本日はジョン・ウィリアムズが5度目のオスカーを獲得した

シンドラーのリストのサントラ解説をします。

 

シンドラーのリスト

 

この作品はナチスによるユダヤ人のホロコーストを描いた非常に重たいテーマの作品であり、

スピルバーグ監督が念願のアカデミー最優秀作品賞・監督賞受賞を果たした1993年の作品です。

正直気軽に観ようという気にはなれず、執筆するのも非常に気が重い作品ですが、

間違いなく超名作ではありますので観たことのない方は1度腰を据えて鑑賞されることをお勧めします。

間違いなく人生で1度は鑑賞すべき作品です。

 

映画はエピローグを除く全編があえてモノクロで描かれ、臨場感を増しています。

その中で1人だけカラーで描かれる赤いコートの少女がいます。

名もなき少女なのですが、上記のジャケット写真の下から伸びている腕がその少女です。

この少女の描写がね、胸に突き刺さるんですよ。

 

 

そろそろ辛くなってきたので音楽の話に入りますね。

 

 

ジョン・ウィリアムズのユダヤ物というと屋根の上のバイオリン弾きがあります。

あの映画もヴァイオリンがフィーチャーされていましたが、今作もヴァイオリンです。

ユダヤといえばヴァイオリンなんですね。

今回は世界的ヴァイオリニストのイツァーク・パールマン

胸に突き刺さるヴァイオリン・ソロを聴かせてくれます。

 

オーケストラは満を持しての登板、ボストン交響楽団

当時ジョン・ウィリアムズが常任指揮者を務めていたボストン・ポップスの母体です。

なお、当時ボストン交響楽団の常任指揮者を務めていたのは小澤征爾です。

黙祷・・・。

 

 

さて、このサウンドトラックは主に2つの主題から構成されます。

・シンドラーのリストのテーマ

・追憶

いずれも胸に突き刺さるような悲痛さを持った曲です。

聴いていてとても辛くなる曲です。

しかし名曲です。

我々はこれを聴き続け、過去の教訓を未来へと伝え続けていかねばならないのだと思います。

 

このサントラはもはや楽曲として完成されており、映画音楽であるという事実を抜きにして名盤です。

アルバムとして素晴らしい。

それが具体的にどの場面に付いていたのかは、

このサントラについてはさほど重要なことではないと思います。

難しいこと考えないで聴いていいです。

 

 

とはいえ解説していきましょう。

そういうブログですから。

解説というより感想になるかも知れません。

 

なお、曲順は劇中のストーリー順にはなっておりません。

 

 

1.シンドラーのリストのテーマ

今作のメインテーマにして、ヴァイオリンの20世紀を代表する名曲です。

ホロコーストにより亡くなった600人余のユダヤ人に捧げる哀歌というか、鎮魂歌というか、

悲しく胸が押しつぶされそうなメロディが静かに感情たっぷりに奏でられます。

聴いていてとても辛い気持ちになります。

演奏するにも軽い気持ちではとてもとても演奏出来ない事でしょう。

昨年の御大の来日公演でもこの曲は演奏されました。

 

 

2.ユダヤ人街(1941年、クラクフのユダヤ人移住区にて)

イツァーク・パールマンのソロによりユダヤ人街の様子が描写されます。

ナチスの政策により強制移住させられ、苦しくつらい生活を強いられているユダヤ人。

つらい様子を描写しているかと思いきや、無理に明るく振る舞おうともがくような、

ユーモアのあるメロディが奏でられます。

つらい中でも人としての最低限の尊厳を守ろうとするユダヤ人の苦しみが

伝わってくるかのようです。

 

 

3.犠牲者たち

劇中最も観ていて辛いシーンの一つ、1万体余のユダヤ人犠牲者の遺体が

次々と穴の中に無雑作に放り込まれて焼却されていく陰惨なシーンです。

悲痛なコーラスが聴こえてきます。

救いがないです。

最後に聴こえてくるリコーダーによるメインテーマも悲しすぎます。

  

  

4.追憶

この映画のもう一つの主題、追憶です。

ユダヤ人たちにも当たり前ですが家族も大切な人も居たし、

大切な思い出も、思い出の品もあったわけです。

それらを無惨にナチスは取り上げ、命も尊厳も踏みにじったわけです。

その悲しみを美しいメロディで謳い上げています。

悲しい。

こんな悲しいメロディが他にあるでしょうか。

 

 

