アレハンドロ・ホドロフスキー監督の新作『エンドレス・ポエトリー』が秋11月18日に公開されることを知りました。

特別な映画をつくる人だと思います。
この人の映画を初めて観てから、もう30年近く経っていますが、いまだにその最初の印象が鮮明にのこっています。

初めて観た作品は『エル・トポ』でした。

大地に、岩に、砂塵に、青空に、直射日光に、肉体が、人間の肌や血がバサリと映える瞬間が、強く印象にのこっています。

旅の映画というのでしょうか、彷徨の映画というのでしょうか。
狂いを克服して己をつかんでゆくこと、人間の温度やマトモな場所を探してゆくこと、そのような、旅、あるいは、さまよい。非常に迫力がありました。

渋谷のパルコ劇場かパートスリーのスペースどちらかだったと記憶します。監督の仲間でもあったそうですがアラバール作演出の実に面白い芝居も同じころ同じ会場で観たのでした。

ホドロフスキー監督の作品には、当時は(いまだにそうですが)前衛とか難解とか神秘とかアンダーグラウンドとか言う単語たちがセットでペタペタと貼られ、レッテルというのか宣伝なのか知りませんが、ある種のワクがつきまとっていました。

しかし、観て感じたものは全くそんなことではなく、壮大な活劇であり、いたって直球の人間ドラマを感じたのでした。

以後、機会あるたびこの人の作品は観るようになりました。
狂おしい情景や激しい残酷は、すこぶるあります。女と男のこと、弱者と強者、すさまじさ、異界、奇怪、誘惑、虐殺、幻、、、。ときにはスクリーンから眼をそむけたくなるほどの要素もありますが、二転三転の物語を経てあるとき、それらが一気に浄化されて、大きな悲劇、人生という普遍のテーマが浮かびあがる瞬間が、この監督の映画には、いつも確かにあるように感じてなりません。

先の『エル・トポ』においては父の手を握り砂漠を旅する少年の眼差しに、 前作『リアリティのダンス』における老人の眼差し(ラストシーンの海。故郷を離れる舟上にキチッと踏ん張っていられたご自身の姿の)に、非常にドラマチックな哀しみと、新しいスタートを決意する輝きが、キラキラと光っているように、僕には見えて仕方がないのです。

この世に生きることを、肚の底から受け止めてゆこう、というようなメッセージを、勝手かもしれないけれど、僕はホドロフスキー監督の映画に感じます。


アレハンドロ・ホドロフスキー監督の最新作『エンドレス・ポエトリー』は、フランス、チリ、日本の共同製作で、撮影のクリストファー・ドイルはカーウァイ作品などで対象に寄り添い一緒に走ってゆくようなカメラワークが凄いと感じました。

この秋、大きなスクリーンで新しい作品を観れる日が待ち遠しいです。


アレハンドロ・ホドロフスキー新作映画『エンドレス・ポエトリー』トレーラー


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