通算1ヶ月以上にも及んだ親会社への出張が終わった。出張の目的の一つはわたしのIT業務デビュー。日系ITソフト開発会社で働き始めたのは今から5年ほど前。でも、現地法人の運営管理がメインで、今まで我が社の本業である開発部の業務には一度も携わったことがない。
ありがたいことに出張期間中はベテラン社員たちから開発業務に関するレクチャーを受けたり、中心メンバーたちとの交友を深めたりした。それなのに、いや、それだからこそ思った。「やっぱりこの世界に飛び込むのはやめよう・・」
会社の屋台骨を背負う彼らにとって、仕事こそがまさに生き甲斐。それゆえ昼夜を問わずバリバリ働くことを厭わない。JW風に言えば、彼らはまるで”特別開拓者”。そんな彼らから「頼りにしている」と言われた時、人生における仕事の優先度が著しく低いわたしは、一瞬、戸惑いを覚えた。
親会社のスタッフのほとんどがパートや派遣社員であることは今回の出張で初めて知った。わたしがグループ会社の正社員で、しかも管理者だからなのか、最初は皆、滑稽なほどよそよそしかった。でも、「実はIT関連の仕事をするのはこれが初めてなんです。皆さんの方が先輩なんで色々教えてください」と正直に話すと、そのうちの何人かとは連絡先を交換したり、週末一緒に遊びに行ったりするほど仲良くなれた。
そんな彼らと話していてよく話題になるのが、会社に対する不平不満。会社からは「正社員にならないか」と何度も誘われているが、社員になると色々な責任を押し付けられたとき面倒なのでいつも断っているのだそう。まるでバプテスマを受けることをためらう”研究生”みたいだと思った。
仲良くなった一部の若手社員たちからは、老害上司やパワハラ上司、そして何よりワンマン経営者であるアラカン社長に対する不満を多く聞いた。それでも愛想笑いを浮かべながら日々”良き社員”を演じる彼らにJW時代の自分の姿が重なった。
オーナー企業だから仕方がないのかもしれないが、親会社で参加した定例会でも、開発チームのトップメンバーが集っているのに、皆、社長に気を遣いまくり。物分かりの良いふりをして、社長の単なる思いつきに振り回され、結局、何も決められない。挙げ句の果てにはわたしのようなド素人が頭をポリポリかきながら「でも社長のおっしゃってることってちょっと矛盾してません??」と声を上げなければならない始末。(ちなみにJW時代もよくこれをやって長老たちに嫌われたもんだ・・)
そんな組織の問題点を(いつもの如く)率直に本人にぶつけてみた。すると社長は「Blueさんは海外生活が長いからそう感じるんじゃない。日本の会社はどこもこんな感じだよ」という答えが返ってきた。これが本当だとしたら、日本の会社、終わってる。
ちなみに親会社ではわたしが社長の”愛人”だという噂が立っているそうだ。無能な老害女が現地法人の運営管理を任されているのも、出張メンバーに選ばれたのも、わたしと社長が深い関係だからだという。あまりに稚拙な思考に、思わず絶句してしまった。
皮肉なことに、結果として今回の出張は実に”有意義”だった。わたしなりに覚悟を決めて新しい世界に飛び込もうとしたが、そこには潜在的なリスクが存在することがよくわかった。それは他人のペースで、人の顔色を気にしながら働く状況に陥るかも知れないというリスクだ。最悪、面倒な社長対応を押し付けられるかも知れない。
わたしには、四半世紀もの間、JW組織で伝道活動に携わった黒歴史がある。家から家の奉仕は大嫌いだったが、「宇宙論争」という壮大なテーマを背負わされては「やりたくない」とは言えない。そのせいか、JW組織と似た体質を持つ日本の親会社には「ささやかな”嫌悪感”」を抱いてしまう。
幸い、我が社のアラカン社長はそんなわたしに驚くほど寛容で、「嫌なら無理にとは言いません。Blueさんは今まで通り現地法人の運営管理をしっかりお願いします。開発部の業務にはできる範囲で協力してください」と理解を示してくださった。さすがはわたしの“いとしいダーリン
”。
日本のメンバーからは「結局あのおばさん何しに来たの??」とディスられるだろうが、わたしの知ったことではない。わたしの人生はわたしのもの。自分にとって一番いいと思える選択をして何が悪い![]()
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