「第三の影武者」 1963年 104分 モノクロ
監督 ・ 井上梅次 脚本 ・ 星川清司
出演 ・ 市川雷蔵、天知茂、万里昌代、高千穂ひづる
南条範夫の原作を忠実に映画化。
監督・井上梅次、脚本・星川清司、主演の市川雷蔵にとっても
それぞれのキャリアでの最高の作品となった。
侍になりたいと考えていた男が、城主に似ていた事で影武者として
スカウトされる。小さな小屋に連れて行かれると自分に似た男が
二人いる。彼らも影武者で彼が第三番目という事になる。
厳しいトレーニングを積み、本物の城主そっくりになって行く。
戦があり、城主が右目を失う。影武者に右目があってはおかしいので
右目を潰せと命じられる。嫌がった一人は殺される。
残った二人の内、一人は次の戦で死んでしまう。
残ったのは市川雷蔵一人になる。
この戦で、城主は片腕に重傷を負ってしまい、影武者の雷蔵に頼んで
腕を切ってくれと頼む。城主が腕を失えば、自分も腕を切られると思い
遂に城主を殺して、自分が城主になろうとする。
自分が影武者である事を知っている男を殺して
文字通り自分が城主になろうとする。
ここから、近くの城のお姫様との縁談があり、その城の参謀である
天知茂との確執が生まれる。偽物である事を天知茂に見破られ
姫も彼に奪われる。所が妾の女性に影武者の子供が出来る。
跡継ぎが出来た事で城は俺のもだと言うが
お姫様にも子供が出来、こっちが本妻だと言う参謀に妾も殺される。
自棄になった影武者雷蔵は「俺は影武者だ」と叫ぶが、誰も信じない。
それから20年、発狂した影武者は座敷牢に閉じ込められている。
参謀の天知茂も戦に破れ、子供も共に殺される。
気の狂った老人になった影武者は、老衰で静かに死んで行く。
この壮絶なストーリーを、全編息詰まるハードボイルド・タッチで
描いてゆく。日本映画にありがちな変な甘さは一切ない。
アクション映画に定評のある井上監督だが
それまでの日活時代の裕次郎や、小林旭の映画の様な
女性を絡めた甘いムードの映画が多かったが
この映画だけは全く違って、クール・タッチで貫いて
見事な作品に仕上げている。
この映画に比べたら、黒澤監督の「影武者」もかすんでしまう。
「影武者」に関しては、池波正太郎さんのこの映画を真っ向から批判した事な評論や、橋本忍さんの脚本を批判した文章があるので
私如きがとやかく言えませんが、私もこの「影武者」が、
カンヌで賞をとったりするのが理解できなかった
それに比べたらこの「第三の影武者」は、凄いの一語に尽きる。
ごく普通のプログラム・ピクチャーの予算で、モノクロ。
誰も期待していなかったが、本当の傑作は誕生してしまった。
市川雷蔵さんと言えば、「薄桜記」や「ひとり狼」の時代劇。
現代劇では「炎上」や「ぼんち」が代表作であるが
隠れた名作が「第三の影武者」です。見て損はないでしょう。
多くの人に知ってもらいたい映画の一つです。
快晴の今日、いつもの日帰り温泉で、リラックス。
御嶽や白山まで見えて、景色も最高の温泉でした。