日が経ってしまったが、11/29昭和音大のホールで、作曲の鈴木悦久さんの新譜が初演された。僕のソロダンス「カラビンカ」の兄弟曲だったのだという。僕は、ダンスの場が何かしら別のものが生み出されるキッカケになれば最高だと思っている。しどろもどろの肉体と格闘してもらった時間が、多少なりとも役に立っていればうれしいのだけれど。さて作品・・・。

マリンバ合奏によるものだが、押しつけが無い。楽器の優しさをあますところなく引き出して心憎い。マリンバはフェミニンな楽器だと思うのだが、そのあたりを踏まえている楽譜。エロチックなピアニシモの連打のなかで、ソプラノからアルトが美しく響く始まり。楽器そのものを聴かせてくれる作曲家なんて、いま何人いるのだろうか。楽器に思いをぶつけるような音楽は、しんどい。肉体に思いをぶつけるダンスが無粋なように。

複雑な数理を経たのだと言う、その作曲の結果は自然音に近い。楽器をクッキリと響かせたあとは、その存在をゆるやかにフォーカスアウトして丸く音列が舞う。なんとも静々とした音の風。大胆な空白に続いて淡々とこぼれでる音はあくまでひそやかで、マリンバという構造物を樹木のカケラに分解する、いや、木片ひとつひとつのつぶやきにまで分解して大気に飛散させる。見知らぬ数え歌が風にただようように空間に溶けて、身体をつつんだ。音楽は、自然の優美を愛でるマテマティカだと、あらためて知った。

音楽も踊りも、現象と数理の相似を味わう愉しみがある。数学から風景が生まれ、風景から詩が生まれる。次は、そのような仕事を、この人と共有したいと思った。