「垂乳女」という映画を観ました。たらちめ、と読むそうです。
御茶ノ水のギャラリーbauhaus。「花母」という写真展と一緒でした。
写真は、河瀬さんの出産風景が軸。映画は、出産記録の映像が出発点となって制作されたのだそうです。
スクリーン一杯、胎盤の映像、薔薇のように広がる始まり。
日々の生活を照らし出す月や窓からのこぼれ陽、そして影たちがゆらゆらと映し出され消えていくなかで、生まれた赤ちゃんの暮らしや、河瀬さんを育ててくれたお祖母さまとの会話、葛藤、いつくしみがスッ、スッと差し出されます。
こちらは、ただただ見るのですが、痛いような、おかし悲しいような身体感覚が走り、カラダの中がうずくのです。
なぜでしょう、素敵です。
たしかにこれは映画なのだけど、ダンスにどこか似ている。
まかりまちがえば、この監督、踊り子になっていたのではないか、というふうに思って45分、彼女の光に照らされて座りました。
もちろん前から僕の心はこの人の映画に世話になっていて、劇場で見れるのは全部見た。
同郷、奈良の人。
僕の育った町が沢山出てくる。
空気まで映っているから、それを呼吸する目当てもあるのですが、ただそれだけではない。
「関係」をくれるから。
外国での評価が多い様子。しかし近しい人にこそ見てもらいたいのではないか。
ただ、この人の、ご自身の足元に徹した視線が世界に通じているのでしょう。皆ひとりひとりの人間であるので。
作中、ガラスに映るご自身を撮影されているカットがあり、そのはじにスイスの国旗が淡くはためいている。フロで、祖母の乳房をじっと見つめ、水の音を聴く。この乳首、私は吸ったのだろうか。おそらく食い違いはあるのだろうけれど、こちらも身におぼえある、さまざまな「遠さ」「近さ」の感覚、その交差。たとえばこんなふうに関係がうまれる。いろんなシーンで・・・。
ともかく、この人の映画は、生活に風を送ってくれる、いろんなことを改めて呼吸させてくれるから、いつも見に行ってしまうのです。
こちらも映画を見るけれど、映画もこちらを見ていてくれる感じ。
生身の人間のように、「関係」が、ちゃんと発生する。
一人では生きていけないので、貴重です。信用できる。
終了後、河瀬さんのお話あり。
質疑応答もあったけれど、作品があまりにもスベテだったので、一体何をあらためて訊くのか。
数十センチ目の前に立っていられる彼女に、ああ、わざわざココまで来てくださったんだ。何も言えないけど、同じ空気を少しの間吸っている、これで良いのだな~。との感覚。
ただ、一言「とても良かったデス」って言えば良かった、と思いつつ帰宅し、家族のメシをつくり、稽古場へ。
深夜思うに、苦手な人ごみを歩いたにもかかわらず、家事もレッスンも元気になっていたかもしれない・・・。
監督、ありがとうございます!
※夏には渋谷で新作公開とのこと。この「垂乳女」も映画館で見れるそうです!
河瀬直美監督HP
御茶ノ水のギャラリーbauhaus。「花母」という写真展と一緒でした。
写真は、河瀬さんの出産風景が軸。映画は、出産記録の映像が出発点となって制作されたのだそうです。
スクリーン一杯、胎盤の映像、薔薇のように広がる始まり。
日々の生活を照らし出す月や窓からのこぼれ陽、そして影たちがゆらゆらと映し出され消えていくなかで、生まれた赤ちゃんの暮らしや、河瀬さんを育ててくれたお祖母さまとの会話、葛藤、いつくしみがスッ、スッと差し出されます。
こちらは、ただただ見るのですが、痛いような、おかし悲しいような身体感覚が走り、カラダの中がうずくのです。
なぜでしょう、素敵です。
たしかにこれは映画なのだけど、ダンスにどこか似ている。
まかりまちがえば、この監督、踊り子になっていたのではないか、というふうに思って45分、彼女の光に照らされて座りました。
もちろん前から僕の心はこの人の映画に世話になっていて、劇場で見れるのは全部見た。
同郷、奈良の人。
僕の育った町が沢山出てくる。
空気まで映っているから、それを呼吸する目当てもあるのですが、ただそれだけではない。
「関係」をくれるから。
外国での評価が多い様子。しかし近しい人にこそ見てもらいたいのではないか。
ただ、この人の、ご自身の足元に徹した視線が世界に通じているのでしょう。皆ひとりひとりの人間であるので。
作中、ガラスに映るご自身を撮影されているカットがあり、そのはじにスイスの国旗が淡くはためいている。フロで、祖母の乳房をじっと見つめ、水の音を聴く。この乳首、私は吸ったのだろうか。おそらく食い違いはあるのだろうけれど、こちらも身におぼえある、さまざまな「遠さ」「近さ」の感覚、その交差。たとえばこんなふうに関係がうまれる。いろんなシーンで・・・。
ともかく、この人の映画は、生活に風を送ってくれる、いろんなことを改めて呼吸させてくれるから、いつも見に行ってしまうのです。
こちらも映画を見るけれど、映画もこちらを見ていてくれる感じ。
生身の人間のように、「関係」が、ちゃんと発生する。
一人では生きていけないので、貴重です。信用できる。
終了後、河瀬さんのお話あり。
質疑応答もあったけれど、作品があまりにもスベテだったので、一体何をあらためて訊くのか。
数十センチ目の前に立っていられる彼女に、ああ、わざわざココまで来てくださったんだ。何も言えないけど、同じ空気を少しの間吸っている、これで良いのだな~。との感覚。
ただ、一言「とても良かったデス」って言えば良かった、と思いつつ帰宅し、家族のメシをつくり、稽古場へ。
深夜思うに、苦手な人ごみを歩いたにもかかわらず、家事もレッスンも元気になっていたかもしれない・・・。
監督、ありがとうございます!
※夏には渋谷で新作公開とのこと。この「垂乳女」も映画館で見れるそうです!
河瀬直美監督HP