今回は前作に続いて2002年公開のスピルバーグ監督作品、
キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャンのサントラを解説します。
さ
2002年は御大大忙しの年で、大作映画4作と五輪のテーマを手掛けています。
・マイノリティ・リポート
・キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン
・スター・ウォーズ エピソード2 クローンの攻撃
・ハリー・ポッターと秘密の部屋
・ソルトレイクシティ冬季五輪のテーマ
「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」オリジナル・サウンドトラック
本作はスピルバーグとのタッグ19作目の映画となりました。
主演はレオナルド・ディカプリオとトム・ハンクスのダブル主演。
実在の天才詐欺師、フランク・W・アグネイルを巡った逃走と逮捕の模様を描いています。
コメディでは無いですがシリアス過ぎず、大変観やすく面白い映画です。
この映画に対してジョン・ウィリアムズは原点回帰の音楽で臨みました。
ジョン・ウィリアムズの原点。
スター・ウォーズとかのシンフォニック系統ではなく・・・ジャズです。
ジョン・ウィリアムズは若い頃ジャズ・ピアニストでしたし、
彼の父親はジャズ・ドラマー。
彼はあの作風でいて、本来はジャズ出身なのです。
今までの作品でも
・スター・ウォーズ →酒場のバンド
・1941 →スウィング・スウィング・スウィング
などの単曲単位ではジャズ出身の手腕を示してきましたが、
全編ジャズを基調とした映画音楽は実に1975年のアイガー・サンクション依頼27年ぶりの作品となっております。
御大は気合十分で本作に臨んでおり、サントラ盤としても本作は屈指の名盤となっております。
私の主観ですが。
とにかく御大のサントラの入門編としてもおススメ盤です。
楽曲構成について
本作の音楽は3つのテーマをベースに構成されています。
そしてその3つのテーマはコンサート用の楽曲として再編されています。
アルト・サックスとオーケストラのための逃走曲~「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」
第1楽章:《包囲》
第2楽章:《揺れる心》
第3楽章:《歓喜の飛翔》
“アルト・サックスのための”と銘打っておりますが、
演奏会時には指揮者の横にアルト・サックス、ヴィブラフォン、ウッドベースの3人が配されます。
ジャズ・トリオ+オーケストラです。
意欲的な編成のシンフォニック・オーケストラ作品となっております。
既発売媒体としては、
・ジョン・ウィリアムズ&スティーブン・スピルバーグ アルティメット・コレクション
・John Williams Celebration [Blu-ray]
に収録されております。
さて、その楽章というか、テーマ解説に入ります。
まず第1楽章はテーマ曲です。
これは《包囲》とある通り、トム・ハンクス扮するFBI捜査官のカールがレオナルド・ディカプリオ扮するアグネイルを追い詰める時の曲です。
それと、タイトル曲でもあるのでオープニングのアニメーションでも流れます。
次に第2楽章。
これは父のテーマです。
アグネイルと父との関係はネガティブなもので、彼の父はあろうことか彼の詐欺行為を応援しています。
それに、そもそも彼が詐欺行為を働くきっかけになったのは父の事業の失敗です。
彼は父の為に良かれと思って詐欺行為を働いていますが、父の為の善性だろうと詐欺行為が善である筈がありません。
というわけで、本テーマは彼が追い詰められた時や、《揺れる心》とあるように苦悩している時に流れるネガティブな感じのテーマです。
最後に第3楽章。
これは《歓喜の飛翔》とあるように、ポジティブなテーマです。
アグネイルのいわばサクセス・ストーリーのテーマです。
詐欺が上手くいっている事をサクセスと呼称して良いのかは甚だ疑問ですが、
彼にとっては明らかにサクセスであり、彼が生き生きとしている時に流れる曲です。
楽曲解説
本作の特徴は、既存の曲がふんだんに挿入されている事です。
スピルバーグ映画には珍しく、既存曲がBGMとかではなく前面に押し出されており、
全てスピルバーグ本人が選曲したのだそうです。
そして、サントラにもしっかりとその既存曲が収録されており、
しかもそれが邪魔になっていません。
あるべくしてそこにある状態。
鑑賞していても、そのトラックを飛ばそうという気は起きないです。
それほど映画の雰囲気にもサントラの構成にもマッチしています。
名盤です。
楽曲順ですが、その既存曲も含め全く時系列順では無いです。
しかしながら非常に聴きやすく整理されていて、良いです。
本作については特に時系列を気にせず聴くのが良いと思います。
1.キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン
タイトル曲にしてオープニングのアニメーションの曲です。
先述の通り、ジャズテイストの佳曲となっています。
時折鳴らされる指のスナップ音も心地良いです。
