新シリーズ、側弯症をはじめ、すべての脊柱の歪みと向き合う身整式2023 

その三、身整式の「赤ちゃんの運動学」から「側弯症は治る」のエクササイズを見ていく(今回の主題)

 

 

今回は、前号に続き、「身整式が考える赤ちゃんの運動学」を掘り下げるのですが、最もインナーマッスルから訓練すべきである側弯症の方々のために特化してみていきます。

まず側弯症の方々が一度は目にされたであろう一冊、「側弯症は治る」に焦点を当て、身整式が考える「赤ちゃんの運動学」から見て、「側弯症は治る」という本にある著者大塚氏考案の「側弯エクササイズ」を考察してみます。

「身整式・側弯症分類」のバックナンバーにも、この本は登場しています。

その時にも述べた私の個人的な感想ですが、

大塚氏と側弯症の悩みを抱えられたご家族の出会いというのは、神様のいたずらではないか、と思われるくらい衝撃的であり、不思議なご縁としか言いようのない出来事です。この場面を、ことあるごとに「何回も読んでしまう」という私の思いは今も変わらないのです。人智を超えた「ご縁」に触れるたびに私の胸は熱くならざるを得ません。

 

繰り返しの説明になりますが、

側弯症という骨格の歪み方は、腰痛むち打ち症などで背骨に現れるゆがみよりも難解な要素を持った歪み方であると言えます。

つまり、側弯症とは、脊柱を支持するインナーマッスルそのものの容量が圧倒的に少ないがゆえに起こる背骨の現象であるからです。

ここは考察の慎重さを期さなければならないところであり、側弯症が治るということは一部にはあるが、すべてではないということもお断りしておかなければなりません。

しかし段階的な改善の余地はあると考えるのが身整式の見方です。

少し長い目で段階的に考えなければならない特徴があるといわざるを得ません。

ゆえに単純に、短期的に、狭義的に「治る・治らない」と安易に考えることは控えなければなりません。

これは医療側本人ご家族もそのように考えることが必要です。

なぜなら、本来多くの人には備わっているはずの基礎的な背骨を支持するインナーマッスルが極めて少ないということに注目しなければならないからです。これが思春期という成長期において生じるのであり、この成長過程という状況を考慮したとき、インナーマッスルの成長がほかの組織よりも遅いということがここで理解できます。

体の仕組みを、筋肉に注目してきた身整式は、側弯症を特発性として原因が不明なものとは見ていません。明らかに背骨とこれを支持する抗重力筋であるインナーマッスルの成長が遅れているのではないかと見ています。

しかし真の問題はここからで、このインナーマッスルの成長を促すための訓練する方法が、今日の医学や運動学、トレーニング方法に於いて全く手つかずのものであるという認識を持たなければならないことです。

 ここで大塚氏の遭遇した側弯症が治ったときの出来事ということが、身整式では気になってくるのです。彼が正規の医療の立場でなかったこともあって、彼の遭遇した出来事を本質的な視点で今日の医学はまだとらえていないのです。

 

大塚氏が「側弯症が治る」という衝撃的な題名をされたことには、我々が考える以上に深い意味があります。側弯症の方々を大きく勇気づけたい。ゆえに正規の医療従事者の立場からは言えないことを、代替医療という立場から言った、氏の一途な思い以外にない言葉と言えます。

 

これは元東大病院救急医療の責任者であられた矢作直樹氏の書かれた「人は死なない」という本の題名に込められた意味に極めて近いと言えます。

確かに肉体は、その生涯で死を迎えなければなりませんが、私たちの心の本質である魂は永遠に生き続けます。

 

私の個人的な考え方ですが、側弯症の方がほかの方よりも大きなハンデキャップをもってここに生まれてこられた以上、この生涯で霊性において大きく成長しなければならないのだ、と思います。

このように考える理由は大塚氏が居合道の武道修錬者であられたということに関連しています。私も一応は合気道修練者なので、日本の武道修練において霊性を磨かなければ修練できないという要素が必ずかかわってくるために、このように考えてしまうわけなのです。

自分たちの本質は死を迎える体ではなく、永遠に生きる魂としての霊性主体の存在という認識を修練することが日本の武道修練の根本にあるようなのです。すべての武道修練者がこのような認識のもとの修練されているわけではありませんが、スポーツ化していない純粋な修練方法に徹する合気道ではこの要素が大きいと言えます。合気道ではこれを「霊主体従」といいます。体は私たちの真実である霊性を思い出すための手段としてあります。この霊性の中に真実の幸福があり、真実の愛がある。これをはっきりと今ここで知るために霊性が私たちの思いの中にあるのです。霊性は体験する以外にないものであり、全く言葉で説明のできないものと言えます。

これをブルースリー氏は「考えるな、感じるんだ」と言いました。

 

