夢の途中で目が覚めて、しまった、と思うことが多い。
続きを、と思って慌てて再び眠りに入ろうとするのだが、なかなか上手く同じ夢に到達することが出来ない。
夢の記憶というのは得てして断片的だ。
一度目覚めてしまってからは二度と行くことが出来ない世界がそこにはあったはずで、そこにはその世界独特の連続的な時間が流れていたのではないだろうか。
あの時間の流れはいまどこに行ってしまったのだろう、こうやって覚醒している時も全く別の世界と全く別の時間が流れていて、そこには全く別の僕が全く別の人生を営んでいるのではないだろうか・・・。
マシュー・バーニーの映像「クレマスター3」を観ながら、そんなことを思っていた。
あの独特に緩慢な時間の流れ、そして、清潔なグロテスクとでも言えば良いのかしら、作品に登場する奇妙に白く匂いが透明でそれでいて生々しい肉体感が漂う空間と人々は、夢時間を突如切断されて寝覚めたときの感覚を僕の生理のなかに呼び覚ます。
莫大な予算をかけ凝りに凝った映像はバーニー自身が演じる人物がフリーメーソン入門者としてさまざまな試練に出会い変容してゆくドラマティックなストーリー仕立てでありながら、その時間の流れが不思議に現実とズレていて上記のようなことを思ったのかもしれない。
いま、MOTで開催されている「トランスフォーメーション展」にて。
5部作セリエの第3サイクル、このパートだけで約3時間。真っ白な部屋に登場人物のポートレートや登場する彫刻と一緒にインスタレーションされている。
停止された時間、あらかじめつくられた時間、脳内で生産される時間、現在の時間、それらが気まぐれに切断されたり再組織されたりリミックスされてゆく記憶の時間。同じ内容でも、ギャラリーでループされる映像は映画館とはちがう時間の流れを獲得してゆく。また、体育と医学を学んでいた人だからなのか身体の扱いがとても興味深い。ガラスの足をしたパラリンピックのアスリート、エイミー・マランスとのロマンティックなシチュエーションはじめ、あちこちで身体にまつわる想像力が刺激される。身体と時間。それは世界なるもののキーワードかもしれない。
上記の展覧会、バーニー以外にもバイオテクノロジーに関心の強い作家ピッチニーニやカンヌのパルムドールを受賞したウィーラセタウンなど、濃厚な顔ぶれがずらりと並ぶ。しかも長めの映像が多いのでかなりの時間と集中力が必要だが、行って良かった。
なかでも石川直樹氏の作品が観れたのがすごくうれしかった。いま同時代の日本人作家のなかで特別に素晴らしいと思う人だ。
この人は北極から南極までを人力で踏破した77年生まれの作家だ。ここではエベレストに登頂するプロセスで撮影した作品が展示されて、現実の夢が開示される。無上の美は、行動があるからこそ生まれるんだと思う。
(同展は中沢新一氏と長谷川祐子氏の共同企画とのこと。さすが・・・!)
続きを、と思って慌てて再び眠りに入ろうとするのだが、なかなか上手く同じ夢に到達することが出来ない。
夢の記憶というのは得てして断片的だ。
一度目覚めてしまってからは二度と行くことが出来ない世界がそこにはあったはずで、そこにはその世界独特の連続的な時間が流れていたのではないだろうか。
あの時間の流れはいまどこに行ってしまったのだろう、こうやって覚醒している時も全く別の世界と全く別の時間が流れていて、そこには全く別の僕が全く別の人生を営んでいるのではないだろうか・・・。
マシュー・バーニーの映像「クレマスター3」を観ながら、そんなことを思っていた。
あの独特に緩慢な時間の流れ、そして、清潔なグロテスクとでも言えば良いのかしら、作品に登場する奇妙に白く匂いが透明でそれでいて生々しい肉体感が漂う空間と人々は、夢時間を突如切断されて寝覚めたときの感覚を僕の生理のなかに呼び覚ます。
莫大な予算をかけ凝りに凝った映像はバーニー自身が演じる人物がフリーメーソン入門者としてさまざまな試練に出会い変容してゆくドラマティックなストーリー仕立てでありながら、その時間の流れが不思議に現実とズレていて上記のようなことを思ったのかもしれない。
いま、MOTで開催されている「トランスフォーメーション展」にて。
5部作セリエの第3サイクル、このパートだけで約3時間。真っ白な部屋に登場人物のポートレートや登場する彫刻と一緒にインスタレーションされている。
停止された時間、あらかじめつくられた時間、脳内で生産される時間、現在の時間、それらが気まぐれに切断されたり再組織されたりリミックスされてゆく記憶の時間。同じ内容でも、ギャラリーでループされる映像は映画館とはちがう時間の流れを獲得してゆく。また、体育と医学を学んでいた人だからなのか身体の扱いがとても興味深い。ガラスの足をしたパラリンピックのアスリート、エイミー・マランスとのロマンティックなシチュエーションはじめ、あちこちで身体にまつわる想像力が刺激される。身体と時間。それは世界なるもののキーワードかもしれない。
上記の展覧会、バーニー以外にもバイオテクノロジーに関心の強い作家ピッチニーニやカンヌのパルムドールを受賞したウィーラセタウンなど、濃厚な顔ぶれがずらりと並ぶ。しかも長めの映像が多いのでかなりの時間と集中力が必要だが、行って良かった。
なかでも石川直樹氏の作品が観れたのがすごくうれしかった。いま同時代の日本人作家のなかで特別に素晴らしいと思う人だ。
この人は北極から南極までを人力で踏破した77年生まれの作家だ。ここではエベレストに登頂するプロセスで撮影した作品が展示されて、現実の夢が開示される。無上の美は、行動があるからこそ生まれるんだと思う。
(同展は中沢新一氏と長谷川祐子氏の共同企画とのこと。さすが・・・!)