どんどん行きます。
今回は2004年公開のスピルバーグとの20作目の映画、
トム・ハンクス主演のターミナルのサントラを解説します。
2004年は新卒で超絶ブラック企業に入社して過ごした暗黒の1年だったので、
これ映画館で観たのかどうなのかちょっと記憶にありません。
この作品は実在モデルが存在するにはするフィクションです。
トム・ハンクス扮するビクター・ナボルスキーがニューヨークに観光に来るのですが、
そこに来るまでのフライト中のタイミングで母国のクラコウジア(架空国家)でクーデターが発生し、
パスポートが無効となるんですね。
だから彼はアメリカに足を踏み入れる事も出来なければ、帰る事も出来ない。
空港でクーデター終了まで過ごさざるを得ない。
そんな彼の空港ターミナル内での人間ドラマです。
本作の音楽は、全体的におしゃれなオーケストラ作品といった感じです。
ライトモチーフ的なものは無く、場面場面にあった曲が付けられている感じです。
まずはテーマ曲があります。
「ビクター・ナボルスキーの物語」というタイトルになっており、
空港内での色んな事に流れます。
ビクターの行動に対して流れる事もあれば、
嫌な警備主任ディクソンの行動に対して流れる事もあります。
特に一貫性は見受けられません。
これはクラリネット・ソロの曲になっており、エミリー・バーンスタインがソロ演奏を担当しています。
彼女はその姓で連想されるレナード、エルマーの各氏とは特に血縁関係は無いようです。
残念ながら映画公開の翌年、2005年に46歳という若さでお亡くなりになっているようです。
次にヒロイン、アメリアとのディナーの曲があります。
これはパリのカフェを連想させる非常におしゃれな曲になっています。
わかる人にはわかると思いますが、ポケモンZAのミアレシティのテーマ的な感じです。
非常に魅力的な曲なのですが、残念ながら本編中で1回とエンド・クレジット でしか流れません。
最後に愛のテーマ。
これがジョン・ウィリアムズの他の作品の愛のテーマとは全く毛色が違います。
完全なるジャズです。
最初はピアノとウッド・ベースで提示されます。
全くもってジャズ。
やがてそのメロディがフル・オーケストラでもカバーされます。
ビクターの行動原理は愛。
まずは亡き父に対する愛。
彼の父はジャズを愛し、息子にジャズマンのサインを集めた缶を託しました。
最初はその缶に対してこのテーマが流れます。
そしてアメリアへの愛。
アメリアとのロマンスのシーンでもこのテーマが流れます。
ジョン・ウィリアムズ史上最もお洒落で洒脱な愛のテーマです。
曲目解説
曲順は全く時系列順ではありません。
1.ビクター・ナボルスキーの物語
本作のテーマ曲のコンサート・バージョン。
本編ではこのままは流れません。
先述した通りクラリネット・ソロで演奏されます。
2.アメリアとのディナー
ビクターの恋の相手、アメリアとのディナーのシーンです。
仲間たちが彼の為に手作りのレストランを拵えて、
外国から帰ってきたアメリアをそこへコミカルに誘導します。
途中グプタが唐突に渋い感じのジャグリングを披露するので、そこでちょっと渋くて大げさな感じのパッセージが入ってきます。
アメリアは恋人の事で思い悩んでいるので、曲もそういう感じになっていきます。
終盤は悩みが吹っ切れ、最初の楽しい感じのテーマに復帰します。
最後に愛のテーマが静かに奏されて曲はしっとりと終わります。
3.伝説は生まれる
グプタがビクターの行動を称えるシーンの曲。
ホルンのソロで行動を語り、次に彼を称えるパッセージ。
空港中の職員が彼を称えます。
次にテーマ曲が流れてきます。
4.ビクターと友人たち
映画の終盤、ビクターが友人たちに導かれて空港のドアの外に出ていくシーンの曲。
みんな早足なのでスピーディーなパッセージ。
最後にビクターが空港の外に出て冷たい空気を一息吸うと、
感動的に愛のテーマが流れます。
そしてアメリアともお別れ。
次にディクソンが慌てて駆けつけるシーンでテーマ曲。
5.泉の場面
ビクターがアメリアの為に空港の手洗い場に噴水を造ります。
何してんだ!
