◆武重史郎『角さんの気くばり』を読み解く


※要旨


・羽田孜・元首相が初の国会議員立候補のとき、田中角栄は佐藤政権の幹事長だった。
そこで羽田さんは角さんからこうアドバイスされた。

「きみは父親の地盤がある。だから当選は間違いないだろう。
が、気を抜いてはいけない。選挙は政治家にとって、またとない勉強のチャンスなのだ。
とにかく3万軒の家を一つひとつ、しらみつぶしに回れ。
この村の特産物は何か、道路はどうなっているのか、生活に問題はないか、など考えて歩け。
それが当選後、大いに役に立つ。
議員になればいちいち選挙区に帰ってこれない。
だから今のうちにとことん市町村の問題点を把握しておくことが大切だ」


・若手、先輩のみならずライバルにも気を使え。
鉄は熱いうちに打て。
このことわざどおり新人に対する角さんの気くばりは、至れり尽せりである。


・敵に使う気くばりこそ一流。


・人情の機微に通じた人こそ心酔される。


・人脈がイデオロギーに打ち勝つ。
金丸信や竹下登らは特に野党操縦法に長け、野党幹部と一緒にゴルフ、麻雀、
料亭での飲食をすることも珍しくなかった。
こうした人脈に、角栄流の気くばり術が加味され、野党との関係はより円滑なものになっていた。


・角栄は官僚を使いこなせた稀有の政治家であり、
「役所ジャック、官僚ジャックの名人」と評する人さえいる。
官僚組織の中で、実務の中心は課長、課長補佐クラスである。
そのため田中は、主要な会議でも次長、局長以上に、彼らの話に耳を傾けた。


・また角栄の努力を見逃すわけにはいかない。
毎朝4時におきて、官僚資料や新聞に目を通し、気になる箇所には赤鉛筆でチェックした。
発想の豊かさは万人が認めるところ。


・データさえ良ければ結論は出る。


・自腹を切って面倒を見る。
学閥も閨閥もない角栄だけに、官僚の間にネットワークを作るためには、
独特の人情味、気くばりを駆使するしか方法はない。


・部下のしつけは最高の気くばり。
昭和47年、角さんと福田さんが総裁のイスをかけて争ったとき、
田中派の秘書たちが大量の事務処理に徹夜の構えで、取り組んでいた。
そのとき角さんが毎晩顔を出し、差し入れも欠かさなかった。


・数字の強さとユーモアが気をくばることになる。


・他人の時間を大切にしろ。


・首相官邸の警護を行っていた麹町署の署員からは角さん支持の声が多い。

「麹町署員は歴代総理に使えているわけですが、田中さんが一番人気」

「福田さん、大平さんも人柄はよかったが、田中さんは特別だった。
角さんだけは、夕方官邸を出るとき、いつもとても心がこもって、片手を挙げて、ご苦労さんと声をかけてくれた。
万が一のときに、角さんのためなら命を投げ出しても惜しくないと言っていた署員は少なくない」



・忙しいときこそ積極的に動く。
日本的気くばりは最高のもてなし。
とにかく来客には気をつかえ。


※コメント
角さん伝説は、面白いものが数多くある。
それは今でも、見習える点はたくさんある。
もっと学んでいきたい。