岩波ホールがコロナ禍によって閉館することを昨日のニュースで知り、ショックを受けています。レッスンの場でも話題になりましたが、日本の文化拠点がもうすぐ一つ消えるということでもあると思います。

この映画館からいただいたものは個人的に多大です。例えば、ここで上映されたアンジェイ・ワイダの『大理石の男』などによって、映画あるいは芸術と社会構造の具体的な変革運動との関係をかなり生々しく目の当たりにしたことは大きな出来事でした。

同じワイダ監督による『約束の土地』という忘れ難い映画に出会ったのも岩波ホールでした。近代の繊維工業で大事業を夢見た若者たちの生き様を通じて資本主義の始まりを描いたものですが、これは上記とは別の意味で強烈なインパクトがあり、非常に深く心に食い込んだ作品で、鑑賞から30年以上も経っていると思いますが、現代の生き方や人間の欲望や宿命について、いまだに考えさせられることが多いのです。

ほかにも、タルコフスキーの『鏡』やアンゲロプロスのいくつかの作品や羽田澄子さんのドキュメンタリー映画やさまざま思い出します。僕にとっては、岩波ホールとエキプ・ド・シネマがなければ知る事さえが出来なかった作品や作家はとても多かったし、ジェラール・ドパルデューやロミー・シュナイダーやヘルムート・バーガーなどの名演技を味わうこともなかったかもしれません。

何よりも、それらの作品を鑑賞することや演技に惚れることから芽生えた様々な興味の拡がりや思考の始まりというのは、掛け替えないものだったと思うのです。

また、ここで入手したいくつかのパンフレットには、採録された日本語シナリオが全編掲載されていました。これにより、スクリーンで観た経験をその日のうちに細やかに思い出すことが可能になりますし、気になった台詞を繰り返し眺めることもできますし、さっき目で見たものを今度は文章で文学的に味わい直すことができます。つまり、一回の映画鑑賞をより大切にすることができるのでした。このようなパンフレット作りには映画に対する特別な愛情と志を感じましたし、やはり観客として一作一作をより深く味わうこと助けを具体的にしてもらえるのは本当にありがたかったのです。

世評や流行に振り回されず、きちんと筋の通った考え方で、質の高い映画を公開してきた、その結果として、日本の文化全体に大きな影響を与えてきた映画館だと思います。

どうしてもこの一本を観なければ、という思いで仕事帰りに神保町の駅の階段を駆け上ってゆくことは、もう無くなるのだと思うと、ひどく寂しいです。いつか再開の日が来ることを心から願います。

  岩波ホールHP

 

 

 

 

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※次回公演日程など、まもなく順次公開となります。

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2022年のレッスンは1月5日から開始します。募集状況など、上記クリックをしてください。

 

 

 

photo=rehearsal for next performance

新作ソロのための作業を再開しました。

 

 

 

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きのう6日夜の積雪です。

かなり道路は危なかったけれど、都内でこんな樹木の姿を見るのは久々でした。

 

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櫻井郁也による

ダンスパフォーマンス、

演出・振付、

ワークショップ

などのご依頼について

 

アーティストワーク

【ダンスパフォーマンス、出演、作品提供

フェスティバルなどでのダンスパフォーマンス、ダンス作品の創作や振付、他分野とのコラボレーション、出演・講演・対談など、随時お受けしております。

企画書やご提案などを上記「十字舎房」事務所宛にメールでお送りください。

 

【振付、演出、公演サポート】

振付・演出・監修・ドラマトゥルク・稽古や運営のアドバイスなど、公演や発表会を行うためのご指導やサポートをしております。出演10名規模のグループ発表会から大規模な劇場公演まで内容に応じて検討しますので、まずは、ご相談ください。

 

ワークショップ&レッスン

【ワークショップ&グループレッスン】

学校などの教育機関、地域の公共事業、芸術関連施設など。

人数は、10名程度からお受けします。

詳細はご一緒に考えますので、まずはご相談ください。

 

