本日はジョン・ウィリアムズ御大の

記念すべき初めてのアカデミー賞受賞作品

屋根の上のバイオリン弾きのサントラ解説をします。

 

屋根の上のバイオリン弾き

 

この作品は1971年のミュージカル映画で、

ジェリー・ボックが作曲し、

1964年からブロードウェイ・ミュージカルとして上演されている演目を

映画化したものです。

映画化に当たって当時新進気鋭のジョン・ウィリアムズが編曲を担当し、

アカデミー作曲賞の編曲賞を受賞しました。

御大初の受賞作品にして、唯一の編曲賞受賞作品となっております。

 

 

舞台はウクライナの架空の寒村アナテフカ

ユダヤ人のコミュニティの中で、主人公のテビエはユダヤの伝統を守り、

妻と5人の娘とで慎ましく暮らしていました。

伝統を守るテビエでしたが、時代は変わりゆくもの。

娘たちはロシア革命の空気感の元、

伝統とは異なる方法で結婚相手を見つけていきます。

厳格な父も時代の波には抗いきれず、時代の変化を受け入れていきます。

ところが時代の変化は残酷で、

遂にはロシアによってユダヤ人の村は解散されてしまう運命でした。

 

こんな社会的なドラマが繰り広げられるミュージカルとなっています。

また、タイトルの屋根の上のバイオリン弾きですが、

劇中に登場する文字通り屋根の上のバイオリン弾きを表すと同時に、

ユダヤ人の精神的象徴を表しているそうです。

劇中に登場する彼も登場人物と言うよりは、

精神的象徴として描かれていました。

 

映画版サントラの収録に当たって、

ジョン・ウィリアムズは世界的ヴァイオリニストの

アイザック・スターンを起用しています。

彼はユダヤ人で、出身は現在ウクライナ領にあたる街の出身。

この映画にはぴったりな人選ですね。

 

 

では、楽曲解説です。

ここでは手元にある14曲入りのサントラを元に解説していきます。

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このサントラ盤です。

 

 

1.序曲~伝統(しきたり)の歌~メイン・タイトル

アイザック・スターンによるヴァイオリン・ソロから始まる序曲。

すぐに主人公のテビエがユダヤの伝統について語り始めます。

オーケストラがユダヤ的な旋律を奏で、コーラスがユダヤの伝統を歌います。

曰く、ユダヤ人の家族は父の言う事を聞くもので、

娘たちはそうしていさえすれば幸せに暮らせるのだと。

主にそのような事を歌っています。

ジョン・ウィリアムズの編曲も見事で、聴き応え満点。

最後にアイザック・スターンの独奏を思う存分聴かせてくれて

曲は終わります。 

 

 

2.結婚仲介人(マッチ・メイカー)の歌

テビエの年頃の娘たち、長女のツァイテル、次女のホーデル、

三女のチャバが自分達の結婚について夢見心地で歌います。

マッチ・メイカーが素敵な王子様を紹介してくれるのだと考えています。

美しいワルツ調の3拍子の曲です。

 

 

3.もし金持だったら

テビエが自らの境遇を嘆き、金持だったらこうなのになぁ・・・

と、夢物語をユーモラスに歌います。

メリハリの利いた御大の編曲も素晴らしい。

私がもし金持だったら、とりあえずは未所持の御大のCDを全部買います。

金持だったら全部買いますのに・・・

 

 

4.安息日の祈り

ユダヤ人にとって大切な日、安息日の祈りを敬虔に歌います。

そんな中、長女のツァイテルには秘めたる想いがあるようです。

 

 

5.人生に乾杯

村の金持ち、妻を亡くした肉屋のラザールがテビエを家に呼び、

長女のツァイテルを後妻に欲しいと申し出ます。

いい酒を飲ませてもらい気分を良くしたテビエはその申し出を受け入れ、

2人で酒場に繰り出して陽気に人生の喜びについて歌います。

後半酒場にコサックが現れ、コサック的な音楽に変わります。

 

 

6.奇蹟の中の奇蹟

ツァイテルは父が持ってきた縁談を拒絶し、

自らが密かに想っていた仕立て屋のモーテルと結婚したいと申し出ます。

最初は怒っていたテビエですが、娘の気持ちを受け止め、

結婚を許諾します。

この歌はモーテルがその喜びを歌う、幸福そのものの歌です。

御大の編曲も明るくアップテンポで素晴らしいです。

 

 

7.テビエの夢

テビエの妻ゴールデは娘は金持ちの肉屋に嫁ぐべきだと考えています。

その妻を説得するためテビエが、

ツァイテルは夢の中で肉屋ではなく仕立て屋と結婚すべきだと

母に脅されたのだと語ります。

その夢を描いたのがこの曲で、亡霊が蠢くカオスな感じの曲となっています。

 

 

8.サンライズ・サンセット

ツァイテルとモーテルの結婚式の前、

テビエとゴールデが娘を想う心情をしっとりと歌い上げます。

陽が上がっても陽が沈んでも、それを幾度繰り返そうと、

親が子を想う気持ちは変わらないのだと。

心に染みる名曲です。

 

 

9.結婚式の踊り~ボトル・ダンス

結婚式の余興的な踊りです。

最初は普通に楽しく踊り出します。

その次に頭の上にボトルを載せた男達がしずしずと横並びで

ボトルを落とさないように静かに踊りだします。

独特な踊りに独特なクラリネット・ソロの音楽が演奏されます。

それが終わると再び激しい音楽となり、場を盛り上げます。

 

 

10.愛しているかい

次女のホーデルも自ら結婚話を持ってきました。

時代の流れであると観念するテビエ。

妻を説得するために愛の大切さについて妻に説きます。

まったく、何て良いお父さんなんだ。

大変美しいアリアです。

 

 

11.愛する我が家を離れて

ホーデルの結婚相手は革命を志す政治犯で、

逮捕されてシベリアに送られました。

ホーデルは彼を追い自らもシベリアへ旅立つと言います。

テビエは娘のことを慮りますが、

ホーデルは両親への愛と彼への愛を切なく歌います。

切なく悲しい歌です。

 

 

12.チャバ・シークエンス

三女のチャバは事もあろうにユダヤ人ではなく

ロシア人との結婚を申し出ました。

テビエはもう止めても無駄であると観念して歌います。

画面ではチャバが美しくファンタジックにバレエを舞います。

アイザック・スターンのヴァイオリン・ソロがその舞いを彩ります。

 

 

13.アナテフカ

ユダヤ人が先祖代々住んできたアナテフカを追い出されることになりました。

アナテフカの住人が故郷への惜別の想いを歌に込め、力強く歌います。

アイザック・スターンのソロも悲しい結末を奏でます。

 

 

14.フィナーレ

ユダヤ人が故郷を追い出されてもユダヤ人の精神までは無くなりやしません。

屋根の上でヴァイオリン弾きがテーマ曲を奏で、

映画のフィナーレを彩ります。

 

 

 

以上です。

次回はアカデミー作曲賞初受賞作品、ジョーズを解説しようかと思います。

さすがに気が引き締まりますね。