
第二次安倍政権で官房長官に就いてから4年目に入ったものの、
彼を形容する言葉は、
「安倍官邸を牛耳る男」
「軍師」「汚れ役」などと尽きない。
菅という政治家はどのように力をたくわえてきたのだろうか。
・菅は『追悼・小此木彦三郎』で
小此木についてこう書いている。
「自分の選挙運動は熱心でなかったのですが、
人の選挙、人に依頼された事は、一生懸命でした。
照れ屋で、人見知りで、
人の輪を大切にする政治家でした。
常に国家を考え、
いつも目に見えない所で頑張っている人に
配慮している神経の細かなやさしい人でした」
・人心掌握こそ菅の真骨頂。
菅は、小此木の秘書としては7番目で序列は一番下だった。
しかも口数は少なく、
寡黙な印象は昔から変わらなかった。
元県議の村上はこう言う。
「でも、菅さんは早くから秘書の中でも際立っていた。
一言でいうなら『不言実行』。
横浜市役所の、誰それのところにいけば
その案件の陳情が成就するのかを知っていた。
しかも、菅さんは陳情に行く前に自分で根回しを済ませている」
「たとえば商店街への振興補助金交付一つにしても
菅さんに頼むと、補助金要請に行った段階で
関連部署の調査・検討が終わり、
交付の方向で結論が出ている。
しかも菅さんは『わざわざ来ていただいて・・』と相手を立て、
決して恩着せがましいことや儀礼的なことは一切言わない」
「相手は、身内に会ったような親しみすら覚える。
その人心掌握こそ菅さんの真骨頂だ。
人事配置をつかみ、頭の中に物事を動かす引き出しを
いくつも持っている人なんです。
小此木さんが、その菅さんを手放すはずはなかった」
・神奈川県連元会長の梅沢健治は菅をこう評する。
「菅は人と会うとムダ口をたたかず、
『現場職人』と言うべきか、
全身で相手のいうことを聞く。
そもそも、失うものは何もないから怖いものもない」
・梶山静六と小此木彦三郎の仲にについて、
彦三郎の三男・八郎はこう語る。
「二人とも、今は廃れた義理人情を重んじる関係。
菅さんは梶山さんから、
間違いなくその薫陶を受けていると思う」
梶山と彦三郎は兄弟のように、
毎日頻繁に会っていたという。
・菅は小此木彦三郎から、
横浜という大都市で国と折衝し、
地方自治を積み上げることの意味と
官僚の操作術を学んだ。
・菅は相手を威嚇したり、
相手が萎縮するような言葉は使わない。
思うことを諄々と説く。
彼は饒舌な喋り方をするわけでなく、
相手の言うことをジッと聞く。
そして、ポツリポツリと言葉を返す。
・菅は、官房長官の役目について、
「細かいことにこそ気を配ることが大事なんだ」
と言う。
1998年の総裁選後、
梶山は総裁選に勝った小渕が梶山を冷遇する中で、
一緒に闘った菅を何とか然るべきポストにつけるよう
秘かに頭を下げ回っていた。
菅は政治家の心くばりを梶山から学んでいた。
・菅が好んで使う言葉に、「約束」がある。
「約束は守らなきゃ」
という時の菅は、複雑な国際情勢だろうと、
焦眉の国内問題だろうと、
決して高踏的な喋りでなく、
ごく普通の家庭でかわされるような口調で語る。
※コメント
菅さんの力の源泉を知ることができる。
日本の各地で彼のような裏方が、
経済と社会を支えているのだと感じる。
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