こうの史代さんの原作を何度読んだかしれない。

なのに、
初めて触れる世界のように新鮮で、思い出のように切なかった。

この感覚は何なのかしら。

気がつくと主人公のとなりにいるような気持ちが湧いていた。
話しかけようとしたり、一緒に御飯を食べたり、
みたいな、、、。

そして、ほとんどずっと泣いていた。
なぜ涙が出てくるのかさえ、わからないまま、、、。

映画『この世界の片隅に』片渕須直監督。

戦時下の広島と呉を舞台に、ある女性を描くアニメーション映画だが、そんな説明はあまりにも不似合いで、いや、どんな説明も解説もしないほうがいいに決まっている。

あの戦争に、あの原爆に、うばわれた大切なもの。悲しみをこえて再生された何か。現代の根っこにあるはずの、僕らが忘れてはいけないはずの、壊されても壊されても大切にされてきたものが、スクリーンの向こうから、そっと手渡されるのだ。祖母から孫に伝えられてゆくように、、、。

傑作に出会えた。
ずっと忘れられないと思う。


公式サイト