側弯症・身整式分類2022 その2 (7月)

 

体幹軸重心制御作用におけるインナーマッスルの基本的な見方について説明していきます。

 

まずインナーマッスルの主要な機能について身整式の視点から説明しましょう。

身整式ではヒトの直立二足歩行する身体を「抗重力―重心制御作用」という見方から、

1、体幹において、「体幹軸・重心制御作用」

2、手足の筋群には「四肢交差性・重心制御作用」

という抗重力重心制御作用の二つの反応系が主として筋群には存在することを確認しています。

 

とくにヒトが直立に立つために重要な「抗重力作用」は、筋肉が血液をたくさん含むことによってその主たる力が現れると言えます。

つまり水圧(毛細血管の血流圧)を利用して、抗重力作用を創出していると言えるのです。

この作用は毛細血管を多く含む筋肉ほど顕著に現れます。

(このヒントは男性の生殖器である陰茎が充血することで立つということで確信に至る、笑わないでね、でもこんなヒントが切っ掛けで確信に至ることが多いのです)

インナーマッスルが毛細血管を最も多く含む理由は、この水圧を応用し、抗重力作用を創出するためです。

この力が背骨を立たせる力となり姿勢維持に重要な役割を果たしているのです。

インナーに限らず、骨格筋のすべてに毛細血管は張り巡らされているので、すべての筋肉に抗重力作用が実在するわけですが、脊柱に密接する深部起立筋群(腹横筋や肋間筋も)抗重力作用専門の筋であり、可動域を持つ強力な軸としての脊柱形成に重要な筋組織と言えます。

一方で表層の起立筋である腸肋筋や最長筋は側屈や体幹の回旋、前屈、伸展などのときに主動的に働くと言えます。

表層筋というのは、動作時に効果的に作用すべきで、静止時においては活動的ではありません。が、深部の姿勢維持筋は静姿位のときを含め四六時中、長時間活動し姿勢維持できる酸素効率の良い筋組織でなければなりません。ゆえに毛細血管が密で血液がそこに充満しているのです。

脊柱の「軸を軸として」維持するのは深部起立筋群であることを、ここでは確認しておきます。

このように身整式では、ひと口に起立筋群と言っても、表層と深層では、その特徴に違いがあることを認めています。

ゆえに側弯症の方の凹側を膨らませるべき、即ちマッスルシリンダーを誘導すべき筋組織は、深部起立筋であるこということを理解します。

 

身整式のカーブの捉え方図(4カーブの場合)

過去の側弯症・身整式分類でも説明させて頂いたことですが、深部起立筋の機能が追い付かず、表層の起立筋である右腸肋筋の過剰な緊張を示したときに、胸椎が右に回旋する第二カーブが現れ、一方で左の最長筋が過剰に緊張したとき腰椎が左に回旋する第三カーブが現れてしまうのです。

 

第三カーブの発生

 

第二カーブの発生

 

 

3カーブ

(第一カーブから第三カーブまでの起立筋群の緊張の捉え方は上の4カーブと基本同じ)

 

いわゆる左胸椎カーブの身整式の捉え方

 

 

右腸肋筋と左最長筋が過剰になりやすい理由として、胸郭は左が重いということが上げられます。心臓が左に位置し、肺葉が右が三葉、左が二葉という容量の違いによって左が重くなることがその理由です。

ゆえにヒトの身体は左回りに走ることを得意としています。

陸上競技場は左回りに出来ているのです。

 

さて、起立筋群に限らず、体幹深部筋は脊柱の軸を形成する上で重要な役割があります。

例えば、肋間筋や腹横筋、腰方形筋は、脊柱の生理的な前弯と後弯を形成するうえで重要な筋と言えます。この三つの筋は体幹の筋組織の壁を作るのですが、これらが表層の体幹筋の機能性を高くするうえで重要です。

スポーツ選手の体幹筋の優れている姿は、表層である大胸筋や腹直筋、腹斜筋、背側では僧帽筋や広背筋にばかり目が向きますが、これらが大きく強く働くためにはその土台である深層筋が充実していなければなりません。

 

競技中のプレッシャーで、肩で息をしている選手は、その重圧のために十分な酸素が深部筋まで届いていない、と言えます。プレッシャーは脳で「不安」として認識されるので不安要素が脳の中でぐるぐる廻り、この思いが脳の酸素を著しく消費させ、然るべき筋への酸素供給を蝕んでいるとき肩で息をするのです。

 

酸素効率の良い深部体幹筋を日頃鍛えておくことは、プレッシャー対策の一つと言えるかもしれません。野球でも活躍できる投手は走ることを怠りません。

こうして見ていくと、古い話になりますが、プロ野球400勝投手金田正一氏が「走り込みを怠ると投手は肩を壊す」ということの真意が理解できるかもしれません。今のスポーツ医学では金田氏の発言は理解され難いと言われがちですが・・・。

実際に、彼はロッテの監督時代に、そのときのエース格の右腕の故障した肩を、自らの自宅で食事療法や独自のトレーニングで治癒させ復活させるということをしています。

 

話しを戻しまして

有酸素運動によって、呼吸運動を含む心肺機能の訓練は脊柱の胸椎前弯と腰椎後弯に関係性が大きいことは明らかです。

 

では、走れば脊柱の前弯と後弯が形成されるのか、というとそうではありません。

 

胸椎の前弯、腰椎・下部胸椎の後弯を形成するのは、肋間筋、腹横筋、腰方形筋のバランスの良い血流に掛かってきます。ここに深部筋反応であるマッスルシリンダーを誘導することが何よりも重要なのですが、漸く身整式もここを強化できる動作に行きついてきました。

 

この動作の参考になったのが、「側弯症は治る」大塚乙衛著という本でした。

このシリーズを読まれてきた方は「え!」という衝撃を受けるかもしれません。

正規の医療関係者からは距離を置かれがちなこの本ですが、読んでみると私個人としては感動し繰り返し読んだ一冊です。

特に始めに紹介される側弯症の方との出会いなどは神様のいたずらではないかと思われるほど衝撃的な出来事です。

この著書で紹介されている側弯エクササイズ(大塚乙衛氏考案)ですが、私は相棒の弟とすべての体操を実際にやってみて、凹側の委縮しやすい筋層にシリンダー反応が、はたして現れるのか、適切に深部筋が膨らむのか、を調べていきました。

自分たちの身体に何が起こるか、脊柱や胸郭に適切に影響するのかも、丁寧に見ていったのです。

 

そこに紹介されているすべてのエクササイズが側弯症に良いという訳でもないことも分かりました。

 

不適切になりやすいものもありました。なぜそれが分かるのかというと、自分たちの腸肋筋や最長筋(側弯のカーブに直接関係する筋)が緊張を増してしまうエリアが在って、そこに我々の身体でも一時的に、側弯傾向が出てしまう場合があるのです。

それは回数をたくさん行うほど顕著に現れます。

 

しかし「明らかに良い」と言えるものもいくつかあったのです。

30から100回くらいの回数をやっても、脊柱の生理的前弯と後弯がしっかり現れ、自分たちの脊柱が中心に引き寄せられるという反応を顕した体操です。

この反応が出ると自分たちの身体も疲労回復作用が現れてスッキリとします。

こういう体操は実感としてやりたくなります。

このようにして確信が出てくるのです。

 

最も参考になった体操

100回トレーニング

 

 

 

 

両著書の共通点