リンゼイ・ケンプ氏が亡くなったことを知る。
こういう日が突然くるのだ。
寂しくなってしまった。
東京公演でジュネとシェークスピアを観た。
もう20年近く経っているかもしれない。
黒い紙を粗い紐で結び綴じた公演カタログの質感をまだ手指におぼえている。
真夏の夜の夢も、花のノートルダム(FLOWERS)も、美しすぎて僕には少し怖かった。
華やかで幻想的な舞台のどこかしらに、深い哀しみの存在があったと思う。
これが舞踊家だ。これが悲劇役者だ。と、うなった記憶がある。
独特の視覚や演出ももちろんだが、やはり氏ご自身の立ち方の、とりわけ背中と眼が、舞台の思い出には強烈だった。
氏の世界に触れる体験は、どこか生死の境界線をこえて見てはいけない光を見てしまうような、危うさの体験でもあった。
肉体のあらゆる表情によってリンゼイ・ケンプ自身が踊り演じ「うたい」あげたように、
命というものは、やっぱり、遠くに行ってしまうものなのだろう、、、。
80歳だったそうだ。