ある夜、
雨のなかで、焔を見ていた。

まだ桜が咲く前だったが、一夜、ある古刹に逃れた。
何日も夜を徹して祈りが捧げられる春の行があり、その結願の夜だった。

そこに降り続ける雨は、どんどん冷たくなり、夜はより暗闇になり、
そのなかに、いくつかの焚き火がつけられた。

焔にあたりながら、
練行衆の声のうねり、踏み音のとどろき、
を聴いていた。
聴きながら、
焔に焚き木をくべる人の手を見ていたら、
その美しさにどきりとした。

冷たい雨のなかで、火を絶やさぬように、焚き木をくべ続ける人。
響きつづける声明。
時に湧き上がるような、韃靼のたくましい足音。
なぜかいろんな願いごとがこみ上げてくるのだった。
なぜか目の前なにもかもが透き通るように、いとおしくなってしまうのだった。

焔を見つめながら、焔にあたたまりながら、火について、思いめぐる。

(わたしたちは、わたしたちが、破壊の火をつけぬよう、わたしたちを、、、、、、)'