話を戻しまして・・・、側弯症は脊柱を支持するインナーマッスルそのものの容量が極めて少ない状態であるがゆえに起こるわけなのですが・・・、

レントゲン検査のみの骨格中心の観察だけでは、この実態は見抜けないと思います。

やはり筋機能から調整を加え、その変化から表れる様々な筋機能の側面を見たうえでないとここに気づきません。それも直立二足歩行を可能にした抗重力・重心制御作用という視点から見た筋機能のことにほかなりません。

 

たとえば、腰痛むち打ち症の場合、インナーマッスル(抗重力筋)の容量がそれなりにあるわけです。ゆえに、インナーマッスルの活動を抑制している表層筋のアンバランスを改善すれば問題は消えていきます。

しかし、このような腰痛などによる機能性側弯という状態も、これを繰り返していると回旋変位を伴ってくるのです。つまり腰痛ということの繰り返しによってある程度あったはずのインナーマッスルが圧迫され、膨張できなくなり、委縮し、しまいにはその容量を減らし始めるのです。こうなると明らかに回旋変位を伴った脊柱の変形に移行してきます。

 

実際の症例

 

 

急性腰痛で動けなくなり数日入院後、当院へ来た女性、紹介によっておいでになりました。

入院に至る前にも様々な医療を受けてきたのですが、悪化するので心配になり、噂を聞いて当院にご縁があった方。機能性のゆがみとはいえ側弯症のように脊柱が崩れていることに注意。まだ回旋変位はありません。でも放っておくと進行していく、という方を実際に私たちは見てきています。

 

繰り返しになりますが、つい見落としてしまう問題とは?

正規の医学では今、このように腰痛やむち打ち症などと、側弯症における脊柱を支持するインナーマッスルの機能性からの関係性について全く気付いていません。

気づくことができない理由の一つとして筋肉は収縮する(反対側は弛緩)ことが基本的な機能で、下図↓

抗重力作用という筋が膨張する力(血流圧による膨張抗重力作用)の存在に目が向かなかったことにあります。下図の矢印が血流圧膨張力

  

 

この抗重力作用という筋が膨張することによって表れる力にこそ、体を直立にさせる働きがあることを証明するのです。

 

 

このように現代医学では抗重力・重心制御作用筋機能から見ることがないので、腰痛やむち打ち症などの痛みのケアにおいても、筋機能から全体性におけるバランスによって骨格や関節のゆがみは修正されなければならない、ということにも全く目が向いていません。

その全体性の上に整っていないと、それらの症状は慢性化して、いつまでも痛みや違和感が後遺症として残るのであり、これが長く続くと側弯症のように脊柱そのものが変形していく場合があるのです。進行すれば椎骨の回旋変位をも呈してきます。

 

現代の医学は分析を専門に進化した科学なので、この全体性を見ることにまだ慣れていません。(100年後、200年後は統合性を見ることが主流になる) 前回、ボイタという人の研究は現代の科学常識からしたら的外れに見えるということにこれは関係してきます。

私たちはまだかなり低いレベルでの認識力しか持っておらず、その限定された思考力のために私たちの本質である霊性すらも感じることができなくなってきているということを、ここで再認識する必要があるのです。

70歳を超えると加齢性の側弯症が多くの人に見られるのもこういうことが関係してきます。若い時から腰痛を繰り返している方で側弯症ではなかった人にも正しく筋機能から修正されなければ、不適切な骨格の変形は進行していきます。こういったとき抗重力重心制御作用の筋機能について見方のない正規の医学では、これといった方法がないのです。

正規医療に受診された方々は次の言葉を聞いているはずです。

「適度な運動をして予防しなさい、運動不足がいけないのですから」

これで本当に医学は運動指導について充分と考えています。それがあまりにも未知のことなので、これで本当に充分な指示をしていると考えてしまいます。

これはやむを得ないことなのです。確かに医学の進歩はすごい勢いで進んでいますが、それでも、人間は知らないことの方が多すぎます。科学で割り出せた自然界の現象は本当に限られています。人の体においても関心が向くとことと、関心を向けることすらできないでいる未知のことがあるのは仕方がないでしょう。

しかし、真実の心のレベルで私たちの本質を見たとき、そこにはすべてが与えられています。が、ここに目を向けるには、まず自分たちの心が限定されたままで開かれないためにその本質を知ることができずにいるのだと知ることから始まります。真の心のレベルでは確かにすべてが与えられていますが、心が体の感覚に限定されているままでは、そこに目が向きません。それでも現代の精神世界は、難行苦行せずとも、それぞれに応じ、道は開かれ、その道筋を示し始めています。インターネット環境はこのスピードを著しく早くするために必須のツールだったようです。

話を戻しまして、適度な運動とは何か、もちろん歩くことは重要、ここだけは共通認識ですが、それぞれの体の歪みの特徴に合わせてとなると、どうしていいか本当のところはわからない。人によってはヨーガがよかったピラティスがよかったといって、うまくいく方もいますが、当てはまらない方も出てきます。

