◆佐野眞一『巨怪伝・下巻:正力松太郎と影武者たちの一世紀』を読み解く

 

 


※要旨


・のちの昭和天皇を狙ったテロリストの
一発の銃弾によって警視庁を免官となった正力松太郎は、
戦後、読売を部数日本一に押し上げ、
日本プロ野球生みの親、民放テレビの始祖、
原発のパイオニアとして華々しい復活を遂げる。


・だが輝かしい正力神話の裏には、
決して顧みられることのなかった影武者たちの働きが、
常にあった。


・正力松太郎について取材を始めたのは、
1986年夏のことだから、
完成までに足かけ9年かかったことになる。
9年間、正力によって歴史から抹殺された人々の遺言を聞いて回った、
というのが、二千枚近いこの原稿を書き上げた直後の、
いつわざらる実感である。


・正力の事業を振り返るとき、
あらためて驚かされるのは、
惑星状に形成されたその人脈の厚みと多彩さである。
有能な人々を吸引せずにはおかないこの魔的なまでの磁力こそ、
正力がメディアの権力を完全に掌握したことのなによりの証だった。


・正力の長女の梅子によれば、
正力は逗子の家の庭にはえた雑草を引きむしりながら、
何時間でも考え事をし、考えが決まると、
たちまち実行に移していたという。


・戦時中、児玉誉士夫は国粋大衆党総裁の笹川良一の紹介により、
海軍航空本部の物資を上海で調達する児玉機関を差配しており、
自由になる金はいくらでもあった。


・辻嘉六の口利きで、「天皇制の絶対護持」を条件に、
児玉が鳩山一郎に提供した新党結成資金の元となったのは、
その児玉機関の残存資産だった。
児玉自身は「現金で約5000万円、
そのほか金、プラチナ、ダイヤなど、いまの金に換算したら、
それこそ大変なものだろう」と述べた。
現在の貨幣価値に換算すれば、
おそらく数百億円に達することは間違いない。


・第二次読売争議における柴田秀利の計略や、
2リーグ分裂時の黒崎貞治郎の奔走も、
はからずして、
正力を再び活躍の舞台に浮上させる役割を果たすことになった。


・これら惑星状に形成された見えない人脈こそが、
生涯最大の苦境期にあった正力をして、
奇跡的に復活させた、本当の切り札だった。

 

※コメント
正力さんの圧倒的な人生にあこがれる。
人はこのように波瀾万丈に生きられるものなのか。
時代は関係ない。
大切なのは、自分自身なのかもしれない。


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