トーク、ティーチインetc

【講演会、勉強会、対談など】

お話を中心とした勉強会や講演会のご依頼も可能です。

こちらも内容は自由にアレンジできます。まずはご相談ください。

 

■ご依頼方法■

①メールにてご希望の内容と自己紹介をご連絡

→②電話・ZOOMなどで詳しいお打合せ

→③実施内容・必要金額などを決定

→④実施〜お支払い

 

■料金について■

下記のいづれも、費用の目安表を用意しております。必要な場合はご請求ください。

◯アーティストワーク、作品上演や舞台公演など

 内容や条件などにより、ご相談となります。ご予算先行のご企画にも対応可能です。

◯振付・演出・ドラマトゥルク・監修など

 内容やご予算により相談にて費用を決めさせていただきます。

 なるべく早め(目安は半年以上前から)に、ご相談/お問い合わせをお願いします。

◯レッスン、ワークショップ、講演会、勉強会など

 内容・期間・人数により相談にて費用を決めさせていただきます。

 なるべく早め(目安は一ヶ月前から)に、ご相談/お問い合わせをお願いします。

 

【お問い合わせ】

「十字舎房」事務所 
メール juujishabou★gmail.com(★を@に) 

 

 

 

 

 

 

まもなく年が明ける。

今年は、夏のソロ公演によって、コロナ禍で中断された公演活動を再開したが、これは、この2年間の沈黙の中で考えてきたことを基にして、新しい段階のダンス・作品・公演を探ってゆく起点になったと思う。

上演した作品『血ノ言葉』(独舞・上演時間=1時間27分)は、近年に上演したものの中では、かなり苦労した一作だった。ご来場くださったお客様の中には、本作のいくつかの瞬間を対社会的なメッセージとして解釈した文章を後日に送ってくださった方が何人かあり、また、作中に分散して挿入した象徴の意味を受けて感想をくださった方もあった。これには力づけられた。

踊りそのものに、あるいは、肉体それ自体に託したものは言語以前のものとしか言いようがないカオス的で野蛮な力そのものなのだが、『血ノ言葉』という題名の根底には、あの有名なメフィストのささやきがあった。血はやはり特別なジュースなのだという思いが、このウイルスの蔓延のなかで、鮮明になっていった。また、人が生きているなかには決して言葉にできない心が沢山あるのだ、ということが心の中で渦を巻き続けた。

僕にとって独舞公演というのは最近では解体の現場のような側面も出てきている。当たり前のように思えていたことや、何かについての仕方や居方を、あるいは構想と実行の関係を、あるいは虚構と現実の、日常と非日常の、精神と肉体の、、、さまざまを解体するような力が、公演という特殊な緊張感の中でちょっと荒々しくハタラク。上記のものは、そのような感じが特に強かった。

コロナ禍が始まって以来、世界はかつてない経験をしながら様々なものごとの再編成に向かい始めている気がするが、僕自身もその当事者の一人であることがリアルに感じられる年だった。

この2年、苦しいことや心配は増えたが、反面、考えることも増えたし人に話したいことや伝えたいことも増えた。それゆえか、創作面でもレッスンでも、個人個人の方々に再接近するような機会が増えたと思うし、この期間に話し合ったりセッションしたりして蓄積したものはいづれ何らかの実りを結ぶ予感がしてならない。

またこの現在現況は、自らのダンスの核について、職業人として表現者として行うべきことについて、改めて思慮して仕切り直してゆくターニングポイントになっているように思えてならない。

正常化への希望を持ちつつ、この2年に積み重ねた事を、さらに深めてみたい。

 

 

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photo=private rehearsal

 

 

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「ありのままの自分も結構だが、ありえない自分に変身を試みることでこそ希求できる何かがあることも、忘れたくない。

