金曜は風のことを書いて、そのあとダンスクラスのレッスンをしました。
新しい作品の振付けを間もなく開始するんですが、その予備レッスンを前半に。
これから取り組む作品は、リムスキー=コルサコフ作曲の「シェラザード」。アラビアンナイトを題材にした舞踊音楽で、かのニジンスキーも踊った曲。波打つようなリズムとロマンティックなメロディが交響しながら解放感を導いてゆく音楽を全身運動で踊る予定。
で、いまやっているのは、まず、音楽をカラダで知る作業。漠然と音楽を聴くのではなく、リズムを動きに起こしてみたり、聴こえてくる音の変化に全身を委ねたり、エトセトラ、さまざまな運動をしながら、音楽を味わい尽くしてゆく。各自が曲にしっかり馴染んでゆくなかで具体的な振付けに入ってゆくための練習であり、イメージトレーニングも含んでいます。
後半は持ち寄った曲をランダムにかけたり僕の声がけをききながら即興で踊る練習。
ダンスクラスは、毎週同じメンバーでコンテンポラリーや舞踏の作品を創っていったりインプロヴィゼーション(即興)の練習を重ねてゆくので、身体感覚やテクニックだけではない、かなりクリエイティビティとか想像力なんかを磨いてゆくことになります。時には、生きていて感じていること思っていること考えていること、ということにまで会話およぶこともあり、いつしかメンバー互いの理解が進んでいる感じがある。
稽古であり、交感である場。ダンスや身体は、かかわり合ったり感じあったりするなかで、いつしか変化して育ってゆく。レッスンのたび、そんなことを実感。
翌日の土曜は基礎クラスのレッスン。定番のヨガ・アサナいくつかに続いて歩行のトレーニング数種を練習。このクラスでは、レッスン時間が流れてゆくなかで、いい集中力が生まれてくるのを毎回のように感じます。それから、長く続けている人の動きなんかを見ていると、姿が美しくなっているだけでなく、気の通りというのかなあ、たたずまいそのものがスッキリしてきているなあって、あらためて感じます。そうすると、もっとこんなふうに!なんて、どんどん言いたくなってくる。この人、良くなったな~と思うと、うれしいから、もっともっと、って言ってしまうのでありましょう。身体のすみずみに、丁寧に気持ちを注ぎ込むこと。それは、循環するエネルギーとしての自己を感覚し直すことでもある。からだひとつ。そこに響く声なき声に、じっと耳を傾けてゆくことは、フィジカルのみならずメンタリティの整理整頓にも深くつながっていることを、稽古に通ってくるメンバーの変化ぶりから感じます。
どのクラスも少人数とはいえ、ひとりひとりにグッと気を入れて見てしまうので、けっこう消耗しちゃうんですが、それでも、レッスンの後ひとりになるといつも少しうれしい感じが湧きあがる。クラスの方たちに稽古をつけさせていただきながら、いつも感じるのは、人が自らに向き合おうとする姿、その美しいこと。
ただ運動するのと違って、ダンスには想像力や感情が関わっています。人と人とが感じあい呼吸を交わし合う、ということへと、つながっています。真摯さへ、誠実さへ、純真さへ・・・。どこかで、そんなベクトルが働いています。カラダに向き合うことは、本来の自分から目をそらさぬことにつながっているので、稽古を重ねれば重ねるほど、一本スジの通った美しさをまとうようになってゆく。淡々と切磋琢磨。それが、ダンスの基本なんだなあという気が、このレッスンを続けながら想うところ・・・。
ちょっと話題はそれますが、土曜の夜にフィギュアのショートプログラムを見ていて、アルフレッド・シュニトケの音楽を舞う浅田真央選手の姿に、どきどきしてしまいました。広大な氷と猛スピードの緊張感のなかで、あらゆるものに向き合い乗り越えてゆく肉体の、あの熱量に、音楽がぴたりと寄り添って胸に迫ってくるようでした。シュニトケの曲、突き抜けた鋭さがあって好きだったんです。プライベートな稽古でファウストカンタータを踊っていたことがあったんですが、ドスの利いた音の塊からメロディーがぐいぐい押してくる感じに圧倒されつつ、自分のヌルさに舌打をした記憶があります。カラダで音楽に向き合うとき、音楽の根っこに流れているエネルギー量を感じます。シュニトケの音楽は、それが強烈で、簡単に近づくことが許されないような熱を放っている気がするんです。つかみのあるメロディの底に、すごく太い根っこを感じる。克服に克服を重ねた強靭な音の層。現代音楽の、ひとつの金字塔だと思って聴いたり踊ったりしていました。それが、この選手のフィギュアで起用されているなんて、ささやかな喜び。この人の曲を踊っているダンスはあちこちで観たことがある。けれど、スケートでは初めて、そして、こんなに一体感があるのも初めてだった。浅田選手、さすが。
今夜も風が吹いています。しずかな微風です。
風を感じるたび、ボブディランのBlowin' in the Windを思い出します。
「答えは風のなかに吹かれている、答えは風のなかに・・・。」
毎日が流れてゆくなかで、いろんな感情が訪れては散り、いろんな問いが降り積もり。
さて、あたらしい一週間を始めようかしら。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
information
予告●3月中旬から4月上旬あたりで、「春の短期集中ワークショップ」を開こうかと考えています。具体的な日程や内容、まもなく決まりますのでご注目ください(参考=夏の短期WS)