5.シンドラー伝説のはじまり

本作の主人公、オスカー・シンドラーはナチス所属の実業家です。

結果的にユダヤ人を大量に救う救世主となったわけですが、

元々は商売としてユダヤ人を雇い始めたに過ぎなかったわけです。

つまりはユダヤ人は賃金が安いわけですから。

ビジネスとしての行動を飄々とした木管の旋律が描いていきます。

映画的にもこの時点では彼が正義ともそうではないとも取れないわけで、

非常にフラットな感情の曲が続きます。

約9分と長い曲なのですが、特に盛り上がりが無いにも関わらず聴いていられるのは

曲としての完成度が高いからに相違ありません。

 

 

6.OYF'Nプリペェトショックと親衛隊の行動

前半は19世紀の作曲家Mark Warschafskyが作曲したOYF'N PRIPETSHOK

子供のコーラスで歌われます。

ペチカの前でヘブライ語を教える様子を描写した民謡だそうです。

物悲しい旋律の曲で、劇中では本記事冒頭で紹介した赤いコートの少女のシーンで流れています。

後半はヘブライ的なクラリネットの旋律の中で、

ナチス親衛隊による無慈悲な所業が繰り広げられます。

 

 

7.もっと救えたのに・・・・・・

映画のラスト、敗戦を迎えたナチスの党員であるシンドラーが逃避行に出ます。

観客も劇中のユダヤ人も彼が逃げなければならないような所業をしてきてなどいないことは知っています。

そんなつらい逃避行の前に、彼は自らの身の上ではなく、ユダヤの人々の事を想って涙します。

もっと救えたのに・・・・・・。

いや、十分ですよ。あなたは十分に助けました、オスカー。

メインテーマが悲しく切なく演奏される名場面です。

 

 

8.アウシュビッツ強制収容所

人類史上最大の愚行と呼ぶべき、悪名高きアウシュビッツ強制収容所に

列車で到着したユダヤ人たちの深い深い絶望をパールマンのヴァイオリン・ソロが描きます。

こんなに絶望的なメロディが他にあるでしょうか。

 

 

9.失われた思い出

追憶をリコーダーが奏でます。

画面にはユダヤ人たちの遺した金品、写真、その他思い出の品々。

それを無慈悲に選別する光景。

後半のギター・ソロによるメインテーマも悲しすぎる。

辛すぎるし無慈悲すぎる。

 

 

10.救出リストの作成

本作唯一の希望パート、救出リストの作成です。

ビジネスで行動していたシンドラーでしたが、気付きました。

あれ?オレがやってることって結果的にユダヤ人を救うことでは?

そこでビジネスを度外視してなるべく多くのユダヤ人を工場に雇い入れることにしました。

希望に満ちた旋律が奏でられます。

相棒のユダヤ人会計士、シュルテンが「これは善のリストです」と

シンドラーへの感謝の意を表明し、メインテーマへと移ります。

 

 

11.名前を告げて

シンドラーのリストに記載された人たちが安堵の気持ちで名前を告げ、

シンドラーの工場行きの列車に次々と乗っていきます。

本アルバムで唯一温かい気持ちで聴くことの出来る曲となっています。

メロディは追憶とメインテーマが使われています。

 

 

12.黄金のエルサレム

イスラエルの第2国歌とも呼ばれ、ナオミ・シェメルが1967年に作詞作曲した歌です。

映画のエピローグで男女コーラスにより歌われます。

 

 

13.追憶(パールマンのバイオリンによる)

本作の第2テーマ、追憶のヴァイオリン・ソロ・バージョンです。

胸に突き刺さるようなメロディなのですが、ここまで聴いてくるともう聴いていられます。

明らかに映画本編で流れている音源ではないという安心感もあるかも知れません。

シンプルに名曲です。

全曲映画本編で流れている曲だけだと胸が押しつぶされてしまいそうです。

この曲が入ってて良かった。

ありがとうジョン・ウィリアムズ。ありがとうイツァーク・パールマン。 

  

 

14.シンドラーのリストのテーマ(リプリーズ)

エンド・クレジットです。

メインテーマがピアノで演奏されます。

ヴァイオリン・ソロと比べるとマイルドですが、

本編で十分にお腹いっぱいになっているので余韻を反芻するには最適解です。

後半で弦楽器群も入ってきてちゃんと締めるのも最適解です。

 

 

 

記事は以上です。

御大のアカデミー作曲賞受賞作品も今のところは以上です。

インディ・ジョーンズと運命のダイヤルでの5回目の受賞を祈ります。

一旦細かい記事を挟むと思いますが、近々運命のダイヤルも記事にしますね。