11月公演「真空断層」 その1
未知の沈黙に耳を傾け・・・
昨年の冬からつくり始めた新作が、いよいよ発表の月となりました。
今回の作業の中で感じてきたことを、何回かに分けて書いてみようと思います。
ダンスを踊っていると、身体の内部で生命がどんどん加速していくように感じられてなりません。
思いを動きにするというより、動きから思いが沸き上がり、知覚された思いは、また新たな動きによって空に散らばっていきます。
僕にとって、ダンスは、とても多様な意味合いを持っています。
クラスを中心に展開している「ワーク」としての側面では、「続けること」によって初めて見えてくる何かがあり、毎日の体の感じを確認する「地稽古」では、自分自身の体や心と対話することで次々とわきあがる興味がつきません。
それらの練習が、水平な積み重ねだとすれば、時にそれをパァッと垂直に切って、断面を凝視することが作品の発見につながります。生きることの杖となる練習とは別に、生や存在をじっと見つめる、いわば解剖学のような処方での練習があるのです。
何かのきっかけで起きた創作衝動をメスとして、手術のような練習を開始しますと、稽古場には、身振りという仮象を借りて、生活のさまざまな痕跡や整理されぬママに堆積した物事や時間の断片が沈黙したままで漂いはじめます。
中には、ブラックホールのような、判別不能の現象や腫瘍のように固まってしまった悲劇物質さえあります。
それらを再び結びつけたり、二度と出会わぬように決別したりという事のなかで、自分でも見たことがないような景色が焦点を結んでいく感じです。
古代ギリシャの人々は、自然を複数の単位とエネルギーの作用としてとらえ、認識できる諸単位を「元素」、それらを結びつけようとするエネルギーを「愛」、結びついたものを切り離すエネルギーを「憎しみ」と名付けたそうです。
現れては消えていく身振りや音に、解釈の誘惑を退けながら興味を集中させる練習は、身体や魂という空間のなかに漂う「元素」「愛」「憎しみ」を抽出しようとする作業のようでもあり、果てがありません。未知の沈黙に耳を傾けている気分です。
そんな作業が、劇場の中まで延長され、観客の方々の視線と交わりながらピークを迎えることが出来たとき、ダンスの作品がようやく生まれるのではないかと、いま僕は思っています。
ダンスという分野では、作品は構造物でありながらも、瞬時に消え去って二度と現れないという特性をもっています。開演のときまで、いや、終演の瞬間まで、何が起こるのか予想をつけないように気を付けたいと思います。
劇場での出会いの中で、充電されたエネルギーがひとつの極に達して消滅する、閃光のような瞬間が訪れてくれるよう、あと2週間あまりの時を、大事に育てたいと思います。どんな時空が立ち現れるのか、ぜひぜひ、ご注目を!!
公演日時:11/22(火)20:00、
11/23(祝・水)15:00
中野planB
前売2200円、予約2500円、当日2800円
11月公演詳細・チラシはココをクリック
未知の沈黙に耳を傾け・・・
昨年の冬からつくり始めた新作が、いよいよ発表の月となりました。
今回の作業の中で感じてきたことを、何回かに分けて書いてみようと思います。
ダンスを踊っていると、身体の内部で生命がどんどん加速していくように感じられてなりません。
思いを動きにするというより、動きから思いが沸き上がり、知覚された思いは、また新たな動きによって空に散らばっていきます。
僕にとって、ダンスは、とても多様な意味合いを持っています。
クラスを中心に展開している「ワーク」としての側面では、「続けること」によって初めて見えてくる何かがあり、毎日の体の感じを確認する「地稽古」では、自分自身の体や心と対話することで次々とわきあがる興味がつきません。
それらの練習が、水平な積み重ねだとすれば、時にそれをパァッと垂直に切って、断面を凝視することが作品の発見につながります。生きることの杖となる練習とは別に、生や存在をじっと見つめる、いわば解剖学のような処方での練習があるのです。
何かのきっかけで起きた創作衝動をメスとして、手術のような練習を開始しますと、稽古場には、身振りという仮象を借りて、生活のさまざまな痕跡や整理されぬママに堆積した物事や時間の断片が沈黙したままで漂いはじめます。
中には、ブラックホールのような、判別不能の現象や腫瘍のように固まってしまった悲劇物質さえあります。
それらを再び結びつけたり、二度と出会わぬように決別したりという事のなかで、自分でも見たことがないような景色が焦点を結んでいく感じです。
古代ギリシャの人々は、自然を複数の単位とエネルギーの作用としてとらえ、認識できる諸単位を「元素」、それらを結びつけようとするエネルギーを「愛」、結びついたものを切り離すエネルギーを「憎しみ」と名付けたそうです。
現れては消えていく身振りや音に、解釈の誘惑を退けながら興味を集中させる練習は、身体や魂という空間のなかに漂う「元素」「愛」「憎しみ」を抽出しようとする作業のようでもあり、果てがありません。未知の沈黙に耳を傾けている気分です。
そんな作業が、劇場の中まで延長され、観客の方々の視線と交わりながらピークを迎えることが出来たとき、ダンスの作品がようやく生まれるのではないかと、いま僕は思っています。
ダンスという分野では、作品は構造物でありながらも、瞬時に消え去って二度と現れないという特性をもっています。開演のときまで、いや、終演の瞬間まで、何が起こるのか予想をつけないように気を付けたいと思います。
劇場での出会いの中で、充電されたエネルギーがひとつの極に達して消滅する、閃光のような瞬間が訪れてくれるよう、あと2週間あまりの時を、大事に育てたいと思います。どんな時空が立ち現れるのか、ぜひぜひ、ご注目を!!
公演日時:11/22(火)20:00、
11/23(祝・水)15:00
中野planB
前売2200円、予約2500円、当日2800円
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