あまりにも
幸せな時間だった。
気持ちよくて
他のことを何も考えられなかった。
だから
私は時間のことを
すっかり忘れていた。
何時だったのかも忘れていたし
そういえば
その時間を購入しているのだということも
すっかり意識になかった。
時計を見たら
なんと
もう残り時間が45分ぐらいだった。
そんなに時間が過ぎていたのだ・・・
かなり
びっくりした。
普通の男女の関係性なら
終わりの時間を決めて
会うということは
少ない。
でも私が購入して会っているので
絶対に終了時間を守らなければならない。
その現実が
ちょっと悲しかった。
時計を見て
それまで夢心地だった私も
少し現実に引き戻されたような気がした。
私はもっと
何時間でも一緒にいたい気持ちだった。
そしてこの日
私はホテルに
2人分宿泊の料金を支払っていた。
このホテルは
シングル予約では
他の誰かを部屋に入れることができなかったためだ。
だからセラピストが宿泊する予定は
もともとなかったけれど
宿泊できる環境はそこにはあった。
だから
朝まで一緒にいたいぐらいだった。
でも、そこは
現実世界。
彼も
時間を気にして
「後残り時間、ちょっとになりましたね」
とさりげなく言った。
また現実に引き戻された気がした。
ものすごく気持ちよかったし
彼が来てくれてから
ここまですべてが完璧だったけれど
終了時間が近づくにつれ
(当たり前なのだが)
きっちりと終了しなければならないという
現実に
この日初めて
寂しさを覚えた。
時計を見て
きっちりとしたちょうどその時間に
相手が帰ってしまうなんて
すごく
悲しいな、と思った。
これまでの男性との
関係性では
時間きっちりに
帰る人なんていなかったので
(もともと時間を決めて会うことがほぼなかったので)
夢心地で興奮しながらも
嫌でも現実を突きつけられた気分だった。
しかしながら
初日のこの日は
その現実があっても
時間のことはまだ
すごく小さなことのように思えて
圧倒的に幸せと刺激と高揚感のほうが
大きかった。