しばらく空いてしまいましたが、今回はBFGのサントラ解説です。
これで現時点で公開済みのスピルバーグ映画はラストです。
今作は児童文学を原作としたゴリゴリのファンタジーです。
孤児院で暮らすソフィーが巨人の国に連れていかれ、
やさしい巨人BFGと過ごすうちにBFGと意気投合し、
悪い巨人たちを懲らしめる話。
それにジョン・ウィリアムズが付けた音楽は、当然ながらゴリゴリのファンタジー。
技巧的なフルートのパッセージをフィーチャーしたファンタジック・スコアです。
ジョン・ウィリアムズのファンタジーと言えば
・ハリー・ポッター
・フック
・E.T.
あたりがパッと思い付き、というかそもそも
・スター・ウォーズ
もスペース・ファンタジーであるわけですが、
今作はそれらの雰囲気とはだいぶ違う音楽です。
なんだろう、うまく表現出来ないのですが、もっとファンタジーなんですよね。
オーケストレーションで押し切る感じと違って、もっと夢みたいな音楽。
うまく伝えられないのでとにかく聴いて下さい!
音楽構成
本作は一応ライトモチーフ音楽にはなっています。
緩めですが。
それなりに明確なライトモチーフは4つ。
ソフィーのテーマ
浮遊感のある3拍子のメイン・テーマです。
劇中中盤から流れますが、冒頭からしばらくは流れません。
BFGに心を開いてから流れ始めます。
BFGのテーマ
6/8拍子の短調のずっしりした曲。
少し間の抜けた感じです。
そもそもソフィーは最初BGFに誘拐されたわけですから、ちょっと得体のしれない怖い感じの曲調になっています。
マルノミのテーマ
BFGのテーマとあんまり変わんないんですよ。
BFGのテーマをもっとどすを利かせて間抜けにした感じ。
どっちも巨人ですからね。
悪夢のテーマ
ミュートを付けたトランペットで鋭く演奏される4拍子のテーマ。
これは耳に残るから分かり易いと思います。
その他に、
夢のパッセージ
これは明確なモチーフというより、フルートの技巧的なパッセージとして充てられています。
夢が空中を飛び回る様子をそのままフルートでなぞっている感じです。
ロイヤル・ミュージック
これも明確にこれが女王陛下の曲であるという明確さはないのですが、
威厳がありつつも親しみのある曲として表現されています。
なお、劇中には比較的明確にロイヤル・ファミリーを示すパッセージもありますが、
それはオリジナル曲ではなくトマス・アーン作曲のイギリスの愛国歌
「ルール・ブリタニア」です。
1969年にジョン・ウィリアムズが編曲を務めたミュージカル映画「チップス先生さようなら」でも「ロンドンはロンドン」で引用されています。
ただし、サントラに収録はされていません。
曲目解説
曲は時系列順っぽくは収録されていますが、実際はそうでもないです。
曲名は和訳が無いので適当に訳しておきます。
1.オーバーチュア
本編では流れません。
すなわち、映画の序曲というよりサントラの序曲です。
ハープとフルートによりファンタジーの世界観が示され、
ホルンによるソフィーのテーマが奏されます。
技巧的なフルートは飛び回る夢を表現しています。
本編ではしばらく地味目の曲しか流れないので、頭に序曲を入れるのは世界観の明示として完全に正解です。
2.魔女の時間
ピアノの不協和音から始まり、薄気味悪いロンドンの夜の孤児院と路地裏が描写されます。
曲の終盤で突然ソフィーの前に巨人が出現し、曲が緊迫します。
そのまま巨人はソフィーを孤児院から攫ってしまいました。
3.巨人の国へ
ソフィーを攫った巨人がロンドンの街を人に気付かれないように闊歩し、
そのまま軽やかな足取りで北の巨人の国へと駆けていく様子を描写した優雅なワルツです。
メロディラインはBFGのテーマになっています。
後半は急に攫われたソフィーの不安感を描写し、不気味な感じのBFGのテーマです。
4.夢の国
巨人はソフィーを夢の国へと連れてきました。
空いっぱいの星空と大きな木とその下に輝く大きな池。
景色に圧倒されるソフィーが描写され、ここで劇中初めてソフィーのテーマが流れます。
ここから改めてソフィーの物語が始まるという事です。
そして巨人は自らをBFGと名乗りました。
BFGとソフィーが池に飛び込むと、天地が反転し、そこらじゅうを「夢」が飛び回っています。
飛び回る夢はフルートの技巧的パッセージとして直接的に描写されます。
その次には夢を追いかけるBFGの様子をスケルツォ楽曲としてなぞっています。
技巧的なフルート協奏曲とも言えそうです。
ファンタジックで素晴らしい楽想です。
