久し振りに「冷血」と「或る殺人」を見た。
両作ともモノクロで2時間を超える力作。
リチャード・ブルックスとオットー・プレミンジャーという
ハリウッドでは少々かた破りの監督さん。
二本で5時間近くかかったが、映画の面白さを堪能出来た。
☆ 「冷血」 1967年 134分 モノクロ
監督・脚本・リチャード・ブルックス 撮影・コンラッド・ホール
音楽・クインシー・ジョーンズ 原作・トルーマン・カポーティ
出演・スコット・ウィルソン、ロバート・ブレーク
1959年11月14日の深夜、
カンサス州の片田舎で一家4人が惨殺されるという事件が起こる。
誰が何の目的で、この残忍な事件を起こしたかも分らないまま
このまま迷宮入りかと思われた。
事件発生から一ヶ月半が経った時二人の男が逮捕された。
金庫に大金がうなっていると言う、いい加減な情報を頼りに
金目当てで強盗に入りたった40ドルを盗んだだけで、
家族4人を殺害した二人の男に、死刑の判決が下される。
1965年4月14日、この男二人に刑は執行された。
実際に起こったこの事件を、T・カポーテイは6年の歳月を費やし
「ノンフィクション・ノベル」として、見事な犯罪小説を書き上げた。
これをR・ブルックスが、超一級のスタッフで映画化した。
原作同様こちらも見事な作品になった。
一切の感情や思い入れを排し、
事件発生から逮捕、刑の執行に至るまで
ドキュメント・フィルムのように、モノクロの画面に描いている。
俳優もそう有名な人を使ってなく、
それがかえって生の迫力を生み、素晴らしい作品になっている。
ラストの処刑シーン、戦慄さえ覚える程の凄みのあるシーンだが
二人の青年の死という痛みの方が強く感じてしまうという
不思議な感動に包まれた。
この監督、出来、不出来の差が激しく
駄目な時は目も当てられない作品になる。
「冷血」は出来の良い方になった。
「冷血」「プロフェッシュナル」「エルマー・ガントリー」は◎
「ロード・ジム」「弾丸を噛め」「カラマーゾフの兄弟」は×
他にも「ミスター・グッドバーを探して」「渇いた太陽」
「暴力教室」等とたくさんある。
この「冷血」が一番良い。アカデミー作品賞にもノミネートされている。
(昔のブログより抜粋&編集)
映画を見る楽しさを、60歳を超えてから心ゆくまで楽しんでいる。
映画の見方も、味わい方も若い時とは変わって来たが
今が一番楽しく思える。
昔見て苦々しく思っていた作品が、70歳を超えた今になって
見返して見ると、心にズシンと響く時があったり
あんなに素晴らしいと思っていた映画が、つまらなく感じる事がある。
映画を見終わった時に感じるそんな思いを
今はゆっくりと楽しんでいる。
落語や音楽も同じ様に楽しんだり、悔しがったりしながら
映画と同じ様に面白がっている。
人生どんな時でも楽しみを見つけなければと思っている。
最後まで楽しめるかどうかは神のみぞ知ると思い
残された時間を味わい尽くしたいものです。