午後十時の映画祭・「裁きは終りぬ」 | B級おもしろ映画館

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「裁きは終りぬ」   1950年   106分   日本公開・1954年

  監督・アンドレ・カイヤット、

  脚本・アンドレ・カイヤット&シャルル・スパーク 

  出演・ミシェル・オークレール、クロード・ノリエ

 

ヴェニス国際映画祭・グランプリ受賞作品。

アンドレ・カイヤットとシャルル・スパークのオリジナル脚本。

 

薬学研究所の所長代理である

エルザ・ルンデンシュタイン(クロード・ノリエ)は、

所長であり彼女の情人であったヴォードレモンが

喉頭癌に苦しむのをみて毒殺したため、

安楽死の裁判にかけられることになった。

この法廷に出席を命ぜられた陪審員は七名であった・・・・・・・・・。

 

映画はこの七名をじっくり描いている。

七名それぞれの性格や、今置かれている社会的立場を描く事で

陪審員としての判断にどう影響していくのかを

一人ずつ丁寧に描いている。

結果として有罪4名、無罪3名で有罪が下される。

これが、裁判として正しかったのかとか

裁判劇の映画特有の劇的な展開は皆無である。

物語の展開は淡々と進み、派手な演出もハッタリもない。

この映画が問題提起する安楽死や、陪審員制度なども

決して答えを描いていない。

問題を提起して答えは観客に任せている。

元々は、法学博士や弁護士の資格を持つカイヤット監督。

そうは簡単に答えの出ない事は、彼自身の人生経験の結果だろう。

昔、脚本と編集を学んでいた頃、この映画が教材として

何度も出て来た。その時も、今回見た時も自分ならと

何度も問いかけたが、今も答えは出てこない。

この問題は、軽々しく答えを出す事は、人間にとって出来ないと思う。

見る度に、色んなことを考えさせられる映画である事は

間違いないと思う

アンドレ・カイヤット監督には

「洪水の前」   1954年

「愛の為に死す」 1970年

などの裁判に関する作品もある。

「眼には眼を」  1957年

「ラインの仮橋」 1960年

等の傑作もある。

どれももう一度見たい映画ばかりである。

彼もまたフランス映画界の巨匠の一人です。

 

昼前に出かけようとしたら、突然の豪雨。

30分ぐらいは家の中で待機していた。

夕方にも一度雷雨があった。

少しは涼しくなるかと思ったが、逆に蒸し暑さが増してしまった。