2.ザ・フロート
ポジティブ・テーマです。
軽快な6/8拍子のリズムに乗せてアルト・サックスが気持ちよさそうに歌い上げます。
なんだかいつまでも聴いていたい感じの曲です。
3.カム・フライ・ウィズ・ミー/Frank Sinatra
ここで既存曲を挟みます。
これは1958年のヒット曲だそうで、なんかの旅系バラエティ番組でも流れてましたね。
2曲目の雰囲気をそのまま引き継いだような、心地の良い曲ですね。
フランク・シナトラといえばマイウェイが有名ですかね。
4.回想(父のテーマ)
3つ目のテーマ、ネガティブ・テーマです。
アルト・サックスが悲壮に満ちた感じで歌い上げます。
ウッドベースによるベースラインも心地良いです。
5.ジ・エアポート・シーン
この曲はどのテーマにも属しません。
サスペンス調の曲です。
空港から高飛びを企てるも、空港にはFBIが張っていました。
アグネイル、危機一髪。
しかしながらこの危機一髪の状況を3曲目のカム・フライ・ウィズ・ミーを高らかに鳴らして堂々と切り抜けます。
爽快。
全体的にこの映画、爽快なんですよね。
6.イパネマの娘/Stan Getz & João Gilberto
超有名なボサノヴァ曲ですね。
オリジナルはブラジルの作曲家アントニオ・カルロス・ジョビンの曲ですが、
有名なこのバージョンは彼がアメリカに売り込む際にスタン・ゲッツのサックスをフィーチャーしてセルフカバーしたバージョンです。
ちなみにそのスタン・ゲッツのバンド・メンバーにはジョン・ウィリアムズというピアニストが所属していましたが、ジョン・ウィリアムズ御大とは同姓同名の別人です。
そのジョン・ウィリアムズはジョン・ウィリアムズ・トリオとしてアルバムも出しておりますが、御大とは別人ですので惑わされないようにご注意ください。
なお、私は惑わされて記事中に間違ってそのアルバムを貼っていました。
後で気付いて直しましたけど。
7.コツを覚える
ポジティブ・テーマです。
彼が詐欺のコツを覚えて生き生きとしている様子を描写しています。
文字で書いたらろくでもないですが。
ろくでもないので、時々ネガティブ・テーマも挟まってます。
ろくでもないんですが、このシーンがこの映画の肝ではあるんですよね。
8.父と息子
スター・ウォーズみたいな曲名の曲です。
曲は無論父のテーマ。ネガティブ・テーマです。
ネガティブではあるんですが、ダース・ヴェイダーのテーマみたいな尊大なテーマよりはマシですね。マシなのか?
ピアノの伴奏に乗せてしっとり悲しげに歌い上げます。
サックスの演奏って歌ですよね。
9.エンサイブル・ユー/Judy Garland
シンフォニック・ジャズの巨頭、ジョージ・ガーシュウィン作曲のミュージカル・ナンバーです。
本作はシンフォニック・ジャズですから、その創始者たるガーシュウィンの曲を引用するのは至極当然の流れですね。
ジュディ・ガーランドは説明不要だと思いますが、オズの魔法使いの主演女優ですね。
10.コミック本の手がかり
カールが詐欺事件の犯人の手がかりを得たシーンです。
そういうシーンにはタイトル曲のメロディが付きます。
一方その頃のアグネイルはポジティブでした。
11.無賃乗車
無賃乗車って字面からは電車を思い浮かべますが、彼の場合は全然違います。
まさかの飛行機です。
この曲はどのテーマにも属しません。
12.ザ・クリスマス・ソング/Nat King Cole
終盤のシーンで流れる曲です。
1946年のヒット曲だそうです。
ナット・キング・コールといえばモナ・リサとかL-O-V-Eとかが有名でしょうか。
13.壊れた家族
文字を見て一目瞭然ですが、ネガティブ・テーマが流れます。
両親離婚のシーンですね。
この辺はスピルバーグのトラウマなんでしょうね。
フェイブルマンズでもじっくり描かれていました。
14.医者、弁護士、ルーテル
これはポジティブ・テーマ。
文字を見て、「ルーテルって何?」と思いますよね。
プロテスタントのルター派の事らしいです。
免罪符に大激怒してた人です。
15.ザ・ルック・オブ・ラブ/Dusty Springfield
世界初のボンド映画、1967年公開の「カジノ・ロワイヤル」のテーマ・ソングです。
スピルバーグがボンド映画を撮りたくてインディ・ジョーンズを製作したのは有名ですが、
引用するのそこ!?
なんせ007シリーズ第1作の「ドクター・ノオ」よりも5年前に公開されたコメディ映画です。
アグネイルがジェームズ・ボンド気取りになっているシーンで流れますが、
カジノ・ロワイヤルで良いの?
ゴールド・フィンガーとかじゃなくて?
まぁ、シーンにはすごく合っているので敢えて選んだんでしょうね。
16.キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン(リプライズ&エンド・クレジット)
ラスト・シーン、刑務所から連れ出されたアグネイルがFBIに入庁。
ここから本当のサクセスストーリーが始まります。
という事なので、当然ポジティブ・テーマ。
からのエンド・クレジットなので、タイトル曲につながります。
以上です。
名盤でした。
次作はターミナルです。
2連続トム・ハンクス。


