その朝、私はすっかり油断していた。
国道17号の交差点
赤信号で車を停めた。
!
(あっ!)
9月である。
子供達の夏休みは終わっていたのだった!
私の車は先頭車両から2番目の位置
体を傾けて交差点の様子を伺うが
よく見えない!
心の準備が出来ていない!
(ああ、今日はいなくていい)
【煩わしい】とさえ、思っていた。
信号が青に変わり
先頭車両が前に出る
私の車も交差点に進入する。
いた!
すぐそこに、
高野先生!
交差点を渡る
今朝もオリンピック・ニトリの前は
搬入待機車両で一杯だ・・
いや、
空いている!
後続車両の【あおり】もない
私はハザードを焚き、車を停めた
後部トランクを開け放ち
【荷物搬入中】を装った
およそ100mの距離を走って
交差点へ戻った・・
!
いない!
高野先生がいない!
さっきは確かにいたのに!
さっきまで高野先生がいた場所で
年配の男性が子供達を誘導していた
「今、交代しました?」
「は?!」
唐突な
見知らぬ私の質問に男性は訳が分からない
私はきちんと事情を話した
男性は言った、
「ああ、校長先生ね!時間だから学校へ戻ったよ」
(校長先生・・)
私の中で何かが弾けた。
(高野先生はあの頃何歳だったのだろう)
(24年の時を経ても、一発で高野先生だと気付けたあの頃とさして変わらない先生は今何歳で、何故交通誘導をしているのだろう)
(もしや、現役を引退して物足りない毎日を過ごしているのではなかろうか)
(そんな折、私がもう一度声を掛けたら、喜んでくれるだろうか)
(私の事をまさか覚えているだろうか)
様々な想いを残したまま
私は交差点を後にした
トランクを開け放ち、
ハザードを焚いた私の車が
妙な所に停まっていた。と
後で何人かの同僚が話をしていた。
【国道17号交差点物語】は
多分、これで終わったのだ。
藤島住宅 営業部 岩原 賢太郎