週末の仕事を終えて駆け込んだコンサートから、とめどない力をもらった。

来日したパティ・スミスとフィリップ・グラスのコラボレーション「THE POET SPEAKS」だ。

故アレン・ギンズバーグの誕生日に捧げられた一日公演。
フィリップ・グラスのピアノ演奏のなか、パティ・スミスがギンズバーグの詩を朗読し、読み上げられる詩 を村上春樹と柴田元幸が新訳してスクリーンに映し出す。やがて演奏にパティ・スミスの活動を支え続けた曲者レニー・.ケイのギター。そしてパティの娘であるジェシー・スミス(ピアノ)が加わる。ローリー・アンダーソンと組んでいたチベットの天才テンジン・チョーギャル(ヴォーカル)が渾身のオープニングアクトを担った。信じられないメンバーが目の前の舞台に居る。

アレン・ギンズバーグの詩は宝物だ。前にギンズバーグが来日した際の永田町でのリーディングライブの体験を稽古しながら何度も思い出し背を押されている。彼の言葉に捧げるダンスをいつか踊りたいと思い続けている。有無を問わず足が動いた。

冒頭、地球=ガイアを包むようなチョーギャルの歌声が会場を満たし、パティ・スミスが反戦スピーチで受けた。そしてフィリップ・グラスがピアニッシモの循環的メロディをピアノを奏で、パティは詩を朗読し始める。鳥肌がたつ。二曲目の「ウィチタ渦巻きスートラ」が早くも圧巻。凄まじい気迫のみなぎりは絶えることなく言葉は鼓動そのものに昇華される。やがて詩は歌となり抑えがたいパンクロックへと炸裂するがグラスのピアノソロが裂け目のような沈黙をもたらし、場内がまるで教会のような瞑想空間になってゆく。リアルタイムでモハメド・アリの訃報が入り、パティは娘のジェシーと共に勇者を偲ぶ一曲を捧げる。終幕はギンズバーグの代表作「吠える」の絶唱。ホーリー、ホーリー、ホーリー、あらゆるものは聖なるかな、、、。罪や穢れさえ含む今生の全てを讃えてギンズバーグの原稿を空に投げる。そしてパティ・スミスは彼女自身の代表作「人民に力あれ」を雪崩打つように歌い始める。グラスも一緒に手を叩き歌う。会場の皆がそれに加わり「ピープル ハヴ ザ パワー」のシュプレヒコールと手拍子が延々と轟いた。

ビートニクスとパンクロックと現代音楽が一つに結合され、アースミュージックになって現在への声を上げた一瞬だった。終演後のツイートには、こういうものこそが胸を打つのだ、これぞ本物のパフォーマンスだ、という声が続々と上がり僕も本心そう思う。アレン・ギンズバーグとパティ・スミスとフィリップ・グラスと、この舞台に関わった全ての人に心から拍手をした。

魂の力を改めて信じた。信じ続ける力を、もらった。