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私の考察:米ソフトウェア企業CEOが支援している臨床試験に期待

 双極性障害と栄養の関係としては、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)などの不飽和脂肪酸が有効なのではないか、という話が以前からあった。日本人約3,000人のゲノムワイド関連解析により、これらの不飽和脂肪酸の代謝酵素であるFADS1/2が見いだされた(Mol Psychiatry 2018; 23: 639-647)ことから、ますます着目され、不飽和脂肪酸の摂取が有効かどうかの検討が行われている。これらに関しては、普通の食事を取りながら不飽和脂肪酸のカプセルを服用するという形で、薬剤の試験と類似のスキームで実施できる。

 一方、本研究で用いられているケトン食は、炭水化物を1日20g(1日の摂取エネルギーの5%)に制限するという極端なものである。この場合、炭水化物の摂取源は野菜、ナッツ、レモンジュース、少量のチョコレートのみだという。摂取エネルギーの15~20%は、肉、魚、乳製品、卵、ナッツなどの蛋白質から摂取し、残りの75~80%は脂質から摂取し、上記の食品に加え、オリーブ油、ココナツ油、バター、マヨネーズ、サワークリームなどから摂取するという。このような食事は、常識的にはあまり健康的とはいえないように思えるわけであるが、それが本当に有効なのかは筆者自身も半信半疑にならざるをえない。

 なお日本でも、最近「ロカボ」が流行しているようであるが、これはlow carbohydrateの略で、Doctor's Eyeで糖尿病を担当している山田悟氏が主宰する「一般社団法人食・楽・健康協会」の登録商標だという。ケトン食では、炭水化物を多くとも1日40~50g以下に抑えなければならず、1食で摂取する糖質量を20~40g(1日3食とすると炭水化物60~120g)にするというロカボは、方向性は似ているもののケトン食ではない。

 精神疾患の食事療法については、これまでもほとんどエビデンスがなかった。資金の回収を見越して製薬会社が多額の費用を投入して臨床試験を行う新薬と異なり、研究費の出所もないことから、今後も民間療法の域を出ないと思われてきた。

 しかし、最近になって、米国のソフトウェア企業CEOのDavid Baszucki氏と夫人のJan Ellison Baszucki氏が、ご子息の双極性障害がケトン食で改善したことから、この治療法に心酔し、多額の研究費を投入し始め、ケトン食療法の臨床試験を計画しているという1)

 今回紹介した論文は、対照群がなくエビデンスとしては高くないものであったが、Baszucki夫妻のおかげで、食事療法としては珍しく、効くにせよ効かないにせよ、いずれその効果についてのエビデンスが示される時が来そうである。

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ほほう、双極性障害(躁うつ病)にも効くかもしれないとは、久しぶりに良い話題。