映画を観るということが、かくも贅沢なことなのだと思えた。

侯孝賢監督(台湾)の新作『黒衣の刺客』(原題:聶影娘)が封切だからと誘われた。新宿、満席。

歴史、活劇、アクション、大作、人気俳優、賞、、、。

どうも好かない文字が宣伝におどるから少し迷ったが、下らない想像は最初の一瞬に全壊。唾をのんだ。

丹精込められたものが凝縮した一つ一つのカット。演技の妙。言葉の鋭利。それら包む絶景。音。

デリカシーと大胆さの極みに溜息つく間に、バサリと次の場面が来て、そのタイミングにまた唸る。

そんな連続に、冷や水を浴びた。眼が冴える。鼓膜が張る。

物語を理解するヒマが勿体無い。ただただ見つめていたい、聴いていたい、何もわからないままで、、、。
そんな時間を過ごすことが出来た。カラになれるのは観客の醍醐味だ。ただ驚き、溜息する、その贅沢。

始まったばかりの映画を語る無粋は避けたいが、つい書いた。

自分のスケールを越えたものに出会うと世界が明るみを増すように感じる。

侯監督に感謝!

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