「たましいはただ、神様に、
  命のパンをと泣き叫ぶのでいい。
  たえまなく、疲れも知らず、赤ん坊が泣き叫ぶように・・・。

  みじかくて終わりが定めなく、
  終わりが定めなくてみじかいこの地上での滞在のあいだ、
  ただ、このように叫ぶこと、
  そして、無の中へと消えて行くこと。

  それだけで、いいのではないか。
  それ以上、何を求めることがあろう。」

シモーヌ・ヴェイユの言葉だ。
踊る、といういとなみを繰り返すなかで、たびたび胸をかすめる。
どうしてかな・・・。

いよいよ数日後の本番をひかえたソロ『かつてなき、結晶~三月の沈黙へ』。

美術・衣裳・照明などの合わせ稽古を終えた。
作品が全貌をあらわし、いよいよ船出だ。

デリケートで大胆な、狂おしさのなかに優しさがある、そんな舞台にしたいね、と抱負した。
肌でつかんだ感触、もらった言葉、視線の温度・・・。
何度も反芻しながら夜の走り込みをした。

さまざまな言葉やイメージや気配を飲み込み、
消えてからっぽになるまで、からだを動かす。
からっぽ、からっぽ、からっぽの、
からだ、からだ、からだ・・・。

とことん向き合ってみたい。
世になにがあっても、
悲しみのなかにあっても、喜びのなかにあっても、楽しくても苦しくても、
それは生あるがゆえの波。
すべて受け容れながら時の流れを紡いでゆく「からだ」。
いのちここにともにあることのそこはかとない「情」。
この舞台、体温と湿度がキッチリある景色にしたい。

いままで数えきれないダンスから、魂が深呼吸するような瞬間をもらったこと、に。
いまこの地上で、たぶん、数えきれない人がダンスをしていること、に。
ダンスという、とてもとても大きな宇宙があって、この「からだ」がささやかにあること、に。
想いを馳せつつ、
畏敬をいだきつつ、
一期一会の舞場に向かいたいと思う。

さて、最終調整。
息を整え、純粋に立てますように・・・。
ぜひぜひ、ご参会ください。

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舞台詳細
★3/30上演《櫻井郁也ダンスソロ『かつてなき、結晶~三月の沈黙へ』》⇧click