『映画 日本国憲法』と題するドキュメンタリー映画がネット上で連休の間公開されていて、それを観た。

護憲か改憲か、それは一人一人の思いがあって当然と思うけれど、いま下手をすれば近々に個々が問われるかもしれない状況はお互い認知するしかない所にいて、いざ国民投票となったときに後悔しない参加を準備しておく、そこは良く良く考えておかねばと思うが、そのうえで、この映画はかなり参考になると思った。

映画の核を担う一人、歴史家ジョン・ダワーが、彼は主著「敗北を抱きしめながら」で日本の戦後政策に関する鮮やかな解剖を試みているだけあって、現行憲法の根底衝動について非常に明晰な発言をこの映画でしている。それを軸に、そうそうたる顔ぶれが憲法制定とその原動力について分かりやすく語る。

民主国家にとって憲法とは何か、立憲民主主義国家にとって政府と国民の関係とは何か、法と現実とのギャップは如何に解釈され得るのか、国民主権の行使とはいかなる場合に必要となるのか、などなど、いま私たちが考えるべき課題へのヒントが、この映画には散りばめられていると感じた。

憲法論議の常として第九条があるが、なぜ九条が大事なのか、九条に連動する問題がいかに先進的で普遍的な生活態度に関わるのか、改めて考えさせられる。

短期的な判断や内政的な判断では済まされない改憲問題について提起しながら、日本国憲法が、国際的かつ人類道徳的な挑戦と過去への贖罪意識を根底に孕んだ憲法であることを、そして、この現行憲法のもとで営んできた私たちの70年間の生活自体が最悪の服従体制から一種の脱権力的闘争への挑戦であり革命的実験であったことを、認識し直すきっかけを、この映画はくれる。

一人一人が、個人と共同体に関する思想を試される時期が来ている。いざというときに充分に議論する準備があるかどうか。議論の前提となる勉強が出来ているかどうか。本心からの意見を持てているかどうか。

この映画は、そのような問いをストレートに提起していると感じた。


映画日本国憲法*5月7日24時まで!