カールソンとエヴァ・イェルバブエナがデュエットを踊る映像を見た。
時を忘れた。
毅然としたコンテンポラリーダンスにスパニッシュの叫び。
シンプルなギターの音に寄り添うように、黒髪のイェルバブエナが踊り始め、いきなり泣ける。
踊りのなかで、優しさと痛みが絡まり、渾然となって乱れてゆく。
その踊りと距離を置いて、もうひとつの踊りがある。
金髪長身のカールソンだ。
かなり長い時間、後ろ姿のまま踊っている。息を殺して踊る。
そして、パっと振り向いた時、あらゆるものをつらぬく眼が刺さった。
たくましく、かつ、デリケートの極みと思えるような運動といっしょに、
彼女から、まっ赤に溢れ出てくるものが、迫ってくる。
僕には、本当の心の底からの声に感じられて仕方がない。
映像にのめり込み、見とれながら、現場はどんなかと想像する。
ナマの場に行くことが出来ない現在のことも当然思う。
踊る人と同じ場所に居たい。そして、たくさん拍手をしたい。
若いころ、パリの市立劇場でソロを観て彼女に惹かれた。
あれから20年以上たって、きょう、もっと好きになった。
そして、体の中がむずむずしてきた。
コロナをやっつけたら、思いっきりダンスをしよう。
きっとだ。