新しい作品の振付けを間もなく開始するんですが、その予備レッスンを前半に。
これから取り組む作品は、リムスキー=コルサコフ作曲の「シェラザード」。アラビアンナイトを題材にした舞踊音楽で、かのニジンスキーも踊った曲。波打つようなリズムとロマンティックなメロディが交響しながら解放感を導いてゆく音楽を全身運動で踊る予定。
で、いまやっているのは、まず、音楽をカラダで知る作業。漠然と音楽を聴くのではなく、リズムを動きに起こしてみたり、聴こえてくる音の変化に全身を委ねたり、エトセトラ、さまざまな運動をしながら、音楽を味わい尽くしてゆく。各自が曲にしっかり馴染んでゆくなかで具体的な振付けに入ってゆくための練習であり、イメージトレーニングも含んでいます。
後半は持ち寄った曲をランダムにかけたり僕の声がけをききながら即興で踊る練習。
ダンスクラスは、毎週同じメンバーでコンテンポラリーや舞踏の作品を創っていったりインプロヴィゼーション(即興)の練習を重ねてゆくので、身体感覚やテクニックだけではない、かなりクリエイティビティとか想像力なんかを磨いてゆくことになります。時には、生きていて感じていること思っていること考えていること、ということにまで会話およぶこともあり、いつしかメンバー互いの理解が進んでいる感じがある。
稽古であり、交感である場。ダンスや身体は、かかわり合ったり感じあったりするなかで、いつしか変化して育ってゆく。レッスンのたび、そんなことを実感。
翌日の土曜は基礎クラスのレッスン。定番のヨガ・アサナいくつかに続いて歩行のトレーニング数種を練習。このクラスでは、レッスン時間が流れてゆくなかで、いい集中力が生まれてくるのを毎回のように感じます。それから、長く続けている人の動きなんかを見ていると、姿が美しくなっているだけでなく、気の通りというのかなあ、たたずまいそのものがスッキリしてきているなあって、あらためて感じます。そうすると、もっとこんなふうに!なんて、どんどん言いたくなってくる。この人、良くなったな~と思うと、うれしいから、もっともっと、って言ってしまうのでありましょう。身体のすみずみに、丁寧に気持ちを注ぎ込むこと。それは、循環するエネルギーとしての自己を感覚し直すことでもある。からだひとつ。そこに響く声なき声に、じっと耳を傾けてゆくことは、フィジカルのみならずメンタリティの整理整頓にも深くつながっていることを、稽古に通ってくるメンバーの変化ぶりから感じます。
どのクラスも少人数とはいえ、ひとりひとりにグッと気を入れて見てしまうので、けっこう消耗しちゃうんですが、それでも、レッスンの後ひとりになるといつも少しうれしい感じが湧きあがる。クラスの方たちに稽古をつけさせていただきながら、いつも感じるのは、人が自らに向き合おうとする姿、その美しいこと。
ただ運動するのと違って、ダンスには想像力や感情が関わっています。人と人とが感じあい呼吸を交わし合う、ということへと、つながっています。真摯さへ、誠実さへ、純真さへ・・・。どこかで、そんなベクトルが働いています。カラダに向き合うことは、本来の自分から目をそらさぬことにつながっているので、稽古を重ねれば重ねるほど、一本スジの通った美しさをまとうようになってゆく。淡々と切磋琢磨。それが、ダンスの基本なんだなあという気が、このレッスンを続けながら想うところ・・・。
ちょっと話題はそれますが、土曜の夜にフィギュアのショートプログラムを見ていて、アルフレッド・シュニトケの音楽を舞う浅田真央選手の姿に、どきどきしてしまいました。広大な氷と猛スピードの緊張感のなかで、あらゆるものに向き合い乗り越えてゆく肉体の、あの熱量に、音楽がぴたりと寄り添って胸に迫ってくるようでした。シュニトケの曲、突き抜けた鋭さがあって好きだったんです。プライベートな稽古でファウストカンタータを踊っていたことがあったんですが、ドスの利いた音の塊からメロディーがぐいぐい押してくる感じに圧倒されつつ、自分のヌルさに舌打をした記憶があります。カラダで音楽に向き合うとき、音楽の根っこに流れているエネルギー量を感じます。シュニトケの音楽は、それが強烈で、簡単に近づくことが許されないような熱を放っている気がするんです。つかみのあるメロディの底に、すごく太い根っこを感じる。克服に克服を重ねた強靭な音の層。現代音楽の、ひとつの金字塔だと思って聴いたり踊ったりしていました。それが、この選手のフィギュアで起用されているなんて、ささやかな喜び。この人の曲を踊っているダンスはあちこちで観たことがある。けれど、スケートでは初めて、そして、こんなに一体感があるのも初めてだった。浅田選手、さすが。
今夜も風が吹いています。しずかな微風です。
風を感じるたび、ボブディランのBlowin' in the Windを思い出します。
「答えは風のなかに吹かれている、答えは風のなかに・・・。」
毎日が流れてゆくなかで、いろんな感情が訪れては散り、いろんな問いが降り積もり。
さて、あたらしい一週間を始めようかしら。
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予告●3月中旬から4月上旬あたりで、「春の短期集中ワークショップ」を開こうかと考えています。具体的な日程や内容、まもなく決まりますのでご注目ください(参考=夏の短期WS)