ソロ公演まで、一ヶ月を切った。
緊張感がピークにさしかかる時期だ。

今回の公演、これまでのどの公演とも空気感がちがっている。
美術家との対話も、音楽家との対話も、サポートしてくれるスタッフとの対話も、
「いま」ということ、「生命」ということ、に集約されてゆく。

震災がきっかけになっている。
3.11。そしてフクシマ。
あの直後、じっとしていることは出来なかった。
美術の櫻井恵美子と、いますぐに決めよう、と話した。
ダンスの力を信じて、心を明るくする力がある仕事を・・・。やるなら「TABULA RASA」だ。
そして音楽(アコーディオン)の田ノ岡三郎に電話をした。
すぐにやりましょう。全部、生演奏で。

速攻でリハーサルが始まり、劇場のスケジュールが決まり。
3月から4月、通し稽古を何度もやった。
スコアの見直し、振付けの見直し。

作品の原点は「呼吸」だった。すなわち、生命活動の根幹。
それは、作品の中で、単に肉体の営みなのではなく、人間が自然や宇宙の循環という、大きなリズムの一端を担っているということなのではないか。ということへ結びつこうとしていた。
いのちについて考える。そのことが、いきなりリアルな、生々しい問題になった。
生きているということを、本気でとらえなおすことからしか、再生の道はひらかれてゆかない。それほどの打撃のなかに、僕らはたたきこまれた。経済の破綻とコミュニケーションの危機にあったところに、襲いかかった大地震、津波、原発事故。
大幅な改訂を行なうことになった。

わずか数ヶ月とはいえ、3.11からいま、身体の感覚は変化している。
生の気配や死の気配に、敏感になった気がしてならない。

踊りの作業は、速度を増してゆく。

(つづく)
※写真=2010年12月のステージ「器官なき身体phase1」より