ここをきちんと見るのが抗重力・重心制御作用の筋機能という視点です。

側弯症の方のインナーマッスルに効果があることは、ほかの方の加齢現象においても効果があるのであり、著しく慢性化し始めている場合でも適応されます。

つまり慢性化し、さらに側弯症のように脊柱の椎骨の回旋変位を伴った体の後遺症となると、身整式のインナーマッスルエクササイズと側弯エクササイズがそのまま適応され、高齢の方の場合、体の機能的な若返り現象が奇跡のように一部の人に起こります。(これが私が50代にしてゴルフの飛距離が伸び、長嶋になってしまう理由)

 

体の機能的な若返り現象の実症例

慢性的な腰痛で回旋変位まで出ている60代女性

姿勢が戻ることと比例して腰痛がよくなっていく

   

調整前     調整後     身整式体操後 1っか月後

 

自律神経系の悩み、自律神経を支える脊柱、深部起立筋の複雑な歪みと弱体化が伺える

調整前       調整後 (調整と自宅で身整式インナーマッスルトレーニングをその人のインナーマッスルの体力に応じて無理なく続けることで快方へ向かう)

 

 

このような様々な症例による脊柱の変化を多く見てきた身整式にとって側弯症が最終段階の課題のように感じてきました。

筋機能の土台が、このようにインナーマッスルにあるからです。

 

さらにくり返しの説明になりますが、インナーマッスルを訓練するのは従来の筋力トレーニングと同じ発想ではだめです。

繰り返しの説明になり恐縮ですが、

インナーマッスルは従来のように収縮と弛緩という筋肉の捉え方ではなく膨張することによって抗重力性機能が表れるという特徴に注意を向けなければなりません。

ゆえに関節の曲げ伸ばしに負荷をかけるという従来の筋トレの発想では体幹インナーマッスルの訓練にならないのです。

 

ここで前号のブログで紹介させていただいた「インナーマッスルの訓練は赤ちゃんに聞く」ということになります。

赤ちゃんは仰向け光や音の感じる方に顔を向けて動かし、手足を仰向けで寝ているとき頻繁に動かしています。

つまり「赤ちゃんが仰向け寝で手足や首を動かしている」ということがインナーマッスル成長を促すのための運動に関係するヒントであると仮説を立てたわけです。

そうすると「側弯症は治る」の著者大塚氏の側弯エクササイズで紹介されているものに、仰向けで足を動かすトレーニングがあることにまず目が向くはずです。

 

では本題ですがこの本で「仰臥のエクササイズ」があることに注目します。

身整式の「赤ちゃんの運動学」は、赤ちゃんが仰向けで手足を動かしてインナーマッスルに働きかけるていることをヒントに考えられています。

 

「側弯症は治る」の仰臥エクササイズ

 

 

 

 

シュロス法のカタリーナ・シュロスも、はじめに、仰臥で、呼吸法(回旋呼吸)をすることから背中の変化に気づいたことにも注視します。すると赤ちゃんの運動学は仰臥が基本になるのです。

また、呼吸形成外科(回旋呼吸)の欠点はほとんどの人が凹側よりも凸側を膨らませてしまうことがあるということです。仰臥なら床がこれを防いでくれるのです。

 

これらを実際に、私たちゴガミ兄弟でやってみて、体幹の内側のインナーマッスルが膨張して、その結果、表層筋の緊張が緩んでくるか、脊柱の姿勢に変化がどう現れるか、調べていったという話は、側弯症・身整式分類のシリーズでも紹介させていただきましたが、これらは一つ一つ調べていったのです。

これらのエクササイズ法でよいと思ったことは、どんどん当院のお客さん方にも勧め、と言ってもそれぞれの体力に合わせてお勧めします。その成果を見ていきました。うちのお客さん方はこういう新しい体操を喜んでやってくれるのです。今までにもいい成果が上がっているので、皆さん若返ってきれいでいたいらしく、女性の方ほど熱心な方が多いので助かります。(私はおじさんなので昔飛ばせなかったものを、今飛ばしたいミスター長嶋の気分で・・・)体を通して学ぶものは人それぞれです。

 

当院の実際の症例写真

左写真~調整前

中写真~手から体幹につながる、体幹の表層筋、僧帽筋や三角筋、上腕二頭筋の調整、

足から体幹につながる大腿直筋、ハムストリング筋の調整で骨盤の高さを揃える調整後。

 

右写真~それから大腰筋、多裂筋、腰方形、筋腹横筋、肋骨挙筋、斜角筋など脊柱、肋骨、骨盤の形を維持する土台としてのインナーマッスルの訓練をする。

 

↓左写真調整前      ↓中写真調整後     ↓右写真インナーM訓練後

40代女性

 

70代女性

 

このように体表上からとはいえ写真で変化を確認していきます。

 

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