ところが突然鋭いミュートトランペットのパッセージが吹き鳴らされ、
悪夢の襲来が告げられます。
BFGが悪夢を捕まえ、穏やかな時が戻ります。
5.ソフィーの悪夢
緊迫した感じの前奏。
そのまま悪夢のテーマに入ります。
悪夢のテーマのフォーマル版といったところです。
6.信頼を築く
抒情的な感じのソフィーのテーマ。
そのまま穏やかな曲調でBFGとソフィーとの信頼関係を描写します。
途中のオーボエとファゴットの掛け合いも楽しいです。
7.マルノミ
でかくて乱雑で、どことなく間抜けなマルノミの挙動をコミカルなチューバのパッセージで描写しています。
マルノミのテーマかというと、そういうわけでは無いようです。
8.夢の瓶
フルート2本の掛け合いです。
曲調的には近代音楽的ではありますが、要するに夢の挙動をそのまま音でなぞった感じです。
後半はハープで夢の描写を強調し、最後にソフィーのテーマ。
9.無邪気な遊び
本作随一の冗談音楽です。
巨人たちがその辺の車、いや、ブーブーを鷲掴みにし、山の上から競走させます。
という様子を過剰に壮麗なフルオーケストラで奏でます。
天国と地獄序曲みたいなスペクタクル感です。
ただただ楽しい曲。
10.夢を吹き込む
ロンドンで眠る子供たちに幸せな夢を吹き込む二人の様子です。
ここもやはりフルート押し。
11.鼻を鳴らし、匂いを嗅ぐ
巨人たちが人間豆の存在に感付きBFGの家に乱入する様子です。
あまり知能は高くなさそうで、コミカルな曲が充てられています。
12.ソフィーの未来
映画の終盤、ソフィーの幸せな未来について夢想する優しいBFG。
穏やかで幸せそうなソフィーのテーマです。
13.男の子がいた
BFGの悲しい思い出。
悲しいクラリネットのパッセージです。
昔男の子がいましたが、悪い巨人に食べられてしまったのです。
その悲しい記憶をソフィーで上書きしようとする切ないBFG。
次に流れてくるピアノのパッセージは冒頭の魔女の時間でも流れていました。
最後はBFGのテーマで終わります。
14.女王様の夢
ソフィーとBFGは悪い巨人を懲らしめるため作戦を立てました。
イギリスの女王様にお願いし、一緒に懲らしめてもらうため、
まずは女王様に見せるための夢を調合する事にしました。
まず最初は悪い夢。
そこにあれやこれやを調合し、ソフィーの事も入れて、マルノミの事も入れて、
女王様が巨人を懲らしめようと考えるように仕向けました。
最後の方にはロイヤルミュージックが入ってます。
15.男の子の絵
夢のパッセージに導かれ、ソフィーが男の子が居た部屋と彼が描いた絵を発見しました。
ピアノのパッセージが絵の素朴さを描写します。
外ではマルノミがソフィーを探しています。
BFGは意を決し、マルノミ達に攻撃を開始し、ホルンで勇ましいパッセージが奏されます。
巨人たちが撃退されるとソフィーが女王様の肖像を発見し、ロイヤルミュージック。
最後にBFGと穏やかに話し、曲が終わります。
16.女王陛下と謁見
女王様と謁見するBFG。
そこへ駆け付ける近衛兵。
女王様は近衛兵たちを引っ込ませ、格調高いロイヤルミュージックとなります。
17.巨人を捕獲
ソフィー&BFG対巨人たち。
2人の武器は悪夢なので、悪夢のテーマ。
そこへイギリス空軍も飛来し、巨人たちを確保。
コミカルで尊大な曲が奏でられ、巨人たちは北の外れの孤島に放逐されます。
コダーイのハーリ・ヤーノシュみたいな尊大な音楽。
18.フィナーレ
ソフィーは王宮のやわらかなベッドの中で目覚めます。
そこへ女王様がおはようと迎えに来ます。
これ以上ない幸せ過ぎるフィナーレ。
穏やかこの上ないフィナーレの音楽です。
19.ソフィーとBFG
エンド・クレジットです。
夢のパッセージに導かれ、ソフィーのテーマから始まります。
今作のエンド・クレジットは単純なメドレーではなく、一つの長い楽曲として作りこまれています。
実に素晴らしい出来栄えです。
ソフィーのテーマの次はBFGのテーマ。
次にマルノミのテーマが一瞬顔を出します。
再度ハープに導かれてソフィーのテーマ。
次にフルートの技巧的パッセージ。
これは夢のパッセージです。
その次は格調高いロイヤルミュージック。
そして緊迫感ある前奏に導かれて悪夢のテーマ。
最後は再びソフィーのテーマに帰還。
穏やかで幸せそうに奏でられ、ハッピーエンドでエンド・クレジットを締めます。
以上です。
ジョン・ウィリアムズが作曲したスピルバーグ映画は全作解説しましたが、
TV番組だけ飛ばしていました。
次回記事は世にも不思議なアメージング・ストーリーです。


