勢い。亡くなった十八世勘三郎さんの舞を観て僕が感じていたのは、まさに、それだった。

バイタリティあふれるキャラクターや斬新なことを次々に実現される行動力は余りにも有名だけど、僕が魅力を感じていたのは、勘三郎さんの「舞」だった。

だっ、と舞台に出た途端のエネルギーは、火花のような飛び散り方。そして直線的というか、動きのなかにウネウネしたものが無い。一瞬一瞬のキメに向けて、全ての力が猛スピードで集約されてゆく。
熱がとり残されて、真っ赤に残像をひく。

いさぎよく、かつ、どん欲。
女の姿を舞っていても、その身体全部から放たれる気迫が強くて、役や型を砕いてゆくような勢いを感じてならなかった。

覚悟の塊のようなその舞は、ひたすら前だけを見定めて走るランナーみたいだと思っていた。

出来ることはイマやり切る。

そんな姿が舞になって現れるのだと思う。
舞、というより、ダンス、というほうが合っているかもしれない。

内側に向けて爆発している感じが、踊りにはどうしても必要なことを芸で示してくれた、とても大事な人だった。

向こう側の世界に行っちゃうのは、あまりにも早すぎだ。と思った。