家族の肖像2 | 「私は区画整理地のまっただ中で笑うんだ♪」

「私は区画整理地のまっただ中で笑うんだ♪」

藤島住宅 岩原 賢太郎 の 営業日記

2月23日水曜日。天皇誕生日。

藤島住宅の定休日であり、祝日でもある日。

一般的に不動産営業会社は、定休日が祝日なら前後を「代休」にして「営業日」とする場合が多い。

しかし、藤島住宅営業部は数年前から今のようなシフトとなっている。

これが思いの外、ありがたい。

以前の私なら、どこへ行こうにも人出いっぱいの土日祝日に出掛けることなど苦痛でしかない、土日祝日こそお客さんが来てくれるチャンスだと、完全平日休みを謳歌していたところである。

しかし現在は、事情が違う。

息子が小学生になった。

習い事が重なるとなれば、夕方まで家に帰ってこない。

まあいい、それはいい。

静かに怠惰に過ごす休日は、私の元来の生態系そのもので心地が悪いこともない。

 

ある平日の休日、普段より遅く起床した私は、ふと寝室の壁に飾られた写真群に目を向ける。

家族で出かけた際のポートレート写真が、息子が二歳くらいの頃のものから、歴々と並んでいる。

アミューズメントパーク等の入口付近で、半ば強制的な感じで撮られ、帰りの際に出来上がりを見て、買う買わないを判断するあれである。

なんとなく、毎回買っていたものだが、溜まってくると、スマホ写真とは違う特別感が出てきていた。

そういえば、次男が生まれて以来、この写真撮ってないなあ。

 

東武動物公園へ行ってきました。

 

朝イチに行こうと思って早起きしました。

朝イチって一番人出が集中しやすい時間だってこと、日祝休素人の私は懸念することもなく、久しぶりの家族サービスを成功させるべく勇んで、施設の駐車場入口渋滞に巻き込まれていたのでありました。

しかも、右折入園のコースを踏んでしまったため、前方の左折車や左手の直進車に阻まれて、園へのアプローチロードへなかなか入れない。

数十分かけて、ようやく駐車場に入れたものの、次は入園券購入の列。

長蛇というほどではないにしろ、日祝休素人は苛立ちを隠せない。

入口ゲートを見ると、チケットを買わずにスムーズに入園する人がある。

同園のHPで見た「お得な前売りチケット」の文字が恨めしく頭の中に浮かぶ。

あのとき、この状況を想定すべきだったのでしょう。

チケット売り場に並んでいる間、ごねる次男に付き添って妻離脱。

長男はさっきから、居たり、居なかったり。

別にいいけど、列のコースを作っているロープをぶらぶらさせて遊ぶのはやめてくれ。

 

早くも「懲り懲り」の様相を見せ始める平日怠惰組の父は、ようやく入口ゲートを通過し、目的の写真撮影現場にたどり着くのでありました。

写真撮影はあまり「人気」がないようで、私達の前に一組の家族が撮影しているだけでした。

私達の番になり、私はみんなにマスクを外すように指示する。

みんなできちんとカメラに映るように体を寄せ合う。

すると、カメラマンの方が「もう少し皆さん寄って下さい」と言いつつ、あっさり、「パシャ」「パシャ」と二発のシャッター音を響かせて、撮影が終わる。

 

こうして、予期せぬ苦労の後、拍子抜けで大人のメインが終了したのでありました。

写真撮影をした証である「黄色いカード」を二枚受け取りながら私は、さっさと次男が好きな「カバ」を見せて、テキトーにゾウとか見せて帰ろうと目論見始める。

 

当日は、風もあってかなり寒い気候でした。

子どもたちは「風の子」と呼ぶにふさわしく、元気にはしゃぎながら、動物を楽しんでおりましたが、野外での食事の際、寒さが身にしみてきた様子の長男が、本日の2番めのイベントである「お寿司屋さん」に早く行きたいと言い出し、私達は正味3時間ほどで、東武動物公園を後にすることとなりました。

 

帰りの際、うっかり忘れるところでしたが、ゲート近くの係員に「黄色いカード」をお持ちの方はこちらへ、と声をかけられて、先程撮影した写真を確認できました。

「あっさり」撮っていた写真でしたが、家族4人の良い表情を瞬間的に捉えていて、「流石プロだな」と感嘆しつつ、写真を見せてくれた係の方に、「プロなのですか?」と尋ねたところ、「いいえ、ただのベテランです」と答えてくれました。

 

その係の方は、学生さんともとれる若い女性でしたが、もう7年も務めているとのことでした。

7年が長いのか短いのか私には分かりませんでしたが、本人が「もう」と副詞を添えていたので、長いのだなと思い、「すごいですね」などと曖昧な相槌を打ってその場をやり過ごしました。

 

このあとの「お寿司屋さん」は、私にとってはまた「苦行」で、なぜなら酒が呑めない。

マンボウで。

寿司が大好きで、酒が大好きな私にとって、酒なしの寿司は勿体無すぎて有り得ない。

前回、入店直前に拒んだ私に妻が「自分のことしか考えてない」と非難を浴びせたことがありました。

世間的には「そのとおり」と反省したいところですが、いくら子どもたちが喜んだところで、私がその間中、「帰りたい」「早く酒呑みたい」などという思いで過ごすことを避けたいと考えることは、本当にわがままなのだろうか。

 

わがままなので、その日、マンボーのさなか、「お寿司屋さん」に行くことになりました。

 

前述の通り、寿司は大好きなので、お腹一杯食べて、帰宅後の酒はあまり旨くなかった。

でも、疲れて寝入った子どもたちの寝顔を見ながら呑む酒は、いつもと少し違ったふわふわとした酔いを私にもたらし、悪い気分ではなかった。

でもやはり、もう二度と、酒なしのお寿司屋さんには行きたくないと思う私なのでした。

おしまい

 

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