俳優として独特の存在感を示し、昨年の作品『爆弾』で日本アカデミー賞の最優秀助演賞を獲得してた佐藤二朗。俳優としてだけではなく、映画監督としても愛知県南知多町をロケ地とした『はるヲうるひと』なども手掛けている。いろいろと多才な佐藤二朗が、今回は初めて漫画原作の脚本を手がけたサイコバイオレンスが『名無し』(城定秀夫・監督)である。そして、いくらか狂気じみた主人公山田太郎を自ら演じている。

そんな作品である。どんな映画になっているのかという興味は十分にあった。奇妙な中年男を佐藤二朗が、どう表現していくのだろうかと、いうところも一つの見どころだったのかも知れない。
ある日突然、昼下がりのファミリーレストランで、人が斬りつけられて行くという残忍な殺人事件が発生する。ところが、防犯カメラには、犯人と思われる怪しい中年男は映っていたものの、その男の手には凶器のようなものがないのだ。だけど、男が近づきいてきて触れていくだけで、まるで斬られたように人が血を吹き出して倒れていくという異様な光景が映し出されていた。
捜査を進める警察は、その坊主頭の男が11年前に万引きの疑いで調書を取られた「山田太郎」と同一人物であることを突き止める。山田の自宅住所に急行した捜査員が目にしたものは、腐敗した女性の遺体だった。その女を含めて、40年以上も前の幼少時代からの、その男の引きずるものというか背負ってきたものが分かってくる。
佐藤二朗はその主人公である連続殺人犯の山田太郎役を演じる。こういう役どころがまた、本当にうまくハマってしまうのが佐藤二朗でもある。
映画は二つの時代を行き来しながら進行していく、身寄りも名前も言わなかった少年が見つかる。しょうがないから、その子を見つけた巡査は、そんな子につける名前はシンプルの方がいいと「山田太郎」と名付けることになる。そして山田太郎と同じ児童養護施設で育ち共に暮らしていたのが花子だ。その成人した以降をMEGUMIが演じる。
そして、凶器なき犯罪を実行していく山田を止めるべく奔走する刑事の国枝は、かつて山田太郎を名付けた巡査の息子ということである。それを佐々木蔵之介が、これまた怪演なのだけれども、見どころたっぷりだった。2人の関係性が見えてくることで、果たしてどうなっていくんだろうか…、という映画の展開としての興味は増していく。
結果的には、結論が出たような見えなかったような感じでもあった。どうして、山田がどうして奇行的な犯罪を繰り返していくのか、その理由は朧気にしか分からなかった。また、その右手は何だったのか、そのことも幼少時に電気コードをいつも巻いていたということ以外は分からず、その根拠が見えなかったので、ちょっと消化不良ではあった。
だけど、映画としては、犯人の奇行がスリリングで、次は何が起きてどうなっていくのかというハラハラ感というか、そんな所は引っ張られていった。このあたりは、脚本構成の上手さでもあるのかなぁとも思っていた。
そして、事件は落ち着くべき形に落ち着いたのか、そうではなかったのか、そこに関しては観る側が判断していかなくてはいけないのだろう。これは、作品として面白かったのか、どうだったのかというところも含めて、賛否両論分かれるところなのかなとも思った。
まあ、ボクとしては個人的には、最後までストーリー展開に引っ張られていって観られたかなとは思った。