人は何かに変わる。無心になり、色彩をまとい、リズムを身に受けるとき、何か別なるものが身体に降り注ぐのだ。」

これはコンゴのサプールについて書いた過去のブログ記事の一部。

彼らは貧しくてもお洒落のために時間とお金を使う。生活が苦しくても身姿を少しでも明るくして、壊れた街に出てゆく。ただただ、街に出て、歩いてゆくのだ。そして、ゆっくりゆっくりと夜の深まりと絡まり歩き身を揺らす。おそらく、決して戦わないために、だ。そう想像する。働きながらセンスを磨きぬいて自らが選んだ最高のファッションに身を包み、彼らは胸を張って歩き、不戦を誓う。

この人たちに、いまだに、なんだか得体の知れない共感を感じ続けている。彼らを思い浮かべるとき、ふつふつと内部から立ち上がる揺れがある。

最近また、彼らのことを知った時の気分を思い起こす。コロナの中で味わっている諸々ゆえか、あるいは、ダンスすることへの思いゆえか。

(2021日記より)

 

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深夜、、、。

闇について、夜について、考えます。

考えるということ、についても、考えます。

冬のなかで、なぜか、考えが回転を速くします。

冬は、冬の夜は、なんだかとても好きです。

 

 

 

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クラスで言葉について話す時間を得た。たびたびあることだが、、、。

以下は今年秋の日記から。

 

言葉、からダンスを起こしてゆく面白さは日本の諸芸にはとても明らかだが、

夏の独舞公演『血の言葉』のあと、言葉とダンスの関係に、あらためて、より、ハマっている。

音楽から、空間から、日常の出来事から、特に意味のない抽象的な想像から、エトセトラ、実に様々な物事からダンスは生み出されるが、言葉も例外ではない。

言葉では全く形容や説明が難しいような、純粋に運動感覚からばかり出てきた振付だけでダンス作品を作ることも多々ある。

しかし、過去に言葉からインスピレーションを受けてダンス作品をつくり踊った回数は数えきれず、いまもそれはとても面白い作業になっている。

そもそも言葉というものについて考えを巡らせたり、言葉をいかに体験するかという試行錯誤をしてゆくというのは、かなりニンゲンというものについて考えることにも重なってくる。

言葉に縛られたり惑わされることはあるし、言葉ばかりで物事を考えるのも好かない反面、言葉からもらうエネルギーや、言葉によって呼び覚まされる内的な力が、自分というものを変化させる力に転じて、人生を実際に切り開くことさえあることも、確かに感じる。

また、言葉というものがこの世に存在している事自体が、とても神秘的なことに思えることがある。

以前、ある言語を話す最後の一人になった男の人を撮影したドキュメンタリーを見たことがあるが、自分以外に誰も離さず、誰も理解さえ出来ない言語で、その人は毎日毎日しゃべり続けていて、具体的に何もわからないにだけでなく、感情の抑揚さえあまり予測することもできなかった。なのに、その言葉の連続は、その喋り話し語る人の記録からは、強いエネルギーを感じてしまった。

言葉から踊りを起こす、、、

これは、言葉を生きる力に転換するのと、もしかすると近しいのでは。そこには、音楽に触発されるのとはまた異なった意識の層があるのでは。そんなことを、あらためて思うことが、この頃ある。

言葉は僕らの知性に働きかけるだけではなく、言葉には熱や湿度や毒や薬や色んな力が封印されていて、それらが自分の感情や生理に働きかけてくるのかもしれない。

身体を動かしながら、あるいは、身体を動かそうとしながら、言葉を聞き、言葉を問う。

いま、この瞬間、自分がその言葉から何を聞き取り、何を受け容れているのか、そして、何によってどのように動かされているのか、ということが直感される。無知も、未知も、直視される。自分のアタマや心の、固さも柔らかさも、身体によって露わになる。

言葉から踊る、ということは、他人を受け入れることから始める、ということでもある。それは同時に、自分を拡張しようと試みる、ということでもあると思う。

ロゴスなるものに潜在するのは、火の力、なのではないかと思うことが最近、多々ある。

言葉の封印を解く力が、肉体的な行為や行動には、あるのだろうか。

(2021日記から)

 

 

 

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