◆竹中平蔵『竹中流「世界人」のススメ』を読み解く


※要旨


・世界は広い。
世界を知ることは楽しい。
そんな世界で活動することはもっと楽しい。
そしてそれは、誰にでも可能だ。


・私は学者として、そして大臣として世界の要人たちと接する中で、数多くのグローバル人材と出会ってきた。
彼らは英語などのスキルはもちろんだが、何よりもマインドの面で、多くの日本人と圧倒的な差があった。


・30代、40代、いや60代からでも世界に飛び出すことは可能だ。
比較生産費説を唱えたリカードが経済学者として本格的に活動を開始したのは、
ビジネスマンとして活躍し、引退したあとのことで、40代になってからだ。

政治家の野中広務氏は57歳で衆議院議員に初当選。
それでいて、自民党の幹事長、官房長官までに上り詰めた。


・年齢がいかに言い訳にならないかがわかるだろう。
年齢を言い訳にする人は、たとえば30歳でも「もう若くない」と言う。
しかし、40歳になると今度は30歳の頃を振り返って「あの頃は若かった」と言う。
そして一生そう言い続けるのである。


・デジタル技術とは、簡単に言えば数字に直す技術のこと。
音を数字に直して閉じ込めたものがCDで、映像を数字に直して閉じ込めたものがDVD。
デジタル化により、大量のデータを光ケーブルなどを使ってより送信することができるようになったわけだ。


・必要不可欠なもの、それはイノベーションと英語。
イノベーションとは、結局は人間の知恵である。
さらに新しいものを許すという社会の柔軟性のようなものも必要だ。
これらの条件が揃ったとき、イノベーションが生まれる。


・グローバル化は、どれだけ批判が起きようとも、今後も進んでいく。
その中で英語は、国際語の王座に君臨し続ける。


・東京の優れたインフラは、決して一朝一夕につくられたものではない。
江戸時代からの伝統を脈々と引き継いでいると、私は考える。


・英国の宰相、チャーチルは経済成長に関するある名言を残している。
「成長は、すべての矛盾を覆い隠す」
まさに言い得て妙である。
これは裏を返せば、「成長が止まったとき、すべての矛盾が表面化する」ということでもある。


・情報が取りやすい時代になっていることは確かだ。
大事なのは、情報をとったらそれを鵜呑みにせず、
それが本当に正しいかどうか自分で判断することだ。


・長期政権の裏には必ず「チーム」があった。
私の体験からも、物事を成功させるにあたって、チームで取り込むことは非常に大事だ。
実は小泉内閣が成果を出すことができたのも、このチームをつくったからだ。
小泉政権にかかわらず、中曽根内閣、佐藤内閣、池田内閣など長期政権には必ずチームがあった。
こういったチームは、「ピザ1,2枚を分ける範囲」つまり4人から8人と決まっている。


・小泉内閣では、私と官房長官、経済界のリーダーなど計6人が毎週日曜日の夜9時に集まることになっていた。
何があっても全員この時間に集まり、情報交換しながら、
「これを官房長官から、こう落としてください」
「じゃあ私は総理にこの件を伝えておきます」
「これはみなさんから新聞記者に話してください」
などと打ち合わせを行うのだ。


・この会合についてある参加者は、「このチームが5年間見つからなかったのは奇跡だ」
といったことがある。
だが、見つからなかった理由はとても単純で、この会合が毎週日曜日だったからだ。


・グローバル時代のリーダーの条件は次の通り。

1.自分の頭で将来をしっかり見通していること。

2.自分で考えた将来の見通しについて、組織の人間に語って理解させる能力を持っていること。


・小泉純一郎氏はリーダーに必要な「語る力」を持っていたにもかかわらず、退任後はいっさい語らない。
その姿も見事である。
これは自分のやったことに、強い自信を持っているからだろう。
自分のやるべきことは、全部やった。
あとは勝手に評価すればいい。
引退後もあれこれ語るのは、みっともないと思っているのだと思う。


・外に出よう、そして時代のダイナミズムを感じよう。


※コメント
日本の勉強は、古典からはじまり、そこからミクロの話へ流れる方法が多いようだ。
それとは逆に現場やミクロの話に興味をもち、そこから大きな理論や本質の勉強に入るのも面白い。
竹中氏は、そう述べている。
総論も各論も、車の両輪と同じで、両方重視させたい。