ほとんど動いていないのに、
力の波が押し寄せて包み込まれるような瞬間に出会うことがある。
とても激しい動きなのに、
あたり一面しんと静まり返っているような瞬間に出会うことがある。
そんな瞬間に出会うと、
ああ今ここに居て、居ることが出来て、ほんとうに良かった。と、涙がわいてきそうになる。

それは、人間の動きと大地や空気や時の流れがジョイントしている一瞬、
分たれたものどうしが再び一つに溶け合おうとする一瞬、
なのかもしれない。

舞台のみならず、稽古でもレッスンでも、そんな瞬間が訪れることがある。

「踊りとは魂の秘密の言葉」

マーサ・グラハムが遺した有名なメッセージだ。
それは、もしかすると、そのような、エネルギーとエネルギーが直接交流するような一瞬のことなのかもしれないなと、最近思うようになって来た。

お喋りの言葉。語る言葉。沈黙の言葉。
近い言葉、遠い言葉。自分の言葉、他人の言葉。
言葉、といってもさまざまだと思う。

もちろんダンスは沈黙の言葉だ。
そして、どちらかというと遠い言葉かもしれない。

たくさん喋ったり、きちんと語るのもよいけれど、
じっと沈黙して、いっしょに時を過ごすことが、もっと大切なのは、
それは黙って向き合っているからこそ聴こえてくる言葉が沢山あるからだ。

魂は、ほんとうは無口なのだと思う。

ダンスの練習はいつも、じっと地面を踏みしめることから始める。
地面を踏みしめながら、この地上にただひとつの、この肉体を感じ取る。
それは、正確に沈黙することの練習とも言える。

揺さぶり、うねり、突っ立ち、跳んで、また着地して、
それでも穏やかな沈黙が続いてゆくとき、
たしかに聴こえてくるものが増えてゆく。
聴こえ方がかわってゆく。
この、ふくよかな空気にみちた地球の上で、あまねく存在はサウンドを発している
ということが、すこしすこし近くなってゆく。

魂の秘密の言葉。
いつかそこにも、とどき始めるのかもしれない。

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