レッスンの後でピアニストが言いました。
わたしが指でやってることを、みんなはカラダ全部でやってるのね。踊りってカラダが楽器なんだ。面白いっ!

毎週水曜夜のオイリュトミークラスでは、月1~2回、ピアニストの生演奏で踊る「音楽オイリュトミー」を取り入れています。

オイリュトミーには、その真骨頂たる「言葉の響きの踊り」すなわち言語オイリュトミーのほかに、ダンスの原風景を思わせるような「音楽オイリュトミー」があります。その両方を学ぶのが、このクラス。常時5名前後、経験の長い人から全く初心者の人まで、それぞれが自然に与えあいながら親しいアンサンブルを形成しつつ、緩やかに稽古を楽しんでいます。

12/25は、先述の音楽オイリュトミーのレッスンでした。
音楽オイリュトミーはトーンオイリュトミーとも呼ばれます。
トーンすなわち音、楽音。聴こえてくる音の一つ一つと溶けあい、まさに全身を楽器のようにして、音を奏でるように踊る。それがトーンオイリュトミー。

この日は、いま取り組んでいるバッハの『G線上のアリア』の音調べをしました。

どんな音がメロディを歌っているんだろうね、どんな音がリズムや力の強弱を生み出しているのかな。
楽譜をながめたり、少しづつ演奏してもらう音を聴いたり、一つ一つ、音を身振りに表して、音楽を解き明かしてゆく。
この作業を経て、踊り手は音楽に深く親しんでいきます。

クラスでよく言うのですが、今はCDとかで簡単に音楽の完成した演奏を、しかも世界一流の演奏を聴くのが普通になってるけど、もともと音楽はそんな簡単に聴けるものではなかった。楽譜を手に入れて、一音一音たどりながら何度も練習し、全部演奏できた時に初めてその美しさに出会うような、身体と時間をたっぷり使って初めて聴こえてくる響きを楽しむものだった。オイリュトミーで音楽を踊るときには、しばしばそんなことを、思います。パーッと音楽の流れを聴いてしまうのでなく、一音一音たしかめるように、聴いて、身振りにして、全身で少しづつ「歌にしてゆく」。
だから、一度しっかり取り組んだ音楽は身体に染み込んで、ずっと忘れる事は無いです。

踊ることは音楽を深く聴くこと、音楽の学びでもあります。何曲かこなすうちに、楽譜も自然に読めるようになり、いつしか音感も目覚めてゆきます。

オイリュトミーでは、イメージを膨らまして全身で空間に描く踊りの軌跡をフォルムと呼び、さらに、瞬間瞬間に聴こえてくる響きを腕や上半身で造形してゆきます。言葉の響きを踊るときには、母音や子音それから言葉が内包する気分や色彩感を。音楽の響きを踊るときは、楽器が奏でる音階や音と音が振動しあう様子を。ていねいに調べながら振付に落とし込んでゆきます。
そんな作業は、感性からほとばしる踊りに、理性的なコントロールや考える力を与え、結果的に、感情と思考と意識の直線が相互に駆け巡るような、エキサイティングなワークへと発展してゆくのです。
だから、一つの詩や音楽をオイリュトミーで踊ることは、その内容を深く身体に血肉化することに近づきます。

その方法はデリケートな法則と様式があり、柔らかい曲線的や所作があったり直線的でエネルギー放射みたいな所作があったり、上手く構成すればとても優美な運動が生まれてゆく仕掛けです。

ちょっとずつ、しかし確実に、音楽は身体に染み込み、身体は音楽に溶けあってゆく。

そんな様子が、毎回とても楽しみです。

※レッスンは毎回、杉並・荻窪地区にて。興味ある方は、ぜひご参加下さいませ!

_________________________________________
基礎のからだづくり、オイリュトミー、コンテンポラリーダンスの初歩から創作まで……
定期レッスン
年内は12/28(土)まで、年明けは1/8(水)から
【各クラスの参加案内】

ご希望の方は募集要項(クリック)をご一読の上、ご連絡下さい。