それを披露するシーンのファンタジックな曲。
御大お得意のチェレスタの音色も聴こえてきますね。
ビクターがアメリアを口説くシーンはずっと静かに音楽は添えられています。
最後に想いは届き包み込むように愛のテーマが奏されてシーンが終わります。
6.トーレスの結婚式
ビクターの友人、キャシアン、じゃなかった、エンリケ・クルズの頼みで入国係官の、ガモーラじゃなかった、ドロレス・トーレスに色んな事を訊きに行くシーンの曲です。
いや、自分で行けよ。
そして大小心者エンリケの想いが通じ、ドロレスは婚約指輪を受理。
いや、なんでだよ、直接話した事も無いだろ!
ワーグナーのローエングリン第3幕の婚礼の合唱を引用して大団円を迎えます。
この時ゾーイ・サルダナ演じるドロレスがバルカン・サリュート(いわゆる宇宙人挨拶)を披露してますが、
この5年後にJJがリブートしたスター・トレックでウフーラ役を演じ、まさかのバルカン・サリュートの本家スポックと恋仲となることになります。
7.ジャズメンのサイン
父から託されたジャズの缶にまつわる曲。
しっとりしたピアノとウッド・ベースによるジャズで愛のテーマが提示されます。
途中からオーケストラも入ってきて愛のテーマが展開されていきます。
8.脱出の拒絶
映画序盤、ディクソンが邪魔者ビクターに空港からの違法脱出を消しかけるのですが、
用心深いビクターはなかなか出て行きません。
ビクターの姿を追う防犯カメラとそれに気付くビクターによるスケルツォです。
最後にテーマ曲がディクソンに作戦失敗を告げてシーンが終わります。
9.クラコウジア国歌とホームシック
御大による架空国の架空国歌。
なんとも東欧っぽい感じの捏造国歌。
実は本編で最初に流れる音楽はこれだったりします。
しかしながら、国際ニュースでこんな堂々たる国歌を流すものなのかな?
しかもその国はクーデター中でその国歌の安寧も怪しいのに。
ですが、この曲が堂々と流れる事でビクターが祖国の状況に気づくという、
プロット上は極めて重要な楽曲となっております。
後半はニュース映像によるクラコウジアの様子。
10.職探し
ビクターの空港でのコミカルな様子を描写。
ちなみにこのシーンで吉野家マネージャーを演じていたジム・イシダは、
映画デビュー作がミッドウェイで、本作が映画はラスト。
ジョン・ウィリアムズに始まり、ジョン・ウィリアムズで締めた日系俳優だったようです。
一番有名な出演作はバック・トゥ・ザ・フューチャーPART2でマーティーに首を告げる上司ですね。
11.グプタの助け
映画終盤のグプタのまさかの行動。
クラコウジア行きの飛行機にデッキブラシを持って特攻して運航を妨害。
ビクターのニューヨーク行きを後押しするシーンです。
神秘的でファンタジックなスコアです。
後半はビクターがグプタの想いを受け止め、愛のテーマ。
12.コイン探しと英語の勉強
ここに来て映画序盤。
ピアノの軽快な調べに乗せて軽めのテーマ曲。
後半は小銭の稼ぎ方を知って、生き生きとしたテーマ曲。
13.ビクター・ナポルスキーの物語 (リプライズ)
映画のラスト、ビクターがニューヨークに向かうシーン。
雪降る中ファンタジックに愛のテーマ。
そして遂に父との約束を果たし、愛のテーマが大盛り上がりで、
そのままエンド・クレジットに突入します。
エンド・クレジットはもちろんテーマ曲のコンサートバージョンです。
14.ハッピー・ナボルスキー・エンディング!
エンド・クレジット後半。
まずはアメリアとのディナーの曲。
文字通りハッピーに奏されます。
最後は愛のテーマ。
フル・オーケストラ・バージョンで壮大に奏され、
その次にクラリネット・ソロ・バージョンで静かに終わります。
以上です。
次は宇宙戦争!


